12月28日、米国特許商標局(USTPO)が米Apple社が出願した特許について2つの特許について公開しました。その2つはどちらもワイヤレス充電とその独自スケジューリングシステムについてのものでした。
1つ目の特許は、多くのデジタルデバイスに給電する際に、各デバイスにマルチポートの電源アダプタを持つ、というもので、デバイスには携帯電話(スマートフォン=iPhone)、腕時計(=Apple Watch)、ラップトップコンピュータ(=MacBook)、そしてタブレットデバイス(=iPad)が含まれ、また充電方式には有線充電とワイヤレス充電の2種類があるとのことです。
そしてもう1つの特許は遠距離充電装置の特許で、装置は電源を供給するトランスミッターとそれを受けるレシーバー(端末内に設置される)の2つに分かれており、iPhoneやiPadが充電用アダプタから離れていても充電が可能になるというものです。
ワイヤレス充電には現在2つの技術的な難点があることが知られています。1つは充電効率に制限があること、そして距離に制限があることです。それは現実にあるiPhone X/8シリーズが対応しているQiワイヤレス充電パッドの性能を見れば明らかですね。そして多くのデバイスを同時に1つの充電パッドから充電したい時には1台1台の充電効率が下がり、またワイヤレス充電のトランスミッターから距離が離れれば離れるほど、更に充電効率が下がるのは間違いないでしょう。
そこでAppleは大胆なアイデアを出してきました。新しい特許には、ワイヤレス充電の「スマートパワー伝送システム」というものがあります。これまでのワイヤレス充電ではパッドの上に置けば充電が始まり、持ち上げれば充電が終わるのですが、スマート最適化システムでは、様々な異なる設定により、異なるデバイスの充電状態をコントロールする、というものです。
この特許によれば、ユーザは特定の順序によって、異なるAppleデバイスのワイヤレス充電の優先順位を決めることができます。例えば設定アプリで、もっとも最優先で充電すべきはiPhone、そして次がApple Watch、最後にiPad、などというように。
ユーザはワイヤレス充電の優先度について、更に細かいカスタマイズをすることもできます。例えば、iPadのバッテリー残量が25%になった時に充電を開始する、などです。またはカレンダーや予定によって予め充電を計画しておくこともできます。例えば、来週月曜日に早めに出張に出なければならない場合は、システムはその前の日の日曜日にiPhoneへの充電を優先して満充電にしておく、などということが可能になるのです。
Appleの遠距離ワイヤレス充電テクノロジーそのものの特許については数年前から既に暴露され、またその後も途切れることなく実践されています。例えば2018年発売として発表された、複数のデバイスが同時に無線充電可能な充電パッド、【AirPower】もその基礎的な技術の実験畑のようなものだといえるでしょう。そして近い将来、Appleは【AirPower 2】或いはその先の世代で、遠距離ワイヤレス充電を可能にすることも考えられるのです。
また既に「Wattup」という遠隔ワイヤレス充電機能を開発したEnergous社が、Apple社と独占的なパートナーシップを提携したという情報もあり、遠距離ワイヤレス充電そのものは、これまでの噂の2017年末までというタイムスケジュールは守られなかったものの、近いうちに実現するのかもしれません。
そして上記の特許のようなスマートな最適化システムが実現すれば、非常に価値の高いものになるかもしれません。ただし、特許出願書では、このスマート最適化システムが実現するには、デバイス間の緊密な連携が必要なこと、また非常に優秀なAIと正確なプログラミングによるコントロールが必要なことが指摘されており、本当に実現するにはまだまだ技術的なハードルが高いのかもしれません。
とはいえ、Appleは今回の出願特許でわかるように、技術的な制限のある中で、何とか遠距離で複数のデバイスへのスマートなワイヤレス充電方法を編み出そうとしているわけですね。
個人的には、いつでもどのデバイスも満充電でないとかなり不安になってしまうタイプで、まるでスパゲッティ・シンドロームのように全部のデバイスに有線でばっちり繋いで充電していないと気が済まないようなところがあるので、このスマートワイヤレス充電最適化機能が私に合っているかについてはちょっと疑問です。。笑
ただ、普段全く意識することなく端末が充電ができるというのは本当に未来を感じさせますね。あとは人体への影響が少々心配なところです。
記事は以上です。
(記事情報元:Patently Apple)