Apple iPhoneの委託生産先の1つ、台湾ウィストロン(Wistron、緯創資通)は、インドのバンガロールでインド国内での販売のために一部の旧型iPhoneの組立を行っています。Appleは恐らく短期内にその方面に対する投資を増やすことはないだろうとみられていますが、今後その方針が変わるかもしれません。
インド商務省のトップ、Suresh Prabhu氏は来月、ダボス会議でAppleの幹部と会い、インドでのiPhoneの製造などについて話し合う予定であることが、インドのメディアEconimic Timesで報じられています。
Prabhu氏が発表したコメントによると、既にこの話し合いは進んでいるということです。コメントによると、インド政府はAppleがインドに新しい事務所を作ることをとても歓迎しているということで、インド政府としては事前にAppleに対して税制優遇を提供することを前向きに検討しているということです。
報道の中で、いくつか注目すべき点があります。1つは、Appleは以前、インド政府に対して15年間の設備と部品に対する免税と現地購買部品に対する減税を希望していました。これらの希望がインド政府とAppleの間の交渉を難しくする大きな障害となっていたのですが、その後Appleの希望条件が変わったのか、或いは少なくともPrabhu氏やインド政府のAppleに対する態度が変わったのは間違いなさそうです。Prabhu氏は、「我々とAppleの状況は変化しています。ですから、これは1つの顔合わせ、討論、そして決定をもたらすよいチャンスなのです」とコメントしています。
そしてもう1つ面白いことは、Appleは自身の工場を設立することを検討中と報道されていることです。現在、iPhoneのインドでの生産は、冒頭に書いたように組立委託先のウィストロン、つまり第三者企業によって行われています。それだけではなく、Appleはインドに直営店がないため、インドでは第三者のリセラーの力を借りて販売するしかない状況です。それが今後自社で工場を設立することで状況が変わる可能性があります。ただし、最近のAppleは研究所は持っていますが、自身で部品の製造や製品の組立を行っていません。一貫してそのような経営方針を貫いてきたAppleが、インドだけ単独資本の工場を作ることは考えにくく、もしかしたら共同出資をするという意味なのかもしれません。
インドは中国・アメリカに次ぐモバイル市場の成長が世界で最も速い市場の1つです。しかし2018年上半期で、AppleのインドでのiPhone販売台数はたった100万台だったというデータが第三者の調査によって出ており、未だに大苦戦していることがわかります。Appleは世界でiPhoneを年間約2億台近く販売していることを考えると、100万台という数字がいかに小さいかわかるかと思います。この局面を打破するために、Appleは最近Nokia Networksのマーケティングのトップ、Ashish Chowdhary氏をインド市場業務責任者に据えています。今回それが功を奏すのかどうか、来月のインド商務省長官Prabhu氏とAppleの経営陣の話し合いの内容が注目されます。税優遇やその他の具体的な条件交渉に入れば、事態は進展するのではないかと思われます。
ただ、今回インドの選挙でモディ首相の与党が大敗していることで、今後政権が変わっていくことも懸念され、Appleは政府方針が変わることを警戒してインド政府上層部との付き合いを慎重に進める可能性もあり、すぐに結論が出ないかもしれません。それにAppleとインド政府の上層部ではこれまで何度も製造・税優遇・小売り販売に関して話し合いや交渉が行われてきましたが、これまで特に大きな進展がなかったことから、今回の報道も狼少年になってしまう可能性も否定はできません。
記事は以上です。
(記事情報元:Econimic Times)