Appleの25年前に試作されつつ量産されなかった幻のデバイスW.A.L.T.のプロトタイプが公開される

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Appleにはこれまで多くの量産まで至らず開発が断念されたいわゆる「幻のデバイス」が多く存在します。最近の”AirPower”などは大々的に発表されながら発売されなかった典型的な例ですが、25年も前に当時としては画期的なデバイスで、公式に発表されながらリリースされなかった”W.A.L.T.(WALT)”のことをご存じの方は少ないかもしれません。

数年前からAppleの未発表製品のリーク情報を頻発することで有名なSonny Dickson氏より、そのW.A.L.T.の完動品の動画が公開され、その全容が明らかになりました。このW.A.L.T.は、1993年に「電話もできるMac」というコンセプトモデルとして試作されたもので、電話回線を使ったオンラインバンキングへのアクセスや、タッチスクリーン、FAX機能などを備えた、iPhoneやiPadの遠い祖先のようなものでした。

この「テレフォンMac」デバイスことW.A.L.T.は1993年にMacWorldで発表され、いくつかのプロトタイプが製造されました。W.A.L.T.の全称はWizzy Active Lifestyle Telephoneで、さまざまな電話回線を使ったサービスを提供するタブレット型デバイスでした。「古典的なMac」の仕様と、ダークグレーの変種で製造された珍しいハードウェアは、コレクターの間で時折取引されていました。しかし、そのハードウェアは最初の1993年のMacWorldでの発表以外に、公には完全に機能するデバイスが公開されることはありませんでした。

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Welcome to WALT!かっこいいですね。しかし動きはめちゃトロいです。。

そして今回公開されたSonny Dickson氏によるW.A.L.T.の完動品の画像と動画によって、手書き文字認識と一般的な入力のための”スタイラスペン”を備えた大きなグレースケールのタッチスクリーンがあることがわかりました。当時では非常に高度な技術を使って作られたW.A.L.T.では、オンラインバンキングサービス・ファックス・発信者番号付与サポート・アドレス帳、そしてカスタマイズ可能な着信音などが機能として実現されていました。

BellSouthとの提携で設計されたこのデバイスは、実はPowerBook 100の部品によって構成されていて、ハードディスクドライブから実行されるW.A.L.T.用に特別にカスタマイズされた特別なバージョンのMac OS 6が実行されています。外部接続にはSCSI、VGA、外部オーディオなどのオプションが含まれていましたが、内部にはタッチスクリーンとその他のハードウェアの間を接続するカスタマイズされた”ドーターボード”の最も優れた「現代の例」の1つが含まれています。

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動画によれば、W.A.L.T.には各機能を起動するためのハードウェアボタンが複数設置されるなど工夫されていますが、起動は非常に遅く、また実際のスタイラスペンによる操作はもっさりしていてかなり遅れが目立ちます。現代のiPadのApple Pencilによる快適な操作性とは比ぶべくもありませんが、当時としては画期的なものであったと思われます。

W.A.L.T.のプロトタイプは、時折オークションやマニア同士の取引に比較的高い価格で登場しています。例えば2012年にはeBayオークションに登場し、落札価格は8000ドル(現在の為替レートで約89万円)にもなりました。製品に含まれているマニュアルには、プロトタイプデバイスであることが明確に記載されていて、水の近くで使わないこと、デバイスを落とさないこと、そして接続ケーブルを踏まないことなどの注意事項まで書かれています。

W.A.L.T.の各機能は、現代のiPhoneやiPadその他のモバイル機器で利用可能なものと比べて比較的基本的なものではありますが、動画を見るとAppleが実はかなり長い間、iPhoneのような機器の可能性を検討してきたことが示されています。ちなみにこのW.A.L.Tよりも機能が劣っているポータブルデバイスの”Newton”は、同じ1993年から量産されて正式にリリースされましたが、セールス的には成功したデバイスとは言いがたいもので、Appleに復帰したスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)による事業の大規模な整理整頓(選択と集中)によって1998年に製品販売中止が決定されました。

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しかし当時はまだハードウェア技術面やインターネットがまだ登場していなかったことから外的要因も含め、本当の意味でのスマートデバイスは実現できなかったわけですね。

Sonny Dickson氏のサイトには、更に内部の複数の写真が公開されていて、オールドMacファンにとってはたまらない内容になっています。ぜひご覧ください。

個人的には、今でもWALTと似たような持ち運びが非常に便利なiOSではなくmacOSで動くデバイスが出れば、買いたいなと思うのですが。

記事は以上です。

(記事情報元:Sonny DicksonMacRumorsApple Insider

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