Appleのレアな端末の収集家、Giulio Zompetti(@1nsane_dev)氏が、Twitterで珍しい初代iPadのプロトタイプとされる端末の写真を投稿しています。
Zompetti氏の説明によると、AppleはiPad開発初期にはデュアルドックシステムを検討していたとのこと。実際、2つ目のドック(Lightning以前のかつてのiPhoneやiPadに採用されていた30pinコネクタポート)が本体の左側についているのがわかりますね。これによって、何らかの作業と同時に充電をサポートする予定だったようです。しかし、その後のDVTの段階でこのデュアルドック構想はキャンセルされたとのこと。
Here is a detailed view of both the hardware interfaces. #AppleCollection #Apple #iPad #prototype pic.twitter.com/CcWWAUPcz9
— Giulio Zompetti (@1nsane_dev) March 27, 2021
上記のDVT(Design Validation Test/設計検証テスト)は、開発・製造段階での動作検証テストのことを指しています。
Appleは他社と同様、まずはEP(Protoとも呼ばれるプロトタイプ機)を作り、その後段階によって以下の動作検証テストを行っています。EPは一般的には量産段階に比べて非常にコストが高くなるため、通常は1〜10台作られますが、Appleの場合は様々な可能性の検証を行うため、より多くのプロトタイプを作るようです。更に情報漏洩を防いだり、情報伝達経路を探るために、フェイクのプロトタイプ情報をわざと流すという噂もあります。
以下が3段階の検証ステップの用語解説です。
- 「EVT」(Engineering Validation Test/技術検証テスト)
通常20〜50ユニットの実行(Appleにおいては不明)で、外観と動作のようなプロトタイプを組み合わせて、PRD(製品要件ドキュメント)のすべての機能要件が満たされていることを確認します。AppleはiPhoneにおいてはだいたいこのEVTを4月頃に行うのが恒例のようです。なお、このEVTで不合格となった場合はプロトタイプにEVTIIビルドという改良版が作られることがあります。 - 「DVT」(Design Validation Test/設計検証テスト)
本来は大量生産前の仕様決めという要素があるのですが、それよりも規制規格に合致しているかの確認の要素が強いのがこのテストです。このテストの前段階で、大量生産時の歩留まりに大きな影響がある問題は取り除いておく必要があります。
テストは通常50〜200のビルドによって行われ、燃焼試験、特定の高さからの落下試験、水中への沈め込み試験、および広範なバッテリーテストなどの厳格なテストを受けます。このステップは、FCCやULなどの規制認証を必要とする製品にとっても重要です。これは、販売に適したユニットを作成する前の最後のステップといえます。 - 「PVT」(Production Validation Test/生産検証テスト)
最初の公式量産実行テストのことで、多くの場合、最初の量産の5〜10%に対して行われる、目標コストに必要な量で製品を製造できることを確認する試験です。この段階ではQA(品質保証)とQC(品質管理)手順が既に完成されています。ここで最終的な生産設備や治具などの調整が行われ、性能と品質が検証され、これでOKとなると正式な量産に入る、というわけです。
今回リークされたプロトタイプはEP段階のものか、或いはEVTの段階でのやり直しビルドかについてははっきりしていませんが、いずれにせよZompetti氏の言うとおりであれば、DVTの前段階のものであるといえるでしょう。
デュアルドックで充電をしながら出力をする、というような仕様にしたかったようですが、結局基板の位置や製造の問題でそれを諦めたのだと思われます。現在のiPad ProやiPad Air等にはMagic KeyboardやSmart Keyboard Foglio等を取り付けるための磁気コネクタ(3つの丸い金属端子で、以前はApple Watchなどでテスト用ポートとして使われていた)がついていますが、もしかしたらそれは初代iPadのプロトタイプ段階でテストされたデュアルドック構想が復活したといえるかもしれませんね。
そういう意味では大変貴重なものがアップされたなあという感想です。
記事は以上です。
(記事情報元:Twitter)