Bloombergのマーク・ガーマン氏が11月1日(米国時間)のニュースレター「Power On」で、Appleが2027年前半に【iPad Air】【iPad Pro】【iPad(第12世代)】の3機種を投入する計画だと伝えました。MacRumorsの要約によると、次期iPad AirはOLEDディスプレイになり、次期iPad Proは熱を逃がして持続性能を上げるベイパーチャンバーを採用するということです。チップについてはMacRumorsが、iPad AirはM5、iPad ProはM6になる見込みだと書き添えています。現行のiPad Air(M4)は今年3月11日に発売されたばかりですから、1年で画面が液晶からOLEDに変わるという早い世代交代になります。鍵になるのは、11月6日に発売されるiPad mini(A20 Pro)のOLEDと、6月の値上げ後の日本価格です。

ガーマン氏が伝えたのはOLEDとベイパーチャンバー、チップはMacRumorsの見立て
MacRumorsの記事を読むと、ガーマン氏の情報として書かれているのは「次期iPad AirはOLEDディスプレイを備える」と「次期iPad Proは放熱のためのベイパーチャンバーを備える見込み」の2点です。M5とM6はMacRumorsが「おそらく」として足した見立てで、外観の変更や価格については、ガーマン氏もMacRumorsも触れていません。入門機のiPad(第12世代)については、Apple Intelligence対応のA19、Wi-Fi 7対応のN1、セルラーモデルのC1Xモデムという9月に出ていた噂をなぞっているだけで、今回の新しい情報はiPad AirのOLED化とiPad Proのベイパーチャンバーの2つです。入門iPadの噂は当ブログでも10月にお伝えしています。
ちなみにベイパーチャンバー(Vapor Chamber)とは、内部に少量の作動液(水やアルコールなど)を封入した薄い金属製の密閉容器で、CPUやGPUなどの発熱源から出た熱を面方向に素早く拡散させる冷却部品のことを指します。
現行機の仕様をAppleの仕様ページで確かめると、iPad Air(M4)は11インチと13インチともIPS方式のLCDで、厚さ6.1mm、無線はN1とC1Xを既に積んでいます。iPad Pro(M5)はタンデムOLEDで、厚さは11インチが5.3mm、13インチが5.1mmです。つまり来春の3機種は、入門iPadが無線チップでiPad Airに追いつき、iPad AirがOLEDでiPad Proに近づき、iPad Proは冷却と新チップで逃げる、という3段の並びになります。
iPad AirのOLEDは、11月6日発売のiPad miniと同じ60Hzの単層パネルか
どんなOLEDが載るかは、ガーマン氏より先に部品側から出ています。韓国のディスプレイ業界紙The Elecが8月11日に伝えたところでは、次期iPad Airのパネルは11インチと13インチの2種類で、発光層を1層だけ使う単層(シングルスタック)のRGB構造にLTPS(低温ポリシリコン)のバックプレーン、ガラス基板と薄膜封止を組み合わせたハイブリッドOLEDになる見込みです。リフレッシュレートは60Hzとされています。主要な供給元はSamsung Displayで、BOE(京東方)が2社目の座を狙っており、BOEの量産認証は11月か12月に決まる見通し、Samsung側の量産は年末から年明けということです。The Elecははっきりと、単層OLEDとLTPSの採用は「OLEDの画質を保ちながらパネルの費用を下げ、iPad Proと差を付けるため」だと書いています。
この作りは、11月6日に発売される新しいiPad mini(A20 Pro)とそっくりです。当ブログでお伝えしたとおり、iPad miniのパネルもLTPSのハイブリッドOLEDで60Hz固定、Samsung Displayの牙山A2ラインで量産というリークがあり、実際に発表された製品はOLEDなのにProMotion非対応でした。Appleのハードウェアエンジニアリング担当副社長のデイブ・パクラ氏は、OLEDの画素の応答がLCDより1桁以上速いので動きのぼやけは大幅に減ると説明しつつ、リフレッシュレートの話には答えていません。次期iPad Airの画面は、このiPad miniの画面を11インチと13インチに広げたものと考えてよさそうです。
一方のiPad ProはAppleの製品ページにあるとおり、発光層を2層重ねたタンデムOLEDに、10Hzから120Hzまで可変のProMotionです。ProMotionは静止画のときに10Hzまで落としてバッテリーを節約する可変式なので、LTPO(低温多結晶酸化物)のバックプレーンが要ります。The Elecの言うとおりLTPSなら、iPad AirのOLEDは60Hz固定で、iPadの中でProMotionがあるのはiPad Proだけという線引きは来春も変わりません。「OLEDになるならAirで十分」と思って待っている人は、欲しいのが黒の締まりと残像の少なさなのか、120Hzの滑らかさなのかをはっきりさせておいた方がよいでしょう。前者ならiPad Airで足り、後者ならiPad Proしかありません。
中国との関係で1つ補足します。The Elecは、BOEが認証を取れなければ初回生産はSamsung Displayの単独供給になり、BOEのパネルが採用されても初回の出荷分は中国市場向けモデルか整備済製品に限られる可能性があると書いています。9月にOmdiaが示したロードマップでも、2027年のiPad AirはBOEのB12ラインとSamsungのA2ラインの2社供給(当ブログの記事)でした。中国本土で買うiPad AirだけBOEのパネル、という時期があり得るということになります。
iPad Proのベイパーチャンバー、iPhone 17 Proの仕組みを5.1mmの筐体へ
ベイパーチャンバーはAppleにとって新しい技術ではなく、2025年9月のiPhone 17 Proで初めて載せたものです。Appleのプレスリリースの説明では「脱イオン水がアルミニウム筐体にレーザー溶接されたベイパーチャンバーに密封され、パワフルなA19 Proから出る熱を逃し」、熱は鍛造アルミニウムのユニボディに運ばれて全体に分散されます。その効果としてAppleは、前世代と比べて最大40パーセント長くパフォーマンスが持続すると書いています。現行のiPad Pro(M5)の発表文にも製品ページにも、ベイパーチャンバーや放熱の記述はありません。
iPad Proの筐体もアルミニウムで、厚さは13インチが5.1mm、11インチが5.3mmしかありません。iPhone 17 Proの作りをそのまま持ち込むなら、この薄い板の中に水を封じた部屋を溶接で組み込む形です。iPad Proで動画の書き出しやローカルのLLM(大規模言語モデル)を回すような使い方では、最初の数十秒の速さより、熱でクロックが下がらずにどこまで続くかが効いてきますから、ベイパーチャンバーが持続性能のために入るというガーマン氏の見立ては筋が通っています。
そしてM6は既に存在します。Appleは10月27日にM6搭載の14インチMacBook Proを発表しており、M6は12コアCPUと12コアGPU、デュアル16コアNeural Engineで、M5と比べてグラフィックス性能が最大30パーセント、Neural Engineが最大1.9倍高速です。M5のときはiPad ProとMacBook Proが同じ2025年10月に出ましたが、今年はMacBook Proだけが先に出て、iPad Proは来春までお預けです。筐体の中に冷却機構を新設するのであれば、チップだけ載せ替えたMacBook Proと同じ日に出せなかったのも分かる気がします。
日本の値段は?6月の値上げで11インチiPad Airは129,800円、iPad Proとの差は8万円
価格についてガーマン氏は何も書いていませんが、日本の読者には一番気になる点ですから、今の階段を並べます。Appleは6月25日にiPadとMacの価格を一斉に引き上げており、Apple Storeの購入ページの現在の価格と、発売時のプレスリリースの価格を突き合わせると次のとおりです(いずれもWi-Fiモデルの最小構成で、税込です)。
- iPad mini(A20 Pro)8.5インチ:119,800円(11月6日発売。前のiPad mini(A17 Pro)の99,800円から20,000円増)
- iPad Air(M4)11インチ:129,800円(3月の発売時は98,800円。31,000円増で約31%)
- iPad Air(M4)13インチ:169,800円(発売時128,800円。41,000円増で約32%)
- iPad Pro(M5)11インチ:209,800円(2025年10月の発売時168,800円。41,000円増で約24%)
- iPad Pro(M5)13インチ:269,800円(発売時218,800円。51,000円増で約23%)
11インチどうしで見ると、iPad AirとiPad Proの差は80,000円、iPad miniとiPad Airの差は10,000円です。ここにOLEDの上乗せが入るとどうなるでしょうか。手がかりはiPad miniです。iPad miniはOLED化とA20 Proで前のモデルより20,000円上がりました。同じ上げ幅をiPad Airに当てはめると、11インチが149,800円、13インチが189,800円になり、iPad Proとの差は60,000円と80,000円に縮まります。あくまで私の当てはめで、Appleの価格は部品代だけでなく為替とメモリ価格で動きますが、当ブログでお伝えしてきたメモリ価格の高騰が6月の値上げの背景にあると報じられている以上、OLEDになったiPad Airが今の129,800円に据え置かれると考えるのは楽観的すぎると思います。
小龍的にはこう思った
来春にはiPadの中でLCDが残るのは入門のiPadだけになりますから、「OLEDが欲しいからPro」という理由は消え、iPad Proを選ぶ理由はProMotionの120Hz、M6、ベイパーチャンバーの3つ、つまり描画の滑らかさと持続性能に絞られてきます。逆に言えば、動画を見て、ウェブを読んで、Apple Pencilでメモを取る使い方なら、OLEDのiPad Airで十分という人がこれまで以上に増えるはずです。
恐らく今iPad Airを買うかどうかで迷っている人は3つに分かれると思います。LCDで困っていない人は、値段が上がる前の今のiPad Air(M4)を買っても損は小さいでしょう。12GBメモリにN1とC1Xまで載っていて、来春のモデルで変わるのはおそらく画面とチップだけです。黒の締まりや残像の少なさが目当ての人は、春まで待つ価値があります(そこまで細かく気にする方は相当なプロだと思いますが)。そしてProMotionの120Hzが欲しい人は、iPad Airをいくら待っても手に入らないので、最初からiPad Proを選択するしかありません。そのiPad ProもM6とベイパーチャンバーで来春に替わりますから、2025年10月のM5を買った人はそのままで、これから買う人は春まで待つのがよいかと思われます。
iPad Airは2025年3月のM3、2026年3月のM4、そして2027年前半のOLEDと、毎年春に替わる機種になりました。1年で型落ちになるのは早い気もしますが、値段が年々上がる中で、去年の型落ちが安く手に入る機会も毎年来るということでもあります。とはいえ、CEOがジョン・ターナス氏に交代してからは今後製品更新サイクルも固定ではなくフレキシブルにするらしいので、来年春に必ず来るという保証もないのですが。
記事は以上です。


