iPhone SE 第2世代 公式サイトの日英中キャッチコピーを比較してみた

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噂通り、4月15日に発売となった第2世代 iPhone SE。

しかしそのAppleの公式サイトのiPhone SE 第2世代(以下iPhone SE 2)の日本語キャッチコピーにTwitter界隈などでツッコミが入っているようです。。個人的にもちょっと書き方どうなの?というものもあります。

iPhone SE 2

ところで、Appleは世界中で製品を売っていて、各国語で各製品のキャッチコピーを書いています。だいたい同じような意味で書かれてはいるのですが、それでもちょっと違いがあります。

そこで、私がわかる言葉をいくつか挙げて、比較してみました。なお、中国語は中国大陸・香港(&マカオ)・台湾と3つのバージョンがあり、それぞれ表現が異なっているのも面白いので、それぞれ紹介していきたいと思います。

iPhone SE 2 メインキャッチコピー

さて、記事更新時点でトップページに出ているiPhone SE 2のメインキャッチコピーからいきましょう。

日本語

「手にしたくなるものを、手にしやすく。」

これは案外普通な感じがしますが、日本語的に「安い、廉価」→「手にしやすく」という表現が、奥ゆかしい感じがします。

英語

“Lots to love. Less to spend.”

お洒落ですね。日本語的には、「愛をもっとたくさん。支出はもっと少なく。」みたいな感じでしょうか。”Love”を使っているのがお洒落に感じるのでしょうか。

さて中国語3つ行きましょう。

中国大陸(中文、普通話)

“称心称手,超值入手。”

この”称心称手”は”称心”+”称手”の造語なのですが、iPhone SEの特長がうまく2つ込められています。”称心(chen xin)”は、心に適う→日本語キャッチコピーの「手にしたくなる」、という言葉にピッタリです。そして”称手(chen shou)”は、「使いやすい」という意味です。つまり、「手にしたくなって使いやすい」という日本語で書くとちょっと野暮なくらいなことを4文字に詰めている、ということですね。中国語の奥深さを感じます。そして後ろの”超值入手(chaozhi rushou)”は、日本語で読んでそのままの意味ではあるのですが、”超值(chaozhi)”は正にあのニトリのCMではないですが、「お値段以上」という意味です。他に、「お得」「お値打ち」「割安」という意味もありますが、まあ言い方次第ですよね。そして”入手”はもうそのままです。というわけで後ろの4文字で「お値段以上で入手」、という意味になります。

全体を日本語訳すると「手にしたくなって使いやすい、お値段以上で入手。」という感じになります。なんだかストレートではありますが、しかし日本語では本当に冗長になってしまいますね。中国語ではたった8文字なのに、日本語では21文字です。。

香港(中文、広東語書き言葉)

“精彩多多,付出不多。”

中国大陸のキャッチコピーとは全く異なっていますね。”精彩多多”は「素晴らしさがいっぱい」という意味で、”付出不多”は「支出は少なく」という意味です。繋げると、「素晴らしさはいっぱい、支出は少なく。」という感じでしょうか。日本語とほぼ一緒の意味ですが、日本語の奥ゆかしさを感じてしまいますね。笑

台湾(国語)

“精彩不少,付出不多。”

台湾は大陸の普通話に近い国語(海外ではMandarin、日本語では「北京語」と呼ばれる言葉)なのですが、なぜかこちらは香港とほぼ一緒で、意味も一緒です。大陸と同じにしないのは台湾の意地かもしれません。面白いですね。”不少(bu shao)”は少なくない=「多い、たくさん、いっぱい」という意味で、そこの部分の言い方を変えただけになりますね。香港の広東語との違いですが、恐らくそれぞれ響きを重視したのだと思います。推測に過ぎませんが。

iPhone SE 2 A13チップ

このA13チップのキャッチコピーは個人的にはかなり好きです。ただし、条件があります。日本語以外。では日本語から。

日本語

「iPhone 11 Proと同じチップ。ちょっとした自慢です。」

これ、一番ストレートすぎてつまらないキャッチコピーなんです。。それは下の、日本語以外の表現を見てみればわかります。

英語

“iPhone 11 Pro called. It wants Its chip back.”

拙訳ですが「iPhone 11 Proは叫んだ。そのチップを返せと。」

iPhone 11 Proが叫んだ、嫉妬したなんて表現はかなり面白いと思いますね。iPhone 11 Proを擬人化しているわけです。さすがAppleと唸らされます。

そしてもっと面白いのが中国語。

中国大陸(中文、普通話)

“咱们这颗芯,与iPhone 11 Pro大哥平起平坐。”

この表現は非常に、北っぽい表現です。というのも、”咱们(zanmen)”「私たち」という表現が、北方の表現だからです。そして、”咱们这颗芯”は直訳すると「私たちのこのチップ」という意味ですが、中国語では”心”と”芯”が全く同じ発音のため、うまくかけています。ただしこの言葉遊びは中国大陸でしかできません。というのも、中国大陸ではチップのことを”芯片”と呼ぶのですが、香港や台湾では”晶片”と呼ぶからです。

そして後ろの”与iPhone 11 Pro大哥平起平坐”も、とても”接地气”、つまり「大衆に受け入れられやすい」表現となっています。”iPhone 11 Pro大哥”ということで、iPhone 11 Proを擬人化して兄さん扱いにして、そして”平起平坐”は、「対等であること」を指します。つまり、繋げると「私たちのこのチップ(心)は、iPhone 11 Pro兄と対等です」という感じになります。

香港(中文、広東語書き言葉)

“竟然用上同一晶片,iPhone 11 Pro表示抗議。”

香港は、最近の抗議デモの影響か(笑)、なんとiPhone 11 Proが抗議をするという内容になっています。訳してみると、「こともあろうに同じチップを使っているなんて、とiPhone 11 Proが抗議をしています」という意味になります。中国大陸の普通話では、iPhone SE 2がiPhone 11 Proと対等であることを強調したのに対し、香港はiPhone 11 Proが抗議をするというような表現で、iPhone SE 2のよさを引き立てる、というやり方です。面白いですね。そしてどちらも、iPhone 11 Proを擬人化しています。

ただ、これはちょっと皮肉な話で、iPhone SE 2はiPhone 11 Proよりも圧倒的に安いのに、同じA13チップを積んでいるということですから、正直、iPhone 11 Proは相当高い値段がついてるな、もっと安くできるんじゃないの?と思ってしまいますね。。

台湾(国語)

“謝謝iPhone 11 Pro大哥,你的晶片果然厲害。”

この台湾国語の表現も他と違って面白いですね。訳すと、「iPhone 11 Pro兄、ありがとう、あなたのチップはやっぱり素晴らしい。」という感じです。台湾国語ではiPhone 11 Proを”大哥”=「兄」という表現をしているのは大陸と同じですが、字面通りiPhone 11 Proに感謝した上に、更に褒めまくっています。iPhone 11 Proを持ち上げることでiPhone SE 2も同様に持ち上がっている印象を与えているわけですね。抗議している香港とは大違いですね。。笑

iPhone SE 2 ホームボタン

これも、日本と香港以外はなかなか素敵な表現になっています。

日本語

「ただいま。ホームボタンです。」

いやいや、ただいまって。。もともとiPhone 8のシャーシに中身をパワーアップして安くしたのがSEでしょう?ただいまって、どこかから戻ってきたわけでもないし。。とツッコミをいれたくなるキャッチコピーです。しかし英語になるとこれが響きが違うのです。。

英語

“Home sweet Home button.”

これは訳する必要もないですね。「ホーム・スイート・ホーム・ボタン」。これは素敵です。”Home Sweet Home”の元は1914年のアメリカの映画の題名ですが、その後様々なこの表現を使った映画とそれ以外のジャンルの作品が登場。ヘヴィメタルバンドの”モトリー・クルー”の楽曲名だったりもしますよね。

誰もが知っている言葉をうまくホームボタンにかけたなという感じが私個人はしますが、アメリカでは使い古されている表現なのかもしれません。ちょっとわかりません。

そしてやっぱり面白いのは中国語たちです。

中国大陸(中文、普通話)

“来吧,主屏幕按钮点赞。”

訳してみるとこんな感じです。「さあ、メインスクリーンのボタンにいいね」。これですよ。メインスクリーンのボタンというと、ちょっとタッチスクリーン内に設置されたオンスクリーンの指紋認証と誤解を生みそうな感じではありますが、「ホームボタン」の意味です。”点赞”=「いいねをする」というネット用語を使って、いいねは「親指を立てる=サムズアップ」を意味するので、それと親指で押すホームボタン+指紋認証をかけているというのが何とも妙ですね。

香港(中文、広東語書き言葉)

“主畫面按鈕,歸位。”

これは香港にしては珍しく、ひねりがない表現ですね。「ホームボタンが元の席に戻ってきた」、というような意味です。つまらないと感じる理由は、日本語と同様です。いや、もしかしたら”歸位”という言葉に何か香港っぽいなにか皮肉でも詰まっているのかもしれませんが、、私にはちょっとわかりませんでした。

台湾(国語)

“主畫面按鈕,回歸主場。”

台湾の表現は、香港よりはちょっと面白いかもしれません。後半の”回歸主場”で、サッカーの「フィールド(ピッチ)に戻る」という表現を採り入れているからです。「ホームボタンがフィールドに戻ってきた。」という感じで、サッカーの実況のようなイメージがあり、これはなかなかの表現なのではないかと思います。個人的には、不思議なことにツッコミを入れたくならないですね。

そして香港と台湾はホームボタンは”主畫面按鈕”で共通しており、大陸の”主屏幕按钮”という言い方と一線を画しているのも面白いですね。

iPhone SE 2 カラーバリエーション

カラバリの表記ですが、これもまた日本語以外は面白い表現です。特に中国語は、中国は赤を民族の色としていることや、他にも意味があることからそこを利用しているのが特徴です。

日本語

「黒か。白か。ポップに行くか。」

これはまた、、ポップな赤、といいたいのでしょうけども、(PRODUCT)REDの赤色は、売上げの一部がエイズ基金に寄付されるなど、実はそんなにポップな感じの色づけ・意味づけがされているものでもないと個人的には思っています。しかも、ポップさを求めているなら多色展開のXRにいくでしょう。なんかちょっとピントがずれているような気がするのは私だけでしょうか。

英語

“Comes in Black, White, And Pow.”

すみません、私は英語のニュアンスがあまりわからないのですが、Powは「ポカン、パン、バシッ」というような擬音表現のようです。となると、「黒の入場です、白の入場です、そして、、ポン!」みたいな感じなのでしょうか。

やはり面白いのは中国語の表現です。

中国大陸(中文、普通話)

“有黑的,有白的,还有这个要火的。”

大陸の中国語表現はやはり面白いですね。。「黒もあります、白もあります、そしてこの更に流行るのもあります」というような意味になります。赤は火の象徴。そして”火”には、「ホットな」「流行る」というような意味があります。

 

香港(中文、広東語書き言葉)

“有黑的,有白的,有火辣辣的。”

香港も中国大陸普通話と似たような感じですが、更に強調していて、”火辣辣”=「焼け付くように熱い」という表現をしています。香港でそこまで流行るかどうかは、わかりませんが。。

台湾(国語)

“有黑款。有白款。還有一定會紅款。”

台湾も香港と同様、中国大陸版よりも更に踏み込んだ表現となっています。”一定會”=「必ず〜であろう」という言葉を使って、「必ず流行るだろう赤モデルもあります」とされています。これもまた、面白い表現ですよね。

この中国語キャッチコピーを見ていると、日本の製品のキャッチコピーでは「流行りの」とか、「これから流行る」とかいう言葉は既に使い古されているか、或いは何らかの理由で故意に避けられているような感じもしますね。

iPhone SE 2 キャッチコピーはやっぱり各国面白かった

iPhone SE 2の各国語のキャッチコピーを比較してみましたが、いかがでしたでしょうか?(あ、ここはいかがでしたでしょうか系のアフィリブログではありませんよ。。笑

こうやって並べてみると、大元の表現したいテーマは一緒でも、各国の習慣や流行りによって、キャッチコピーの言葉の選び方が違うのが、Appleの公式サイトの面白さでもありますね。恐らくその国や地域の広告のエキスパートが、一番響きそうなキャッチコピーを考えての結果となっているのだろうと想像できます。個人的には、やはり中国語のキャッチコピーが秀逸だと感じます。中国語は、漢字一つにたくさんの意味を込めることができます。2文字になると更に多くの意味を込められます。四文字になると、更に四字熟語(中国語では”成语”といいます)が日本にあるのでおわかりになると思いますが、更に更に奥深い表現をすることができるんですね。もちろんキャッチコピーがいいからといってこの状況で本当に売れるかどうかは、別として。。笑

しかし読み返してみますと、私はちょっと日本語キャッチコピーに厳しすぎますかね?

記事は以上です。

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