中国で、日本人がチャットや掲示板などで”偽中国語”で会話していることが話題になっているという。昨日のレコードチャイナで、このような記事が上がっていた。
なお、偽中国語についてはこちらが非常に詳しい。
実際にはこんな感じで使われている。
上記の記事では中国の掲示板で盛り上がっているということだったのだが、早速中国ではニュースサイトにあがっている。環球日報では、以下のように報じられている。
最近、”偽中国語”と呼ばれるコミュニケーション方法が日本で流行っている。全く中国語を知らない日本のネットユーザが、日本語の漢字だけを使ってチャットをするというものだ。これが中国のネットユーザもだいたいその意味が推測できてしまうため中国でも流行っている。台湾の”中央社”は19日、これが日中民間交流の新局面となるのではないかと報じている。
通常、日本語の会話文の中には漢字(日本語の中の漢字)、ひらがな、カナタナなどの文字符号がある。が、日本のネットユーザの中にはひらがなとカタカナを取り去って、漢字だけを残した”超簡略化”した書き方が流行っている。これは完全な日本語表記とはなっていないものの、意思の疎通に影響がない。そして会話文全てが漢字で書かれていて中国語のように見えるため、”ニセ中国語”と呼ばれているわけだ。
実際、”ニセ中国語”は2009年に既に出現していた。日本のあるサイトが”偽中国語”の教材をアップし、日本語の漢字の語彙や意味をもっと広めてもらおうとした。例えば日本語の「大変感謝」は中国語の”非常感謝”、「全然問題無」は”完全沒有問題”の意味。そして「意味理解不可能」は“不能理解意思”だ。最近日本人はTwitter上でも”偽中国語研究会”を作り、コミュニケーション方法を規範化しようとしている動きもある。
中国のネットユーザの反応
基本的にニュースに書き込まれるコメントは共産党バンザイか理由もなく日本嫌い(というより全く無知)といういわゆる共産党教育に洗脳された中国版ネトウヨのようなのが多い。このニュースもご多分に漏れず、
「中国の国力が回復していることを証明している、そうでなければ小日本は日本語の中から漢字を消している」
「注意した方がいい、小日本鬼子(中国では第二次世界大戦の日中戦争時に中国を侵略した日本軍や日本人のことを蔑視を込めてこう呼ばれ、現在でもそう呼ぶ時代錯誤な人がいる)の時のように、偽中国語を日本中に流行らせることで中国語を理解すると、中国人は日本人の前で何も秘密がなくなる」
などというようなしょうもないコメントがほとんどで、後者の人は80年代の南京大虐殺の映画で、南京で理髪店を経営している中国人が、お客として来た日本軍人の「髪を切り終わったらこいつら一家全員殺す」という日本語を理解できたので命が助かったという話まで持ち出していて失笑ものだ。
そんな中、このニュースには一つだけいいコメントがあったので紹介しておく。このような目が覚めた人がいる限り、日本と中国の民間の友好関係が潰えることはないと信じたい。
「漢字は中国が発明した。しかし近代の多くの中国語の語彙は間違いなく日本が発明したもので、日本は漢字の進歩と発展に拭い去ることができない貢献をした。その点は絶対認めなければならない。中国と日本の人民はやはり友好的で善良なのだ。」
“汉字是中国发明的。但是近代许多汉语词汇确是日本发明的,日本对汉字的进步和发展是做出了不可磨灭的贡献的,这点必须予以承认。中日人民还是友好善良的。”
dlsssmg@163.com 北京市朝陽区
环球日报の記事のコメント
実はTwitterのハッシュタグ#偽中国語が一番面白いかも
Twitter上ではハッシュタグ#偽中国語で検索すれば、いろいろと出てくる。変なまとめサイトを見るより、こちらを見た方がだんぜん面白い。毎日誰かしらツイートしているので、定期的なチェックをしてもいいかもしれない。
ただ、残念なのは中国からはTwitterに普通にはアクセスできないので交流にはならないことだ。weiboでやればいいとは思うが、日本人にはちょっと敷居が高いか。。
偽中国語遊びは昔からあった
この偽中国語遊び、今に始まったことじゃないような気がする。こういうのは、小学校の頃にやったことはないだろうか?私の場合はもう30年くらい前の話になるが、友達とやっていた。もともと自分が三国志などが好きだったのもあって、漢字や中国に興味を持っていたのもあったが。。中学校くらいからは漢文を習うので、しゃれで遊ぶということができなくなってきたが。。
記事に指摘したいのは、「ひらがなとカタカナだけ取り除いて漢字を残した」というのはちょっとおかしい。基本はそうではあるのだが、偽中国語が面白いのはひらがな言葉や普段外来語などでごまかしていたカタカナ言葉を無理矢理漢字に変換していることだ。そして文法は日本語のままというのも面白い。そして中国語ネイティブにとっては思いもよらないような表現になっているのがたまらなく面白く感じるのだ。
中国と日本の漢字の語彙の違い
私は中国語ネイティブではないが、中国語習得者として、日本語と中国語の語彙の違いは、日本は中国からの漢字の輸入をほぼ宋の時代には終えていて、それ以降は日本も中国も独自の変化を遂げてきたことが原因であるのが垣間見えると感じる。特に現代中国語は、日本が中国からの漢字の輸入をやめた後に、中国が元朝のモンゴル族や清朝の女真族(後の満州族)など異民族の侵略を受けたこと、また首都が変わることで語彙が大きく変化している。また近代には日本が西欧文化を採り入れるために多くの言葉を漢字に翻訳して、それが現在の中国語にも逆輸入され大きな影響を残していることも、上記のコメントで指摘されているとおりだ。ちなみに中華人民共和国が大事にしているはずの共産党だって社会主義だって革命だって、全て日本人が作りだした言葉だということを知らない中国人が大半だ。
インターネットと漢字という2つのツール、日本と中国の相互理解にいい傾向かも
これだけ文字が同じ意味を持っていて、しかも話し言葉が全然通じないというような二国関係というのは実はなかなか珍しい。漢字文化圏として韓国とベトナムもあるが、両国とも漢字を捨ててしまったため、現在漢字を使っての意思の疎通は難しい。
中国でもweiboなどで逆にニセ日本語交流というようなものも流行ってきているらしい。抗日映画の偽日本人兵が話す偽日本語や偽中国語(ミシミシ、バガヤル、ファーグーニャンダなどなど)の模倣とはかなり次元が違うレベルのようで、日本語の会話文の中に、中国語の語彙を入れるのだ。実はこれ、私のような元留学生も、留学時代には同じ日本人留学生同士で逆のことを良くやっていた。日本語の会話文の中に中国語を入れるのだ。「これちょっと”没办法(どうしようもない)”だよねー」とか、「さっき”留办(留学生事務所)”に行ってきた」とか、日本語にすると冗長だったりするのを中国語だとすっきりしてすぐに意味が伝わるから使っていたというのがある。
言語を勉強するのは大変だが、既に普段使っている言葉が外国語として通じるのは楽だし面白いことだ。日本と中国の若者が、お互いの文化について興味を持って、”インターネット”と同じ”漢字”という素晴らしいコミュニケーション用ツールを使ってゲーム感覚で新しい交流が誕生し、その交流をすることでお互いのことを知る。それこそが自然に日中友好に繋がるのではないかと思う。
記事は以上。
(記事情報元:環球日報)