AppleのAirPodsが非常に好調で、品切れが続いていて入手困難となっています。そしてAppleはそのAirPodsだけの収益のみで大企業が一つ作れるほどです。そんなAirPodsですが、去年から懸念されていた米中貿易戦争のエスカレーションによって、AirPodsのサプライヤーのGoerTechが、工場をベトナムに移してリスク回避するという情報が昨年2018年10月に流れていました。
そしてThe Informationによると、AppleのAirPodsのサプライヤーであるGoertekとLuxshareが生産を拡大しようとしていることが報告されています。ただし、これらのメーカーはAppleの競合他社のイヤホンも製造しているため、ベトナムでAirPodsの生産ラインを確実に増やすかどうかについては未知数です。
また昨日の台湾テックメディアDigiTimesの報道によると、Appleは更に製造コストを下げるために、より多くの部品や製品の注文を台湾から中国のサプライヤーにシフとしていくことを報じています。Appleは中国のサプライチェーンをより活用することで、大量購入を通じて生産コストの管理を強化するという方針を打ち出しているようです。また、中国に本拠地を置くLuxshare-ICTでAirPods Proの生産を増やす予測も同時に報じられています。
そうなると、今後AppleのAirPods製品のうち、ハイエンドのAirPodsが中国のLuxshareで製造され、エントリーモデルのAirPodsがベトナムで製造されるということになるかもしれません。なお、AirPodsが好調なおかげで、深圳証券取引所に上場しているLuxshareとGoerTechの2社の株価は今年初めから3倍に高騰しています。
ちなみにLuxshareは昨年ベトナムで製造を開始していますし、GoerTechは2015年からベトナムでApple向け製品の製造を既に開始しています。ただしこの2社がベトナムで製造しているのはAirPodsとは限りません。またAirPodsのサプライヤーには台湾のInventecもいますが、Appleの調達方針によって台湾から中国へのサプライヤのシフトが図られていることから、Inventecからの購買はいずれ縮小していくのかもしれません。
そして米中貿易戦争がAppleにもたらす影響は非常に大きいと言えます。ウェドブッシュ証券アナリストのダン・アイブス氏は、今月初めの投資家向けのメモで、中国の輸入に対する最新の米国関税が発効した場合、Appleは1株当たり利益に4%の打撃を被るだろうと記しています。今回第一段階の貿易協定は土壇場で関税がかかるのを抑えることができましたが、複数のサプライチェーン関係者によると、Appleは調達長期計画の一環として中国外にサプライチェーンを広げて多様化させていく方針だということです。
確かに中国では人件費など諸経費が上昇し、特に労働集約型の製造企業は外に出て行くのが自然の流れとなっていますが、そこに米中貿易戦争が絡むことで東南アジアが更に活気づくのは間違いないかもしれません。とはいえ、中国のように上流から下流までしっかり揃っているような国はないのも事実で、ベトナムなどではどの製造業でも現地調達率が40%台という低いレベルに収まっている状態です。今後、少しずつこの状況は改善していくことは思いますが、すぐに東南アジアに転注できる状態でもないのが、各サプライヤー企業の悩みとなっているといえそうです。
記事は以上です。
(記事情報元:The Information)