※この記事は、中国のSohu(搜狐热点)に載っていた記事・著作を翻訳(一部意訳)し、一部内容を付け足したものです。
先日、Apple中国公式サイトで「三分钟(三分鐘、3分間)」という、
香港の有名な映画監督ピーター・チャン(陳可辛)が撮ったというショートムービーが公開され、
日本のテック系サイトでも報じられました。
中国の旧正月(春節)の帰省と家族再開の物語を描いたこの動画は感動を呼び、
特に中国ではSNSなどでさすまじい勢いでシェアが拡がりました。
そしてこのショートムービーは「iPhone Xで撮影された」と題されています。
もしあなたと家族の団らんの時間が1年にたったの3分間だったら。。
あなたはどうやってその3分間を過ごしますか?
(ショートムービー自体は3分間ではなく、7分7秒もあります)
確かにストーリーは感動的で、画面はとても綺麗です。
お涙ちょうだいもので、ぽろぽろ涙を流す人もいれば、わーわー泣く人もいたとか。
iPhone Xでの撮影効果も驚くほど素晴らしいです。
Appleファンの人、iPhoneファンの人は、心の中できっと
「おー、iPhoneでこんなすごい映画が撮れてしまうんだ。
iPhoneはやっぱりすごいな!」
と思ったことでしょう。
そして頭の中にはこんな画面が思い浮かんだに違いありません。
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ごめんなさい。。あなたはあまりに純粋すぎます。
その後、このSNSを騒がせた広告は、
あっという間に映像業界のプロ達から、様々な内部事情が明かされてしまいました。
この映像を見て「私もこんなのが撮れるかも?」と思ってiPhone Xを買ってしまった人は大きなショックを受けるかもしれません。
さて、ではこの映像にはどんな内幕があったのでしょう?
まず、ピーター・チャンがiPhone Xを持って、
極寒の中撮影を行っているとき、
実はそのiPhone Xには、こんなレンズが取り付けられていました。
このショートムービーの中で使われた機材の中で、
あなたがiPhone Xを買った後に買えるものは、恐らくここで使われた三脚の部品くらいなものではないでしょうか。
ちなみに三脚システムだけでもiPhone Xよりだいぶ高いです。
BeastgripのiPhone Xやレンズ固定用アタッチメントだけでも、125ドル(約13,755円)。
BeastgripのDOFアダプターが150ドル(約16,504円)。
Carl Zeiss(カールツァイス) 85mm F1.4 CY単焦点レンズは、中古でも90,000円近くします。
実際の撮影風景を、後ろから見てみましょう。
上についている、SmallHDのオンカメラモニターは、1,499ドル(約16万4,900円)。
実際の撮影ではこんなものも使われていました。
DJIのドローン、S900は1,199ドル(約13万1860円)。
ブランドはわかりませんが、こちらの携帯スタビライザー、市場価格は約35,000円〜70,000円です。
そして、機材なんて実は予算としては大したことはありません。
まず香港の世界でも著名な映画監督、ピーター・チャン(陳可辛)。
ギャラは恐らくとんでもなく高いでしょう。
そして上ではまだ計算しきれていない様々な撮影器具やアタッチメント
その他細かく何個かにわかれて使われたスタビライザーなど。。
恐らく合計数千万円はくだらないと思われる撮影設備費用、俳優へのギャラ、エキストラへのギャラ。。
そして大量のスタッフが撮影や編集に参加しています。
想像してみてください。
これだけの人間を動かすのに、どれだけの費用が必要なのかを。
名前の読みの振り方を見てみると、中国(本土・大陸)人だけではなく、香港人や台湾人の専門家もいるようです。
単価もめちゃくちゃ高くなりそうです。
更に、ポストプロダクションを担当した上海のMPCは、オスカー賞の各賞を受賞している、世界でも有名な制作会社です。
この会社に依頼するだけでも、どれだけお金がかかったんでしょう。。
最後の一行、ひときわ小さくなっている文字に気付いた人はいますか?
「使用额外设备及app(特別な機材やアプリを使用しています)」という表記に。
恐らくスタッフロールを見る人は少ないでしょう。
そして最後の最後の一行を見る人は更に少ないことでしょう。
中国の人口があまりに多いといえども、そこに注目した人はほんの数人かもしれません。
中国国産安物スマートフォンメーカーでさえ、
1日のギャラがウン十万円もするモデルを使って、
1000万円はくだらないギャラをもらう撮影チームを使って、
1台たった1桁万円前半の安いスマートフォンが、
なんだかまるでとても素晴らしいもののように人の目に映す手法を用いているのをご存じですか。
きっと、このショートムービー「3分間」の撮影で使われた人や機材の中で、
最もどうでもよかったのがiPhone Xだったのかもしれません。。
映像業界でもこのショートムービーは非常に大きな物議を醸しています。
映像業界のファンの中には、
人々がこんな動画によって、「一台のiPhone Xでこんな広告も作れる」と誤解し、
結果的に映像業界に関わる人の労働力コストが下がってしまうと心配になる人もいるかもしれません。
(もちろん、ピーター・チャン監督はそんな心配をする必要はありませんが)
中国のユーザのコメントで、
「長年カップラーメンの広告を見てきて、まだわかってないのか?」
という秀逸な書き込みがありました。。😂
一部の人が全体の撮影費用を見積もったところ、
700万人民元(約1億2200万円)という数字も出ています。
さすがにiPhone Xはカップラーメンほど安くはないですが、
この動画へのお金のかけ方をみると、iPhone Xの存在そのものが霞んでしまうほどです。。
広告っていったいなんだろう。。とちょっと考え直してしまいますね。
記事は以上です。