【iPhone Duo】の予約注文が10月16日の夜に始まりました。その当日に中国聯通(チャイナユニコム、China Unicom)が、2009年に聯通の販路で正規のiPhoneを買った客に対して、iPhone Duoの「最高優先級」の購入資格を開放すると発表しました。IT之家が伝えています。中国本土の予約は現地時間16日20時(日本時間21時)に始まりました。256GBモデルで約37万8,000円(15,999元)のiPhone Duoは、開始から十数分は公式サイトに入ることすらできず、注文できた時点で納期は12月になっていたと快科技は伝えています(見出しは「初回分は一瞬で消えた」です)。買えない人が続出する中で、17年前の客だけを列の先頭に通すという施策です。

本人確認で「尊享摯友」と出れば、近くの聯通Apple正規店で最優先
手順は単純です。聯通の公式サイトで本人確認を行い、判定結果が「尊享摯友」(最上位の会員区分で、直訳すると「特別な親友」です)と表示された人は、最寄りの聯通のApple正規取扱店に行けばiPhone Duoを優先して買えます(IT之家)。対象になるのは2009年に聯通の販路で正規版のiPhoneを買った人で、それ以外の年に買った人は対象外です。IT之家の記事には資格の期限や対象人数、値引きの有無は書かれておらず、優先されるのは買う順番だけと読めます(値引きはないでしょうね)。
なぜ2009年なのかというと、中国本土で正規のiPhoneが初めて売られたのがこの年だからです。2009年10月30日の夜、北京の世貿天階(The Place)で中国聯通が中国初の正規iPhone発売イベントを開き、その場で販売した購入者には番号入りの証書を配りました。来場者の多くは186で始まる番号の3G契約者で、この人たちが中国本土で最初の正規iPhoneユーザーになったとIT之家は振り返っています。186の番号帯は聯通が3Gの開始時に売り出したものですから、今回の本人確認は、その時に契約した番号を今も聯通で使い続けているかどうかを確かめるものだと見るのが自然です。
2009年の初代発売は行列300人、Wi-Fi無しで4日間5,000契約
17年前のこの発売は、今のiPhone Duoの売れ方とは正反対でした。Fortuneによると、発売1時間前の世貿天階の行列は300人弱で、徹夜組は皆無でした。投資界によると、契約なしの本体価格はiPhone 3G 8GBが約6万6,000円(4,999元)、iPhone 3GS 16GBが約7万8,000円(5,880元)、iPhone 3GS 32GBが約9万3,000円(6,999元)でした。
しかもこの時の聯通版iPhoneは、中国政府の当時の規制によってWi-Fi非搭載でした。Fortuneによると、北京の路上ではWi-Fi付きでSIMロック解除済みの並行輸入品のiPhone 3GS 32GBが約7万6,000円(5,700元)で買えた時期で、Wi-Fi非搭載の正規版32GBはそれより約2割高かったわけです。
結果は発売から4日間で新規契約5,000件(FortuneがBloombergとReutersの報道として伝えた数字)で、Piper JaffrayのアナリストGene Munster氏が「失望」と評するほどの滑り出しでした。
その2009年の最安が4,999元、2026年のiPhone Duoの最安が15,999元ですから、入口の価格は元建てで17年に3.2倍です。円建てでは当時の円高もあって約6万6,000円から約37万8,000円へ約5.7倍になります。最上位どうしで比べると、iPhone 3GS 32GBの6,999元に対してiPhone Duo 2TBは26,499元で約3.8倍、容量は32GBから2TBへ64倍です。
当時の正規iPhoneは「高いのにWi-Fi非搭載」と敬遠された商品で、今のiPhone Duoは「高いのに十数分で消える」商品です。同じ会社の同じブランドの端末が、17年でここまで立場を変えました。
中国本土は開始直後に完売、日本は全容量で中国より安い価格
中国本土の価格(IT之家)と日本のApple公式の価格(税込、10月23日発売)を並べると、円換算では日本の方が全容量で安くなっています。
- 256GB:中国約37万8,000円(15,999元)→日本364,800円、日本が約1万3,000円安い
- 512GB:中国約42万5,000円(17,999元)→日本399,800円、日本が約2万6,000円安い
- 1TB:中国約50万8,000円(21,499元)→日本469,800円、日本が約3万8,000円安い
- 2TB:中国約62万6,000円(26,499元)→日本574,800円、日本が約5万2,000円安い
差は256GBで約3.5%、2TBで約8%と、上位の容量ほど開きます。日本の価格には消費税10%、中国の価格には増値税(付加価値税)13%が含まれています。税抜きにそろえると256GBはほぼ同額(中国が約1%高)ですが、2TBでは中国が約6%高いままです。Appleは中国では大容量モデルほど上乗せを大きくしていることになります。
さらに中国本土版のiPhone Duoは物理SIMスロットの無いeSIM専用機で(新浪科技がApple中国公式の技術仕様ページを引いて伝えています)、中国本土版と香港版のSIM仕様の違いは当ブログの比較記事でまとめた通りです。納期は12月まで延び、発売日分を代わりに確保する代理購入の手数料は約2万4,000円(1,000元)を超えていると快科技は伝えています。
価格でも納期でも仕様でも、日本の読者が中国本土版を選ぶ理由は皆無と言えます。
小龍的にはこう思った
2009年の聯通は、Wi-Fiの無い割高なiPhoneを買ってくれる客を探す側でした。2026年の聯通は、開始直後に消えるiPhone Duoを「誰に売るか」を選べる側です。今回の最優先購入権は、聯通にとっては元から割り当てられている在庫の順番を入れ替えるだけで、追加の費用はほぼ不要です。一方で受け取る側から見ると、中国本土では予約が取れず、代理購入の手数料が1,000元を超えている状況ですから、列の先頭に並べる権利そのものに2万円を超える値打ちが付いています。小龍的には、安上がりで話題になる、よくできた施策だと思います。
もう一つ、iPhone Duoがキャリアにとって都合の良い端末だという事情もあります。中国本土版は物理SIM非搭載なので、買った人は必ずどこかのキャリアでeSIMを開通させることになります。2009年のように聯通だけがiPhoneを売る時代は終わりましたが、17年前からの186番号の客を店頭に呼び戻し、そのままeSIMを開通させてもらえれば、聯通としては回線を解約されにくくする手を一つ増やせます。恩返しの顔をした囲い込みですね。
ちなみに初代iPhone(2G)はほぼ米国でしか販売されておらず、しかもキャリアもAT&Tのみで、SIMロックがかかっていました。そのため中国本土でも日本でもiPhone 3Gが正規販売された初めてのiPhoneです。もちろん新しもの好きの中国はiPhone 2Gを脱獄してSIMロックを解除して販売されていました。私も当時は北京にいたので闇の店で買って使っていました。当時は2G通信で、GSM専用だったので日本では対応の電波がなく、使えなかったのでWi-Fi環境下でホレホレするしかありませんでした。
上記の通り、中国で初めてのiPhone販売が大々的に発表されたのは、北京の世貿天階(The Place)というショッピングモールでした。その入口に非常に大きな、少し斜めになって文字通り天国への階段のような形状をした縦長の屋根の下に巨大ディスプレイがあり、そこでド派手な広告画像を流せるのがウリでした。私はこのショッピングモールがオープンしたときはまだ北京でパンクバンド「脳濁(Brain Failure、ブレイン・フェイラー)」のマネージャーをやっていて、当時こけら落としでうちのバンドがギャラをもらって出演したことを思い出します。それだけ、縁があるなあと感じます。
日本では2008年7月にSoftBankがiPhone 3Gを売り始めて18年になりますが、当時の客を名指しで優先するような話は、今回のiPhone Duoでは見当たりません。そのあたり、マーケティングが下手になったよなあ、と思います。というわけで日本の読者は、中国より安い日本のApple公式で先着順に並ぶしかありません。
そしてiPhone 3Gを中国で初めて扱ったキャリアも中国聯通です。日本でいうと、Softbankと同じ扱いですね。中国聯通は中国三大キャリアの中でも最も尖っていて、最新のものを導入するイメージがあります。まあ全て国営ですし、胴元は一緒と言えば一緒ですが、それでもやはりパイオニアのイメージを確立しているのはやはり中国聯通です。
2009年に中国に駐在していて聯通で正規iPhoneを買った方がもしいれば、聯通の公式サイトで本人確認を試してみる価値はあります。ちなみに私は私も現在はブロードバンドとの兼ね合いで中国電信がメインですが、聯通の番号はずっと使っています。2009年には上海にいて、既に聯通を使っていたのですが、中山に移住したときに番号を変えてしまったので、当時の番号は使っていません。もったいないことをしました。。とはいえ既に香港版を予約済みで、中国本土版は色々と制約があるので買うつもりはありませんが😂
記事は以上です。
(記事情報元:IT之家、新浪科技、快科技、Fortune、投資界、Apple。2026年の元価格の円換算は三菱UFJ銀行の公表相場2026年10月16日の仲値TTM=1元23.64円、2009年の元価格の円換算は米連邦準備制度理事会の公表相場2009年10月30日の1ドル6.8264元・1ドル90.50円から求めた1元=約13.26円による、いずれも参考値です)



