アナリストがAppleのティム・クックCEOが愚かな行為、あのジョン・スカリーと同じと酷評

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MarketWatchの報道によれば、Apple(ティッカーシンボル:AAPL)は今年も債券を発行し続け、株主から資金を買い戻し続けているが、これは過去の過ちの繰り返しであり、データが示すとおり、株の買い戻しや株の配当を支払い続けることは株価の上昇には繋がらず逆に株主の価値に損失をもたらすと分析されている。

Tim-Cook

マーケットリサーチ会社「Global Equities Research」のアナリストTrip Chowdhry氏によれば、Appleのティム・クック(Tim Cook)CEOは、あのアインシュタインにいわせれば”愚かな行為”を行っているという。それはすなわち反復して同じ事を繰り返していること、しかもそれが違った結果を生み出すことが期待できないからだという。

先週の会計年度2016年度Q1財務レポートのアナリストとの電話会議で、Appleのルカ・マエストリ(Luca Maestri)CFOは、「2016年に同社は米国と国債債券市場で非常に活発に動いていたが、その目的は資本の買い戻しのための融資だ」と語っていた。そしてAppleは次の四半期の財務レポート、つまり4月には資本の買い戻し行動の詳細を明らかにするとも語っていた。

 

Appleの株価は各株価指数よりも弱い

前出のアナリストのChowdhry氏によれば、債券発行と配当の支払い、そして株の買い戻しを始めてから、Appleの株価は各種株価指数と比べてもひどい動きとなっており、CFOのマエストリとCEOのクックが同様の過ちを続けているのは愚かだと指摘している。

Apple株価とSP500とNASDAQの株価指数比較
Apple株価とS&P 500とNASDAQの株価指数比較

クックは2011年8月からAppleの主導権を握った1年後、AppleはCarl Icahn等の大株主からの圧力に屈し、2012年8月16日から株主に対して配当を支払い始めた。これはAppleにとっては17年間行っていなかった定期的な配当支払の開始となった。

それ以来、先週金曜までAppleの株価は累計で7.1%上昇したが、同期のS&P 500指数は37%上昇しており、ナスダック(NASDAQ)総合指数は51%上昇している。この間、Appleは1100億ドル(約13兆3461億円)もの株を買い戻しており、430億ドル(約5兆2171億円)の配当を支払い、債務が630億ドル(約7兆6434億円)にも跳ね上がった

Chowdhry氏は投資レポートの中で、「これは明らかに、株の買い戻しと配当の支払いが株価の上昇に役に立たないことを示している。マエストリCFOは同じ1つの事を繰り返すことで、違う結果が生まれると信じているようだ」と指摘している。

 

株価よりも、実勢利回りの方が指数を大きく下回っていることも懸念材料

単にAppleの株価が指数より弱いことよりも、指数と比べてAppleの市場価値が低いことの方がより悩ましいことのようだ。マーケットリサーチ会社のFactSetのデータを見ると、Appleの実勢利回り(過去12ヶ月の利潤を採用)は、2012年8月16日の15.52倍から先週金曜日の10.33倍に落ち込んでいるが、同期のS&P500指数を構成する株の平均実勢利回りは逆に13.25倍から16.64倍に上がっている(小龍注:ただしここではナスダック指数については触れられていないところに少々疑問を感じる)。

Apple実勢利回りとSP500の実勢利回り比較
Apple実勢利回りとS&P 500の実勢利回り比較

Chowdhry氏の計算によれば、Appleの実勢利回りはS&P 500指数の成分株よりも下がっており、これによって4800億ドル(約58兆2335億円)の株主価値損失となっているという。彼は投資レポートの中で、「Appleの株の買い戻しは完全に一種の災難だといえる」と指摘する。

 

ティム・クック現CEOはジョン・スカリー元CEOと大差なし?

Chowdhry氏は、クックCEOと1983年〜1993年にAppleのCEOを勤めていたジョン・スカリー(John Sculley)を並べて論じているChowdhry氏のスカリー元CEOへの評価は、「Appleをぶっ壊し、現金を大量に減少させた」というものだ。Appleはスカリー元CEOの在籍時の1987年5月に初めて配当を支払っている

ちなみにスカリー元CEOがAppleに在籍していた1982年年末から1993年年末まで、Appleの株価は倍近くなったが、同時期のS&P 500指数とナスダック総合指数は2倍近くにあがっている

1982年末〜1993年のApple株価とSP500とNASDAQの株価指数比較
ジョン・スカリー元CEO在籍時(1982年末〜1993年)のApple株価とS&P 500とNASDAQの株価指数比較

クックCEOに以前と同じ轍を踏ませている張本人のうちの1人は、恐らく前出のCarl Icahnだろう。監査書類によれば、昨年の9月30日までに、Carl Icahn氏のAppleの保有株式数は5280万株にものぼっている(Appleの現在の株価、97.34ドルで換算すると、59億3955万ドル=約7206億円の価値となる)。

またもし今年の2月8日までのCarl IcahnのAppleの持ち株数が変更がなければ、毎四半期毎に1株毎に52セントの配当支払が行われていることを鑑みると、Appleは彼に今期で2744万ドル(約33億2915万円)の支払いをするということになる。

 

画蛇添足 One more thing…

もちろん株価や実勢利回りの数値は生き物で、常に変動しているため、それらの数値がいいときに「いい」と褒め称え、悪いときに「悪い」とこき下ろすのはアナリストでなくても、たぶん中学生くらいなら誰でもできることだ。またアナリストは表向きには株価操作はやっていないといいながら、やはり自身や自社の顧客のために有利に働くような数値を持ち出して会社の評価をすることはありえるので、話半分で見て置いた方がいい面もある。

ただ、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)に誘われてAppleのCEOとなり、最終的にジョブズをAppleから追い出した形となったあのジョン・スカリー元CEO(Apple在籍前はペプシ・コーラ社のCEOだった)の例が出てきたのは面白い。またティム・クックCEOとルカ・マエストリCFOを諸悪の権現というような言い方をしているが、実際の財務レポートの数値を見れば現金や有価証券保有高も高い数値を記録しているし、今のところAppleは今すぐ屋台骨がどうこうなるというものではないと思う。

ただし、今後の株式投資の対象としてAppleを買うべきかどうかについては、私自身も株専門投資家でもないしアナリストでもないのでわからないが、前四半期で利益の68%を依存しているiPhoneの成長率がほぼ0%に近くなったことから、同製品のピークは過ぎたような感じがする(インドや南米などの新興市場、またアフリカなど未開拓の市場での奇跡の大爆発的な売上げアップでも望めない限り)。それに代わる製品の登場がない限りは、短期での投資は別として長期での保持はやめておいた方がいいのかもしれない。Appleの株は一株あたりの単価は高くないので、それほど資金がなくても買いやすいといえば買いやすいのだが。

記事は以上。

(記事情報元:MarketWatch

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