Adobeが戦略を転換、PhotoshopのiPad完全版が2019年にリリースか

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Bloombergの報道によると、Adobeがとうとう、iPadのためにPhotoshopの完全版をリリースすることを決定しました。最新の情報によると、iPad版Photoshop完全版は2018年10月のクリエイティブイベント「Adobe MAX」で初めて公開され、2019年に販売開始されます。

iPad-Photoshop

Adobe PhotoshopもiPadも、”プロ”向けの”クリエイティブ”なツール

Adobeの中でも最も重要な製品の1つとして、Photoshopはクリエイティブなプロにとっても最重要な製品です。”プロ”や”クリエイティブ”というキーワードは、AppleのiPadも、自身のクリエイティブ系のツールアプリとの整合性、そのApple Pencilを含む操作性について強調しています。その意味でも、Photoshopの完全版がiPad、特にiPad Pro向けにリリースされることは、”クリエイティブ”で”プロ”な人なら、誰もが望んでいたことかもしれません。

これまでのiOS版Photoshopは機能が削られすぎていた

Adobeはこれまで、iPhoneやiPad向けに、基本的なレタッチが可能な「Photoshop Fix」や、基本的な画像編集やコラージュ作成が可能な「Photoshop Express」、描画と色付けができる「Photoshop Sketch」等、Photoshopの一部機能のみを切り出した複数のPhotoshopシリーズのアプリをリリースしてきましたが、どれも完全版とは呼べないものでした。恐らくMac/PC版と同様完全な機能を備えたPhotoshopをiOSに移植するには、iOSプラットフォームの特性やハードウェアの性能、移植コストが高くつくなどの問題があったものと思われます。

それに比べ、「Pixelmator」、「Affinity」、「Enlight」などのライバルのアプリは機能が非常に豊富かつ強力で、操作も簡単です。そんなわけで、2010年に初代iPadがリリースされてから既に8年が経ち、iOSユーザはもはやPhotoshopの存在をゆっくりと忘れていたかもしれません。

iPad版完全版PhotoshopはMac/PC版と同じ機能が使える

しかしAdobeはとうとう、iPad用にPhotoshopの完全版をリリースすることを決心したのです。

iPad用完全版は、Mac/PC版と機能を同じにして、ユーザがiPadでもプロの画像制作やポストプロダクションやクリエイティブな画像編集ができるようになります。Adobeは、iPad Proなど現行デバイスが、完全版Adobeアプリケーションのような洗煉され高性能な製品を動作するに足りる性能を持ち合わせていると感じており、iPadの人気を借りて自らのブランドを更に大きな市場に広げていこうと考えているようです。

PCの売上が減り、ますますスマートフォンやタブレットデバイスへユーザが移行している傾向にも、Adobeは危機感を感じていたのかもしれません。

2019年リリース予定だが、具体的な販売開始時期は未定

ただし、Adobeのクリエイティブ・クラウド部門の責任者スコット・ベルスキー氏は、Photoshopを含むAdobeの人気アプリ群を、iOS等モバイルデバイスに移植するための開発をしていることは認めていますが、リリース時期については明言を避けています。

Bloombergの取材に対して、ベルスキー氏は「できる限り早く市場に出したいが、やらなければならないことが多い」としています。

Photoshop完全移植はAppleのiOS/macOSのアプリコード統合の動きに合わせたもの?

このAdobeのiPad版Photoshop完全版のリリース決定は、AppleのiOSとmacOSのアプリ統合計画と示し合わせたかのようにタイミングが合っています。Appleにも長年、iOSとmacOSのアプリのプラグラミングコードを共有させる戦略があります。

AdobeとAppleがこのiOS/macOSアプリ統合の動きについて協力しているかどうかについては不明ですが、アプリメーカーやユーザにとっては今後もMacのアプリのiOSへの移植が容易になるのは喜ばしいことかと思います。

AppleとAdobeのFlashを巡る確執、現在は解消の方向か

ただ、AppleとAdobeはFlashの件で仲が悪かったこともPhotoshopの完全移植の妨げになっていたことも考えられます。かのAppleの共同創業者の故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)はセキュリティに問題がある「Adobe Flash」を仇敵のように感じ、Apple製品から「Flash」を排除する動きをしていました。

そして現在でもMacで「Flash」を実行するにはいちいちユーザの許可が必要となっていて、iOS(iPhone、iPad、iPod Touch)に至っては「Flash」を使った動画やゲームは再生することができません(特殊なWebブラウザやアプリを使わない限り)。

しかし現在はティム・クック(Tim Cook)CEOの時代です。ティム・クックCEOは、かつてスティーブ・ジョブズが打倒する相手としていたIBMと業務提携を結ぶなど、ジョブズCEO時代にはとても考えられないようなことを実現しています。

完全版の名称は「Photoshop CC for iPad」、月額9.99ドル(約1,100円)に

iPad版完全版Photoshopは「Photoshop CC for iPad」と命名され、ダウンロードは無料となるということです。ただし、Photoshopの全ての機能を利用し、しかもデスクトップデバイス用のPhotoshopと同期させるには、Adobeの「Creative Cloudサブスクリプション」への加入が必要になるとみられていて、その価格は月額9.99ドル(約1,100円)となっています。

小龍のひとりごと:PhotoshopのiPad完全移植は三方よし

今回のAdobeのPhotoshop iPad完全版「Photoshop CC for iPad」のリリースは、AdobeにとってもApple(iPad)にとっても、そしてユーザにとっても三方よしの決定となったのではないでしょうか。個人的にはAdobeのIllustratorもiPadに完全移植してほしいところです。

記事は以上です。

(記事情報元:Bloomberg

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