Panguteam(盤古團隊=盘古团队)。
iOS 7から直近のiOS 9まで、Apple iOSデバイス脱獄(ジェイルブレイク、Jailbreak)の最前線にいる、世界最先端の中国出身のハッカー集団だ。昨年初めて世にその存在を知られた新鋭のハッカーチームで、iOS 6の時代までは主役だった欧米のハッカー集団に比べ歴史は長くないものの、現在は既に7人の精鋭を抱えるほどになっている。
そんなPanguteamは、最新のiOSを完全脱獄可能な脱獄ツールを世界で立て続けにいち早くリリースすることで名誉を得ると共に、更に大きな利益を得る機会に恵まれている。その影響力は、彼らにもいくつかの大企業や投資ファンドからの投資や買収話を持ってくるほどになっているようだ。
しかし、どうやら彼らにとっては脱獄ツールの研究と開発は一種の技術的な挑戦で、あくまで趣味だという要素が強く、金儲けの手段ではないという。
Panguteamのメンバー・王鉄磊
「私たちは本当にAppleの末端ユーザが完全に自由に自らのデバイスをコントロールできるようにしたいんです。。そのデバイスを所有し占有するだけではなく、真の意味でデバイスをコントロールできるように」
最近Panguteamのメンバーがオーストラリアのメルボルンで行われたRuxconセキュリティカンファレンスに参加した。
そこでVulture Southの取材を受けたときに、メンバーのうちの一人王鉄磊(Wang TieLei、ワン・ティエレイ)は上のように語った。王鉄磊は北京大学コンピュータ学部出身の博士で、以前ジョージア工科大学(GT)でも研究者だったことがあり、卒業論文で中国コンピュータ学会優秀博士論文賞まで受賞している超秀才だ。
「もし脱獄ツールを売りに出してしまったら、買った人はそれを個人的な目的に使ってしまうでしょう」
「iOSは閉鎖的なOSなので、脱獄をしなければもっと高度なセキュリティの研究ができないのです。私たちはもっとiOSの研究を促したいのです」
脱獄は孤独な作業、そしてAppleに塞がれる運命にある
脱獄とは複雑な1対1のPKの試合のようなもので、そしてリング上にいる研究者=ハッカー達はiOSの中に新しいセキュリティホールを見つけようと奮闘している。そしてようやく発見されたセキュリティホールによってAppleがiOSによってiPhoneやiPadの中に作りだしている堅牢な鉄壁を打ち破ろうとしているわけだ。
Appleはこれまで一度たりともユーザが脱獄をすることについて奨励したことはない。しかもほぼ毎回iOSをアップデートするたびに、研究者やハッカーが汗水垂らしてやっと見つけたセキュリティホールを塞いでしまう。脱獄ユーザはiOSのアップデートが来るたびに、Panguやその他の脱獄ハッカーや脱獄ハッカーチームがリリースする最新のiOS脱獄ツールを待たなければならず、それまではiOSの新機能はお預けになる。
Panguteamのメンバー・陳小波
Panguteamのもう1人のメンバーである陳小波(Chen XiaoBo、チェン・シャオボー)は、「私の担当はコードの署名に関することで、王鉄磊の担当はコアの部分です。私たちは一人一人、担当している仕事が違います。しかし最終的には、全てのメンバーの仕事をまとめることで脱獄が成功するのです」と語る。陳小波は13年間ADLabやMcAfee(マカフィー)等のセキュリティ会社で研究職を勤めた経歴があり、中国国内では有名なネットワークセキュリティ組織の0x557のコアメンバーでもある。
Panguteamの歩み
- Panguteamは去年6月24日に彼らの初めての脱獄ツールとなる、iOS 7.1.1用完全脱獄ツールを突如リリースして世界中で話題となった。それ以来、全ての脱獄ツールが中国のハッカーチームからリリースされていて、脱獄ツールに関しては欧米ハッカーの出番がなくなってしまっている。
- Panguteamが利用したセキュリティホールは、実は著名な脱獄ハッカー@i0n1c(Stefan Esser)から盗み出されたものだとして、@i0n1cが公式Twitterアカウント上で名指しでPanguteamを攻撃し、物議を醸した。
- その後彼らは10月にiOS 8の脱獄ツールもリリースしている。
- そして1年間の沈黙の後、脱獄フリークなら誰もが期待していたiOS 9の完全脱獄ツールを先週リリースして脚光を浴びたばかりだ。
Panguteamのメンバーは実はAndroidがお好き
もしかしたら、あなたはPanguteamのメンバーはみなAppleファン・Appleマニア・Appleフリークの類いだろうと思うかもしれないが、実は違うのをご存じだろうか。王鉄磊と陳小波は二人ともGoogleのAndroid OSが大好きだという。しかも今やこのAndroid OSもiOSに近づいてきており、彼らの将来の計画の中にAndroidプラットフォームを入れるかどうかについて議題が上がっているという。
Panguteamにとって、iOS脱獄とは?
今の彼らにとって、iOS脱獄とは主に2つの意味を持つという。1つはより多くの人に彼らのことを知ってもらうこと、そして彼らの技術や実力を認めてもらうためのものだということだ。そしてもう1つは脱獄の研究を通じて、iOSのシステム及びセキュリティに対して更に研究と分析を進められることだ。Panguteamは今後もiOS脱獄事業を続けていくという。次の彼らの挑戦はiOS 9.1の脱獄だ。今回のアップデートで、iOS 9.0.2まで脱獄ツール【Pangu for iOS 9】で使えていたセキュリティホールが塞がってしまったため、脱獄ツールが使えなくなってしまっているからだ。
画蛇添足 One more thing…
お金儲けのためじゃないというのはたぶん、真っ赤な嘘ではないかと思う。。なぜなら彼らだって霞を食って生きているわけではないわけで、お金儲けが目的でなければなぜ脱獄ツールにPP助手という中国のスポンサー企業をつけてリリースしているのか説明してほしい。
昔から、脱獄では普通の人にとってはかなり巨額に映る金額(日本円にして億以上)が動くといわれている。インタビューではいらぬ批判を避けるために金儲けのためではないと言っているのではないかと思われるが、本心はどうだろう。中国で20年以上仕事の経験がある私から敢えて言わせてもらっても、中国人が金儲け以外の目的で動くことは殆どないと思われるが。。果たして?真意を聞いてみたい気もする。直接会って話せる機会があればぜひインタビューを敢行してみたいと思う。
しかしiOS 7.1.1までは完全に主役だったが、PanguteamやTaiG Teamなど中国ハッカー集団登場以来すっかり影が薄くなってしまったこの欧米の脱獄ハッカー達(彼らこそ本物のJailbreakersだ!?)は、今はいったいどうしているのだろう。。(一部を除く)。ちなみに左から2番目がCydiaの作者で脱獄の神とも呼ばれているSaurik(ソーリック、Jay Freeman)だ。
記事は以上。
(記事情報元:The Resister)