Appleは今月日本時間22日(サンフランシスコ現地時間21日)に新しい4インチiPhone【iPhone SE】をリリースするといわれている。この”SE”という名称は、これまでのiPhoneの命名方式とは異なるため、面食らっている人もいるだろう。かつてiPhone SEはiPhone 5SEという噂もあった。さてそんな”SE”にはどんな意味が込められているのだろうか?一般的にはこのSEは”Special Edition(特別版)”の頭文字をとったものだととらえられている。
そして古くからのAppleファンはご存じの通り、この”SE”という名称の製品をリリースするのはAppleにとっては初めてのことではない。Appleの”SE”の歴史を紐解いて、今回のiPhone SEに込められた意味を探ってみたい。
Macintosh SE
Appleから初めて”SE”の名を冠してリリースされたのは、【Macintosh SE】だった。Apple(当時はApple Computer)から言わせればこの【Macintosh SE】の”SE”は”Special Edition(特別版)”を意味するものではない。とはいえ、これを購入した人は、このMacintoshを”特別なもの”ととらえていたに違いない。その意味では、ユーザ側から見ればやはり”Special Edition(特別版)”だったのかもしれない。
Macintosh SEは1987年にリリースされた。位置づけ的には【Macintosh Plus】のアップグレード版で、SEの意味するものは”System Expansion(システム拡張版)”だった。Macintosh SEの筐体背面にはスロットが設けられ、イーサネットやアクセラレータ、そしてその他のドライブを追加することができた。このような特徴を持ったMacはAppleにとっては初めてのものとなった。つまり、拡張性に優れていたMacintoshだったのである。
このMacintosh SEはマーケットで数年活躍した後、最後にMacintosh SE/30がリリースされた。この30という名称は搭載されたCPUのMotorola 68030の最後の2桁からとられている。その他の機種の命名ではAppleは簡単に”x”をつけることで区別してきたが、”SE”という名前がついた機種についてはそう簡単なものではない、ということなのかもしれない。
iMac DV SE
上の【Macintosh SE】から時代が下ること12年、1999年10月にMacの製品ラインは重大な変化を迎えた。Appleは製品ラインからスライド取出トレー型の光学ディスク(CD)ドライブを廃止し、吸い込み式の光学ドライブに変更したのだ。更にAirPortテクノロジーを追加、冷却システムにも手を加えて静音設計とし、ユーザから愛される端末となった。そしてAppleは新しいiMacを発表した。
それが【iMac DV】で、更に強力なプロセッサと、VGA-outポート、DVD-ROM光学ドライブと更に高速なFireWireポートを備えていた。
しかしAppleはそこに更に本当の意味でも初めての”スペシャルバージョン”なiMacを製品ラインに投入した。この特別版【iMac DV Special Edition】には、特別に”グラファイト”カラーが用いられ、この色が特別であることの目印となった。【iMac DV SE】ではRAMが倍となり、ハードディスク容量は13GBとなり、そのために消費者は200ドル多めに支払う必要があった。
2000年6月のMacWorld New York Expoでは【iMac DV SE】に更なるアップデートが施され、500MHz速いCPUと、FireWireとiMovie 2、そして”スノーホワイト”バージョンがリリースされた。
iBook SE
2000年2月に行われたMacWorld Tokyo ExpoではAppleのポータブルデバイスがアップグレードされた。特に技術仕様について多くのアップデートが行われ、AirPortコネクタが追加され、カラーバリエーションが増えた。このMacWorld Tokyo ExpoではPismo PowerBookが最も注目されたのだが、Appleはコンシューマ向けのノートブックコンピュータについてのアップデートを忘れることはなかった。
AppleはiBook製品ラインにも”SE”を追加した。それが【iBook SE】だ。
Appleのこの”Special Edition”を【iMac DV SE】と同様”グラファイト”カラーとし、価格も200ドル高くしている。しかしメモリは32MBから64MBに、ハードディスク容量3.2GBから6GBに倍増しており、クロック数が2割以上アップした366MHzのPowerPC G3チップを搭載していた。
同年のMacWorldのフランス・パリでの展示会でAppleは【iBook SE】を更にアップデートし、466MHz Power PC G3と6倍速のDVD-ROMドライブを搭載していて、これも正に消費者が【iBook SE】に望んでいた追加仕様だった。
iPod U2 SE
iPodとロックバンド”U2″とのコラボのスペシャルバージョン【iPod U2 SE】は、2004年の新製品発表イベントのOne more thingでリリースが発表された。同時にiPod Photoがリリースされ、当時のスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)CEOは”iPod U2 Special Editionは宇宙で唯一のスペシャルバージョンiPodだ”と紹介している。
確かにその前後にこのようなコラボモデルでのiPodのスペシャルバージョンは登場していない。まさに空前絶後、”宇宙で唯一のスペシャルエディション”のiPodとなったのだ。・・・とはいえこの【iPod U2 SE】は2004年の第4世代iPod及び2006年の第5世代の2回にわたってリリースされていたりする。
【iPod U2 SE】の筐体はブラックで、クリックホイールには赤色が採用されて非常に印象的な外観となっており、背面にはU2のメンバーのサインが入っている。また第5世代iPodの【iPod U2 SE】を購入した人には、iTunes Music StoreでU2の楽曲と30分の動画購入券が無償でついてきたのも話題を呼んだ。
iPod Shuffle 3 ステンレス仕様 SE
Appleが今のところ最後にリリースしたSE(Special Edition)製品が、この【iPod shuffle 3G SE】だ(但し、”Product Red”をスペシャルエディションとするのであれば、それを除く)。そしてAppleがこれまでリリースしてきたSE製品のうちでもっとも小さいのもこの製品といえる。
iPod shuffleは小さくて軽かったが、2009年3月にリリースされた第三世代のiPod shuffleで、Appleは更にこのミニマムな音楽プレイヤーに重大な改変を行った。本体サイズが更に大きく縮小されただけではなく、本体のボタンも一切取り去ってしまったのだった。そして本体カラーもブラックとシルバーのみとなった。
しかしその半年後の秋の新製品発表イベントで、Appleはコンシューマが好むブルー、グリーン、ピンク等の配色のバージョンを用意し、更に史上最も”贅沢”なshuffleをリリースした。それが【4GB Stainless Steel(ステンレス鋼)スペシャルエディション】で、この製品はApple Store限定で販売された。
【iPod shuffle SE】は99ドルで販売され、アルミでできた通常バージョンよりも25%高くなったが、Appleファンはこの価格差も価値があると評価した。
4インチiPhone【iPhone SE】
さてこれまでのAppleがリリースしてきた”SE”製品を振り返ると、以下のような特徴が見いだせることに気づくだろう。
- “SE”の名を冠する製品はこれまでの製品をもとにして、製品の一部の仕様や機能をアップデートしたものだが、世代交代ほどのアップデートではない。
- 販売価格は通常版よりもちょっと高めに設定。
それに比べ、iPhone SEはどうだろうか?これまでの情報によれば、
- 4インチディスプレイ
- A9プロセッサ搭載(iPhone 6sと同等)
- 800万画素カメラ
- 16GBと64GBの2つのバージョン
- 1,642mAhのバッテリー
- NFC対応=Apple Payサポート
- 3D Touchは搭載されない
そして中国での販売価格だが16GBは3,988元(約69,270円)、64GBは4,599元(約79,883円)という情報がある。
iPhone 5或いはiPhone 5sのスペシャルエディション(SE)ということであればわかるが、現行とはいえ既に相当型落ちのiPhone 5sにスペシャルエディションを作るということはどうもAppleとしてはこれまで前例がなかったように思える(これまでは最新の製品にSEを出していた)。また価格も高くなっているわけではない。
今回のSEはAppleにとってもちょっと違う意味の”スペシャルバージョン”ということになりそうだ。
もちろん、3月22日の発表会で本当に発表されるまでは、新型4インチiPhoneの名称が【iPhone SE】に確定したわけではないのだが。
記事は以上。
(記事情報元:WeiPhone)