Appleの歴史、13年前の今日:AppleがかつてのiPhoneの象徴”Slide to Unlock”発明特許を出願した日

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13年前の米国現地時間12月23日(日本時間12月14日)、AppleはあのiPhoneを象徴する”Slide to Unlock(スライドして解除)”といういわゆる”ジェスチャーアンロック(スワイプアンロック)”の特許を出願した日です。

当時まだiPhoneはリリースされておらず(初代iPhoneがリリースされたのは2007年)、iPhoneは”Project Purple”として社内においても関係者以外には極秘のプロジェクトでした。しかしその時点で、Appleは直観的に操作でき、技術的にも競争力のあるあのジェスチャーを考え出し、特許を出願していたのでした。もし現在このような技術特許がAppleから出願されたら大騒ぎになっていたかもしれませんが、当時はAppleの1つ1つの特許にまで注目していたメディアはまだ少なかったのかもしれません。

slide-to-unlock

“Slide to Unlock”はiPhoneの哲学の真髄ともいえる発明だった

他のiPhoneに与えられた機能やできることに比べ、”Slide to Unlcock”という言葉自体がちょっとマヌケな感じがします。しかし当時、1990年〜2010年にかけての20年間、携帯電話の発展により、誰でもどこにでもあるようになりました。当時の流行語では”ユビキタス(ubiquitous)”という状態が実現しつつあったのです。そして、携帯電話が人々に普及するにつれ、ますます多くの人が携帯電話を”アンロック”する回数や時間が増えたことから、その技術に注ぎ込む時間とお金も増えてきたというわけです。

実際、Appleの”Slide to Unlock”をはじめ、ともかく携帯電話を作っているありとあらゆるメーカーが、この”携帯電話のアンロック”に関する特許を出願し取得しています。Googleの特許サーチで“Apparatus and method for preventing inadvertent operation of a manual input device”と検索すると、出るわ出るわ、です。その中には、今や殆ど携帯電話やスマートフォンを作っていない日本のメーカー、例えばNEC、東芝、日立、デンソー、三菱電機テクノサービス、日本総研などが含まれているところを見ると、時代の流れを感じますね(ソニーのみ例外)。当然、当時は携帯電話市場の覇者だったノキア(Nokia)も入っていますし、後にこの特許に関してもAppleと係争関係になる韓国企業サムスン(SAMSUNG)の名前も見えます。

patent-for-unlock-phones

様々な特許がありますが、それらの特許の目的は、あくまでいわゆる気まずい誤発信や、やってしまうと困る誤操作の防止のためでした。ちなみに誤発信は英語では”butt dial(放屁ダイヤル)”といいます。

Oxford Dictionaryによれば、これらの技術はズボンの後ろポケットなどに入っていることで、圧力などがかかる原因でボタンが押されることにより、うっかり他人に電話を誤発信してしまうなどの現象を防止するためのもの、と記述されています。

Appleの”Slide to Unlock”の特許は、出願書によれば以下のような簡単なスケッチによって表されていました。初代iPhoneがリリースされる2年前の話です。時に、偉大な発明はこんなスケッチから始まるのかもしれません。

Slide-to-unlock_patent
Photo: USPTO

初代iPhoneから現在のiPhone XS/XS Max/XRに至るまで、iPhoneは正面にホームボタン以外のボタンは一切搭載されていませんが、それでもやはり両端にスリープボタンやボリュームボタンもあることから、何も対策をしなければロック解除がされてしまって、誤発信や何か誤操作が起こることは十分に考えられます。

殆どの他社は、この誤操作の防止のために、アクシデントが発生しにくいようなボタン操作の組み合わせでロック解除をする方法で回避しようとしていました。しかしAppleは、”slide to unlock”によって、素早くシンプルにそしてエレガントにアンロックするさまを、iPhoneの非常に反応がいいタッチディスプレイによって実現し、AppleはiPhoneの象徴としてそれをデモンストレーションに利用したのです。

そして”slide to unlock”では、リアルにも存在するような、いわゆるスライドドアを開けるための取っ手(ボルト)を横に移動させることでiPhoneのドアを開くようなイメージになったのが他社と異なるところです。そしてジェスチャーに失敗すると取っ手はまたスタートの位置に戻るようになっています。このような遊び心溢れたおもちゃのだまし的な要素は、Appleのデザイン部門のトップ、ジョニー・アイブ(Jony Ive)が好んで用いる手法でもあります。

iOS 10でその役割を終えた”Slide to Unlock”

iOS 10で、Appleはとうとう2007年の初代iPhoneから使われ続けてきた”Slide to Unlock”に終止符を打つことになります。Appleが2013年、iPhone 5sでTouch IDを導入することで、それ以降のTouch ID搭載機種ではスライドの必要がなくなりました。2013年に新発売された機種の中にはiPhone 5cがまだTouch IDを導入していませんでしたが、その次の2014年のiPhone 6以降は全てTouch IDモデルに変更されました。更に、昨年のiPhone XからFace IDが導入され、今度はホームボタンがなくなる代わりに、上にスワイプするという方法が代わりに導入されました。

まさにiPhoneの象徴として存在してきた”Slide to Unlock”は新しい技術の登場によりその役割を終えますが、Appleはハードウェアだけではなく、このようなシンプルで気の利いた発明特許を多く持ち、ソフトウェアと共にとっつきやすく使いやすいものを作り出していることが、他のメーカーとの差別化になっていることは明らかです。

記事は以上です。

(記事情報元:Cult of Mac

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