AppleのAMFがあのゴリラガラスメーカー”コーニング社”に2億ドルの出資をした理由とは

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先週の初め頃、世界中のスマートフォンのフロントパネルに用いられている強化ガラス【ゴリラガラス】の製造メーカー「コーニング(Corning)」社がAppleの新しいAdvanced Manufacturing Fund(先進的製造基金、以下AMF)から2億ドル(約226億円)の投資を受けたことを、Appleが公式サイトで発表した。

corning

 

Appleの設立したAMF(Advanced Manufacturing Fund)とは

今回コーニング社に出資したAMFは、今月頭にAppleのティム・クック(Tim Cook)CEOが10億ドル(約1,133億円)規模の基金を立ち上げることを発表したことで公に明らかになったもので、その主旨は米国内での雇用機会を増やすというものだ。そして今回、コーニング社がその基金の最初の受益者となった。

 

Appleのコーニング社へのAMFを通じた投資には実は深い意味があるかも

Appleは、この投資は主にコーニング社のR&D(研究開発)と資本や設備の需要供給と先進的なガラス加工のために行うとしている。そして現在、コーニング社はiPhoneとiPadのタッチパネル用のガラスの「ゴリラガラス」を製造している。そんな関係もあり、アナリストによればAppleの今回のこの挙動には深い意味があるのではないかと推測されている。

 

オッペンハイマーのアナリスト:iPhoneワイヤレス充電機能への布石

アメリカの投資銀行、オッペンハイマー(Oppenheimer)のアナリスト、Andrew Uerkwitz氏によれば、ワイヤレス充電機能の実現には、Appleは現在使用している金属(アルミ合金)のシャーシを捨て、ガラスにしなければならないと指摘する。次世代iPhone【iPhone 8(iPhone X、iPhone Editionとも)】のシャーシはガラス加工による設計となっているという噂があり、それ以降もワイヤレス充電機能はiPhoneの標準装備となる可能性がある。つまりAppleが今回基金の形でコーニング社に投資したのは、今後のデバイス上で使うワイヤレス充電機能のための布石ではないかというのだ。

Uerkwitz氏は「金属はワイヤレス充電技術に干渉するので、スマートフォンのバックパネルにはガラスを用いる必要がある。そしてそのガラスは耐久性が高く、割れにくいものでなければならない。またはセラミックを使ってもいい。コーニングはガラスとセラミックに投資を始めている」としている。

 

Moor Insights &Strategyのアナリスト:ARデバイスのための投資と特許の独占的使用が目的

ITリサーチを専門とするMoor Insights &Strategyのテックアナリスト、Patrick Moorhead氏は、この投資は両社の提携を体現したものだと指摘する。Moorhead氏はAppleとコーニング社は協力して180度に”拡大”されたAR体験が可能なガラスを開発することが可能だとしている。最近、テック系メディアではAppleがARヘッドセットを開発しているといわれており、Appleはその実現のためにコーニング社の協力による新たなガラスの開発が必要な可能性が高いという。ただし、そのガラスは非常に軽くなければならない、ということも指摘されている。

またMoorhead氏は、Appleが今回設立されたAMF基金によってコーニング社に出資することで、コーニング社のAR用ガラスの発明特許をAppleに独占的に使用することも目論んでいると指摘している。

tim-cook

 

既に10年以上の提携先であるコーニング社への投資には疑問を呈する声も

Appleとコーニング社は既に10年以上、非常に強い提携関係を結んでいることから、Appleがコーニング社に基金を通じて投資することについて疑問を呈する声もある。ただ、Appleはアメリカの製造業のレベルを高めようとしているだけに、一概にこの投資を否定するべきではないし、理解できる点もある。Appleは目先のことよりも、もっと先を見通しているのかもしれない。

 

小龍的にはこう思う:政治的な意味もあったりするかも

コーニング社のゴリラガラスは世界中の殆どのスマートフォンのフロントパネルに用いられていることから、Appleとしてもその技術をもっと磨いてもらいたいのと同時に、AMF基金の主目的とされるアメリカ合衆国での雇用機会の増加や製造技術の向上は明らかに現大統領のドナルド・トランプの政策に寄り添うもので、これによってAppleは更にロビーイングがしやすくなるという利点もある。また、トランプ大統領がぶち上げているアメリカへの製造業の回帰という非現実的な要求よりも、このような基金という形での技術開発への投資の方が意義があることをAppleが率先して行動で示したという見方もできよう。

ちなみに次世代iPhoneの【iPhone 8】には有機EL(AMOLED)ディスプレイが用いられるとされており、それにはコーニング社のガラスが用いられない可能性もある。その代わり、バックパネル(シャーシ)がガラス製になれば、更に多くのガラスがコーニング社からAppleに納品される可能性もあり、サプライヤーに対するバーターの条件になっている可能性もある。そして今回の投資は更にダメ押しとなり、コーニング社はAppleに特許の独占使用を認める可能性が高いだろう。

個人的には、日本の旭硝子の【ドラゴントレイル】もコーニング社のゴリラガラスに負けずとも劣らない、というより殆ど一緒なので、頑張ってもらいたいところなのだが。。

記事は以上。

(記事情報元:TechCrunch

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