Apple社iPhoneの主要組立委託先として有名なフォックスコン(Foxconn、富士康)の代表、テリー・ゴウ(郭台銘)氏が、米国ウィスコンシン州マウント・プレザント(Mount Pleasant)に新しい工場を建てるための着工式を行い、そこにドナルド・トランプ大統領や下院議長で同州出身のポール・ライアン(Paul Ryan)氏も出席しました。この工場もAppleの製品を製造することになるということです。
トランプ大統領は、米国内に工場を戻して雇用を作り出すことを重要な政策の一つとして打ち出していて、大統領自身は今回のフォックスコンの新工場では15,000人もの雇用が創出されることを期待していると大袈裟に発言しています(実際は13,000人程度と報告されています)。フォックスコンのヘッドクォーター(本部)であり親会社のホンハイ(Hon Hai、鴻海)グループは台湾にありますが、実際の製造(組立がメイン)は中国大陸で主に行っています。
トランプ大統領、公式Twitterで着工式参加を動画でアピール
なお、以下のドナルド・トランプ大統領自身によるTwitter公式アカウントでのツイートで、着工式でシャベル(スコップ)を持ってまさに”break ground”している姿が動画でわかります。
Today, we broke ground on a plant that will provide jobs for up to 15,000 Wisconsin Workers! As Foxconn has discovered, there is no better place to build, hire and grow than right here in the United States! pic.twitter.com/tOFFodZYvK
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2018年6月28日
アメリカで生産して中国の組立工場に送るのはコストメリットがあるのか?
既に100億ドル(約1兆円)規模のテレビのLCD(液晶ディスプレイ)パネル製造工場が計画されていましたが、これがどうやらコストカットの試みとして、iPhoneやMacなどのディスプレイ製造工場に換えられるのではないかと噂されています。それと同時に、米国で生産されたパネルの全てが最終組立のために海外に輸送・輸出されるということになるため、コスト面としては恩恵がないか逆に不利なのではないかと懸念する声もあります。
Appleも一部米国内にサプライヤーを持っていますが、長い間、組立に関しては米国で行われるものはごくごく少数でした。最も最近の製品は2013年のMac Proで、現在は完全に時代遅れの製品になってしまっているため、ほぼ生産は行われていないと思われます。
有機ELディスプレイ組立も計画か
フォックスコンが今後AppleのiPhone関連の組立を受けるためには、OLED(有機ELディスプレイ)パネルの組立を拡大していかなければならなくなります。Appleは2018年の次期iPhoneでは3機種のiPhoneをリリースすると噂されていて、そのうち2機種がOLED、そして1機種がLCDのままとされていますが、実際に一番数が出るのは6.1インチLCD版iPhoneとされていますが、Appleも今後2年のうちには全てのiPhoneをOLEDに移行していく計画のようです。
税金控除や免除、優遇政策も決め手に?
また新工場においては、税金の優遇政策やインセンティブが同社のウィスコンシン州マウント・プレザントへの進出 の大きな動機になったと思われます。その中には、マウント・プレザント及びその上のラシーン市による、28億5000万ドルの所得税額控除、1億5000万ドルの消費税免除、そして7億6400万ドルの報奨金が含まれるといわれています。更にウィスコンシン州も周囲の道路を改善するために1億3400万ドルのお金をかけることを約束しています。
小龍のひとりごと
結局、フォックスコンのアメリカ工場進出はトランプ大統領の肝煎りプロジェクトになったのは、トランプ大統領自身が着工式に参加したことでよくわかりますね。フォックスコンはトランプ大統領の批判を食らったハーレー・ダビッドソンとは正反対のことをしたわけです。トランプ大統領にとっては、Appleの最大の下請け企業がアメリカに製造拠点を作ることによって、自分の主張が見事に実現したというわけで、パフォーマンスを行って喧伝したという形になります。
恐らくトランプ大統領を後ろ盾にしたこれらの税控除・免除・インセンティブがあったことがフォックスコンのアメリカ工場進出の決め手になったような気もしますが、その優遇政策が今後も続いていくかが大きな鍵になりそうです。なぜなら、既に中国に大規模な生産基地があり、上流から下流まで揃っている中国に打ち勝つのは並大抵なことではありません。しかも、最終組立がどうしても中国ということになれば、中国国内で生産しているよりも輸送費が大幅にかかること、また中国でも労働コストが上がってきているとはいえ、まだまだ比べるとアメリカの方が非常に高いのが現状です。ロボットを多用して人件費を減らすとは思われますが、それでしたらわざわざアメリカでやるメリットはほぼないと思われますが、今後のことも考えてのことでしょう。
資本主義経済においてはまるで逆戻りのようなことをしているトランプ大統領ですが、果たしてアメリカで物を作ることは本当にアメリカの国益に繋がるのでしょうか?今後の展開が楽しみですね。
(記事情報元:Apple Insider)