中国の携帯電話市場では、トップメーカーというのがなかなか見えにくいところがあります。というのも、どのメーカーも1つの指標だけを採り上げて自らが中国ナンバーワンだとして宣伝するのがうまいからです。Appleはそんな中で、中国ナンバーワンというような言い方をしたことはありません。まずは販売台数でみれば誰もがわかるとおり、Androidと比べものにならないほどのシェアしかないからです。しかしBusiness Insiderによると、やはりAppleが中国ナンバーワンの携帯電話メーカー(ブランド)だというのです。
Business Insiderは、Newzoo社のマーケティングデータを基に、iOSデバイス(iPhoneとiPad)が中国のスマートフォン市場内のアクティブなデバイスの中で26%のシェアを占めている、としています。ただ、これはAndroidデバイスの74%には全くかなわない数字です(この2つのOSの合計が100%ということは、その他のWindowsやBlackberry等のモバイルOSがいかに悲惨な状況かもわかるでしょう)。
しかしもしブランド別で比べた場合は、上の円グラフでも一目瞭然ですが、Apple(iPhoneとiPad)が中国の先月の月次アクティブモバイルデバイスシェアの中で25.6%を占めていて、断然トップになっています。その後のトップ5には中国国産メーカーがひしめき合っていて、Oppo・ファーウェイ(HUAWEI)・vivo・シャオミ(Xiaomi、小米)がそれぞれ17.9%、14.1%、13.9%と12.1%となっていて、Appleより断然少なくなっています。なお、中国産ではOppoがトップとなったことが少々意外なところですね。そして韓国のサムスン(SAMSUNG)は6位となってAppleと中国勢の後塵を拝しています。Galaxy Note 7の爆発事件や、中国国内での政治的な関係による”嫌韓”が進んだことも相まって、すっかりイメージが悪くなり、失速してしまったようです。
Business Insiderは、Androidのエコシステムがメーカーによってバラバラになってしまっていて、iOSの完全に統一されたエコシステムが、Appleがアクティブなデバイスのシェアが高い原因とみています。China Internet Watchによると、2017年3月、中国地区でのApp Storeのダウンロード回数は5億回を超え、テンセント(騰訊、腾讯)のダウンロード数の倍となっています。競争力が高いApp Storeがより多くのデベロッパにこのプラットフォームに入りやすくさせ、それによってAppleの収益が増えるだけではなく、ユーザ体験(UX)もよくなっていくのでしょう。
ただ、今回Appleのアクティブデバイスが増えた原因は、iPhone Xの登場による買い替えも大きかったとBusiness Insiderは指摘しています。iPhone Xを購入した約半数の中国のユーザは、iPhone 7からの買い換えとなっていて、iPhone 7は1年程度しか使われなかったことになります。ということは、今後また買い替え需要が鈍ることも予測されます。またiPhone Xのリリース発表は、ファーウェイやOppoなど中国のライバルメーカーの端末の買い替え需要まで刺激してしまい、ライバルの活性化も招いてしまったことも事実です。そして更に、最近発生したiOS 11による旧機種の速度低下問題で、Appleはイメージが悪くなってしまっています。
ちなみに、アクティブデバイスの概念とは、本当に現在も使われている台数のことを指します。確かに販売台数はAndroidの方が圧倒的に多いかもしれませんが、Androidデバイスは、買い替えられた後は捨てられるか何らかの原因でアクティブではなくなることが多く、逆にAppleのデバイスは買い替え後にもサブで使われたり、家族の中で使い回されたりなどして非常に寿命が長くなっています。そのことも、Appleのアクティブ端末台数シェアを伸ばす要因にもなっています。Apple製品は中古市場が盛んなことも、同様にアクティブ台数を増やす要因の一つです。
しかしこのアクティブ台数の多さは、同時にAppleの頭痛の種でもあります。買い換え需要が鈍くなるからです。ただ、そのために旧機種の性能低下をユーザに黙って行ったことは感心できる行為ではありませんでした。Appleが今後も安定して成長するには、今後信用回復をしていく必要があるでしょう。
記事は以上です。
(記事情報元:Business Insider)