Apple、WWDC 21でiCloud+で新機能Private Relayを発表。但し中国大陸は対象外

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Appleは本日未明に行われたWWDC(世界開発者会議)21 基調講演で、新たに【iCloud+】という名称でiCloudをアップデートすることを発表しました。既存の有料iCloudユーザーは同じサブスク価格でiCloud+を利用できます。

その中の機能の1つとして、Safariで【Private Relay】という新しいプライバシー機能を導入することが発表されました。同社がCDN(Contents Delivery Network)の大手として有名なCloudflareと開発してきた新しいDNS機能とやや似た機能となっています。これは元々はOblivious DNS-over-HTTPSという名称で呼ばれていたもので、DNS-over-HTTPとプロキシサーバを組み合わせることで安全な通信ができるようになるというものです。呼び方としてはAppleの【Private Relay】の方がずっとシンプルで覚えやすくなっていますね。

もう少し細かく説明すると、Private Relay機能の仕組みは、ユーザがネットワークにアクセスしたデータはAppleによって管理されたサーバを経由して発せられ、その際にユーザの元のIPアドレス情報が削除され、Appleはそこに暗号化され隠されたIPアドレスのアクセスデータをその先のサードパーティプロバイダに管理された2つ目のサーバに渡し、これらのプロバイダがパケットに臨時のIPアドレスを付与して、経由地や最終目的地に向けて発する、というものです。

Appleによれば、このデータリレーシステムの中で、2回目のリレーで使用するサードパーティプロバイダは特別に仕立てられた仕組みを利用していて、それによってApple自身さえユーザを特定したり、ユーザがどのサイトを訪問したかがわからないようになっていると説明されています。

まとめると、Private Relayがオンになると、ブラウジング履歴を誰も追跡できなくなります。あなたのデバイスと情報をリクエストするサーバーの間に介在するインターネットサービスプロバイダーやAppleでさえも、それを追跡できないことになります。

Appleは現時点ではこの提携先のサードパーティプロバイダについての具体的な情報は明かしませんでしたが、将来的にこれらの「パートナー」の名前を公表するとしています。またこの機能は現時点ではベータ版などでも採り入れられておらず、恐らくiOS/iPadOS 15やmacOS 12が今年秋頃(9月頃?)に正式リリースされた際に実装されると思われます。つまり実際にどのように機能するかついては、実装されるまでもうしばらく待たなければ詳細はわからないところですが、これはユーザのプライバシーの保護には大いに役に立つと同時に、閲覧記録などを元にピンポイントで広告を届けていた広告代理店などにとっては非常に頭が痛い機能ということになります。

更に、データ通信の安全性を増して、他から読まれないようにする、ということは、Appleにとっては本場米国に次ぐ世界2番目の市場、中国大陸の政府の方針と真逆を行くことになります。中国政府ははっきりと、インターネットにおいても「ネットの健全さ」を保つために、中国国内で提供するサービスについてはサーバを中国国内に置き、また規定にしたがって暗号化をすることを義務づけていて、これは明らかに監視・検閲による諜報活動をすることを明言していることに他なりません。Appleもご多分に漏れず、中国国内アカウントについてはiCloudやApple Music等ネットワークサービス用のサーバを中国国内の貴州省に移転しており、中国政府の開示請求があればデータを開示しなければならない中国国内の法律に従わなくてはなりません。

今回のAppleのiCloud+の機能、SafariのPrivate Relayはプロバイダでさえブラウザの閲覧履歴を追えないとなると、中国の政策に反するのは間違いないでしょう。実際、Appleも中国ではこのPrivate Relay機能は使用できないことをロイター社の質問への回答で名言(リンク先は中国語ニュース)しています。ちなみにiCloud+のPrivate Relay機能は、中国以外でも以下の国で使えないことが言及されています。

ベラルーシ・コロンビア・エジプト・カザフスタン・アラブ首長国連邦・南アフリカ・トルクメニスタン・ウガンダ・フィリピン

つまりこれは、中国とこれらの国が、国家の政策として完全に追跡ができないレベルの暗号化通信を許可していない、或いはAppleに対して許可を出さなかったことを意味します。そしてApple側も全世界でこのPrivate Relayを実現できなかったことで、「Appleはプライバシーを何よりも大切に考えています。但し、中国(大陸)人及び上記のいくつかの国の人は別ね」と言っているも同然ととらえることができます。このAppleのダブルスタンダード具合は、世界的にどう評価されるのでしょうかね。。

そうそう、今回WWDC21 基調講演では以前から噂され当ブログでも予測をお伝えしていた新型MacBook Pro 16インチは発表されませんでした。かなり確実だと話していたリーカーのJon Prosser氏は面目丸つぶれですね。。これが、Prosser氏がi can confirmなんてかなり断言していたツイートです。

そしてこちらが言い訳ツイート。。笑ってしまいますね。これでJon Prosser氏のApple未発表製品の予測正確性や信頼度がガタ落ちになったのは言うまでもありません。

また、WWDC21のテーマ画像にあったUnicodeにノートPC(MacBook Pro)が!深読みも大外れという結果になってしまいました。。笑 まあ、もしかしたら直前に中止ということになったのかもしれませんが、、ただ、基本的に基調講演とはいえライブではなく、事前に録画された動画の配信だったわけで、直前に中止というのはあり得ないともいえますね。今回はJon Prosser氏はきっと誰かApple内部の人の作戦にひっかかってしまったのかもしれませんね。

というわけで、基本的にWWDC21の基調講演では、iOS/iPadOS 15、watchOS 8、macOS 12など次世代OSの新機能の発表に留まった形になりました。色々な新機能の紹介は公式や他のメディアが山ほど出しているので譲るとして、当ブログとしてやはり中国にいらっしゃる日本人の方向けに1coinVPNを運営していることから、中国やインターネットセキュリティの視点で気になるところを特集させていただきました。

それから、当ブログでは今後iOS 15やmacOS 12 Monterey(モントレー)がリリースされ次第、SafariのPrivate Relayが海外Apple IDアカウントで中国国内ではどのような動作をするのか、実験してみたいと思います。

また個人的に興味があるのは、AppleがPrivate Relayでパートナーとして今後公表されるサードパーティのプロバイダに、中国の国家サイバー警察などが集中してサイバー攻撃を仕掛けるかどうか、ということです。このようなリスクを鑑み、Appleはパートナーの名前を公表しないほうがいいんじゃないかと思いますが。。

記事は以上です。

(記事情報元:TechCrunch

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