Siriはなぜ他の音声アシスタントの後塵を拝するようになったのか

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Appleの音声アシスタント、Siri(シリ、Speech Interpretation and Recognition Interfaceの略)はかつて、イノベーティブなモバイルデバイス用音声アシスタントとして華々しくデビューし、実際その性能は群を抜いていました。しかしここ数年、SiriはAppleユーザから狂ったようなツッコミをくらっているだけではなく、AmazonのAlexa、GoogleのGoogle Assistant、SAMSUNGのBixbyなどのライバルがあっという間にSiriを追い抜き、Siriは更に遠く引き離されている状況です。

明らかに、今のSiriはAppleが求めているレベルに達していないと思われます。ではいったい、AppleのSiriチームは何をしているのでしょう?実はSiriの開発は困難を極めていたようです。これまで謎に包まれていたApple社内のSiriチームについて、海外メディアのMashableが鋭く切り込んでいますので、一部を紹介します。

Siriはもともと土台がしっかりしていなかった

siri

The Informationのレポートによると、Siriはもともと土台があまりしっかりしていなかったようです。Appleが2010年に2億ドルで買収された後、最初にこのSiriプロジェクトを管理していたのは当時のiOSの主管のスコット・フォーストール(Scott Forstall)SVPでした。しかしフォーストール元SVPの注意力は当時開発が急がれていたApple Maps等のプロジェクトによって分散されていたため、Apple Mapsのプロジェクトにいたリチャード・ウィリアムソン(Richard Williamson)をSiriのトップに据えました。

スコット・フォーストール Scott Forstall
Scott Forstall, Apple senior vice president of iOS software, gives a demo on Siri at the annual Worldwide Developers Conference 2012 at Moscone West conference center in San Francisco, California, on Monday, June 11, 2012. (Gary Reyes/San Jose Mercury News/MCT)

AppleのSiriに対する要求が高すぎた?社内Siriチーム内部でも軋轢が

数名のAppleの元社員は、ウィリアムソン氏はSiriに多くのプランをもたらしたということは認めていますが、チームメンバーは誰も彼のやり方に同意していませんでした。例えば毎年1回だけしかSiriの性能をアップデートしない、という計画もその1つでした。このことはAppleに買収されたSiriの共同創業者、ノーマン・ウィナースキー(Norman Winarsky)氏によっても証言されています。ノーマン氏は、AppleがSiriの開発であまりに急ぎすぎたとしています。初期段階のSiriはもともと本当にシンプルなアシスタントに過ぎなかったのですが、Appleはそれを万能なアシスタントにしようと考えていたのです。

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Norman Winarsky

保守派が主流を占めるAppleの社内

興味深いことに、今のApple社内には”保守派”が主流を占めていて、彼らはSiriの機能は少しずつ向上すればいいと考えているのです。そんなわけで、最近第一弾としてアメリカなど海外のみでリリースされたスマートスピーカー”HomePod”上のSiriではまるで従来よりも機能が後退したように感じた人がいたほどです。

責任は自分にはないと発言する元責任者

上述のかつてSiriチームを率いていたウィリアムソン氏は、「Siriがリリースされて数年後、その性能はまるで災難のようです。非常に低効率で、各種のバグに溢れています。しかしその責任は私にはありません。問題はSiriのオリジナルチームにあるのです」と、まるで責任転嫁ともとれるような発言さえしています。

Siriの「基礎」がよくない状態のまま、Siriチームは製品計画や重要な発展路線上でチーム内でも意見が食い違い、当時スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が亡くなったことも、Siriがその実力を1つの方向に十分に発揮できない状況をもたらしました。音声認識とコンテンツサーチの、本来は緊密な連絡を取り連携すべき2つのチームが、仕事上で大量の論争を重ねていました。

サードパーティ向けにSiriKitをリリースするが、鳴かず飛ばず

そこで、Siriを救うために、ウィリアムソン氏はSiriチームの反対を押し切ってSiriKitをリリースし、サードパーティのデベロッパ(開発者)達にSiriの改善を手伝ってもらおうとしたのです。しかし最終的にSiriKitには何の進展もみられず、デベロッパはこのプロジェクトの存在に見向きもしていません。なぜならSiriの機能とそのフレキシビリティにあまりにも制限が多すぎるからです。今のところ、SiriKitは全部で決済、ToDoの追加、写真の内容を調べるなど9ほどのプロジェクトしかなく、また以前SiriKitの責任者だったシニアエンジニアは既にAppleを去ってしまっています。

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iOS 11のSiriKitの機能。9項目しかない

しかし最近、AppleはこのSiriのどうしようもない状態にメスを入れようとしているようです。Appleは「私たちはSiriの性能、拡張性と信頼性について重要な進展がありました。また最新のマシンラーニングテクノロジーを採用することで、更に自然な音声と更に自発的で能動的な機能を実現します。私たちは今後も引き続き深くマシンラーニングと人工知能(AI)分野の研究を進めていきます。そしてSiriの回答の品質を常に引き上げ、またSiriが答えられる問題の範囲を広げていきます」と発表しています。

Appleは相当頑張らないと遅れを取り戻せないかも

なんだかとても今更感を感じる声明ですが、Appleはユーザのプライバシーを重視するあまり、ビッグデータにユーザの情報を提供することをしないことでビッグデータをうまく利用できなかったことで他の音声アシスタントに後れをとってしまっているという一面もあるでしょう。

Appleは今後他社レベル、またはそれ以上にSiriを改善させることができるのでしょうか。できないならSiriKitをもっと解放するか、いっそのこと他のサービスを利用するようにするか、ある程度完成しているシステムを買収してしまった方が早い気がします。

私自身はiPhoneなどデバイスに音声で話しかけて命令したり何か探し物をする、というのが特に街中では非常に恥ずかしく感じるため、Siri機能をオフにしているほどです。実際使ってもそれほどいい回答が得られないというのももちろん理由の一つではありますが。。Siriが使いやすくなっても、私は使わないかもしれません。フリーメイソン、ゾルタスクゼイアン(の卵運び)、最初の人工知能(AI)イライザとの関係など、都市伝説もあるSiri。。面白いのですが私はそういうのもあってちょっと使う気がしないのです。笑

それよりも、Apple社内で保守派が主流を占めていると事実が、最近のiOSやmacOSのバグ・セキュリティ問題の頻発や機能の停滞、iPadやMacなどハードウェアのラインナップの混乱、そして新たなビジネスの軸となる新製品や新サービスが一向に出てこないという事態を招いているような気がします。

記事は以上です。

(記事情報元:Mashable

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