先月行われたWWDC 2015で発表された、イギリスへのApple Payへの進出。覚えていらっしゃる方も多いかもしれない。そして先週から、ロンドンの通勤族はApple Payを使って地下鉄やバスに乗れるようになった。想像するだけなら非常にクールだが、すぐに飛びついた新し物好きは少なくないトラブルに巻き込まれているようだ。以下はiFanrの記事。
Apple Payの認識スピードが遅く、また支払いモードまでたどり着くのに段階が必要
まず、Apple Payの認識速度がOyster交通カードまたは非接触式銀行カードよりも遅いということだ。 iPhone上のApple PayではTouch IDによる認証が必要となるし、もしApple WatchでApple Payを使おうとすると、パスコードを設定している人は毎回パスコードを入力しなければならないため、ラッシュアワーで行列になっていて、ただでさえすぐにでもゲートを通過したいのに更にトラブルとなっているようだ。もしTouch IDやパスコードの認証が終わっても、実際の支払のための認識速度も遅いのが更に難点だという。
デバイスを切り替えると入場していないことに
また、WIRED UKの記者によれば、もし地下鉄で入るときにはApple Watch、出るときにiPhoneを使ってApple Payで支払いした場合は、同じアカウントでもその区間で最も高い費用が請求されてしまうという。また入るときにApple WatchかiPhoneを使ってApple Payで支払い、それらのデバイスのバッテリーを地下鉄内で使い切ってしまった場合も、最高額を請求されてしまうという。
Apple Payではデバイス切り替えをしてはいけない原因とは
TFLのスポークスマンはWIRED UKに対し、最高額が請求されるのはカード情報の衝突にあるという。根本的な原因は、Apple Payは毎回の支払いごとに独立したIDを発生することで、もしApple Payを同じアカウントで支払ったとしても、デバイスが異なると独立したIDが発行されてしまうからだという。
上記の設定は安全性を増すことに繋がる。Appleのデバイスのストレージには一切ユーザのクレジットカード或いはデビットカードの情報は保存しないからだ。ただ毎回専用のチップに、カードを追加するごとに暗号化された独特のデバイスアカウントが保存される。つまり同じApple PayのアカウントだとしてもiPhoneとApple Watchをとっかえひっかえしながら使うことは不可能ということだ。
ロンドン地下鉄スタッフはWIRED UKに対し、全ての費用の徴収は”単一デバイスを基本とする”としている。ロンドン地下鉄には1日或いは1週間の上限額があり、一定金額を超えるとそれ以上請求されないというディスカウントシステムがあるが、もし通勤族がそのシステムの恩恵を受けたいのであれば、単一デバイスで支払いを行わないと、その上限額がそれぞれのデバイスに適用されてしまい損をすることになる。
今のところ、Apple Payでの通勤はちょっとクールじゃない
今のところ、Apple Payで通勤するというのはそれほどクールではないソリューションのようだ。安全性をとるか、利便性をとるか?という究極の選択をしなければならないということになりそうだ。
画蛇添足 One more thing…
東京出身だが現在基本的に海外在住の私は、東京のあの朝晩の電車のラッシュは遠い過去の記憶だが、しかしあの殺人的な人の波の中で、Apple Payでの支払いでもたついていたらとてもじゃないが東京のラッシュは乗り切れないだろう。もし日本の公共機関の支払いにApple Payを導入する際には、少なくとも公共機関の支払い時だけはTouch IDやパスコードの入力はしなくてもいいようにしないと難しいだろう。
記事は以上。
(記事情報元:iFanr)