Apple主催の毎年恒例の世界開発者会議、WWDCがいよいよ始まった。
しかし基調講演で紹介されたいくつかの新しいサービス、例えばApple PayやNewsアプリなどは日本とはどうやら暫く縁がないようだ。Appleのお膝元の米国がやはりAppleのサービスが最初に開始されるのは今も昔も変わらない。
では米国本土メディアはWWDC 2015基調講演をどう見ているのだろうか?全体的にはWWDC 2015は喝采を浴びず、逆に多くのツッコミを入れられているのが現状だ。以下は中国メディアiFanrにまとめられていた記事。
ブルームバーグ(Bloomberg):AppleはSpotify、PandoraとYoutubeに復讐しようとしている
以前はiPodとiTunes Musicをもって逆襲の機会を狙っていたAppleだが、長らく音楽方面では大きな動きを見せなかったばかりか、iPod(iPod Touch)製品ラインに至っては長らく更新されていなかった。しかしApple史上最大の金額を使ってBeatsを買収したAppleが導き出した答えは、Apple Musicだった。
Bloombergは、Apple MusicはSpotifyとPandoraが合わさったようなサービスで、そこにSirius XM、Tumblerの機能を追加し、更にRdioやYoutubeの影も感じるという。
このApple Musicをスタートさせるのは、目的からみればAppleのSpotify、Pandora、SiriusそしてYoutubeへの復讐とみえるが、実際の行動から見れば、Apple Musicそのものはそのいくつかの復讐の相手のやり方を模倣し、そこにiTunes上の膨大なリソースと、多くの味方についているアーティストなど音楽関係者のリソースを載せて直接競争をしようとしているようだ。
一事が万事で、BloombergからみればWWDC 2015のAppleは攻撃性に満ち、競争相手を諷刺し、その一方で相手のやり方を真似していた。iPad上で動くiOSはまるでSurfaceのようだ。またマップや音声サービスでは、AppleはGoogle MapsやGoogle Nowに近づいている。
ニューヨークタイムズ(New York Times):イノベーションがなければ驚くようなこともない
ニューヨークタイムズも上記のブルームバーグと同じような観点を持っており、今回のWWDCでは誰もが手を振って大声を出すような興奮すべきものはなかったという。
「WWDCで、人々がびっくりしてあごが外れるようなことはなかったし、この大会に何もクリエイティブなものはなかった。全てのAppleのデバイス上で見せられた新しい特徴と呼ばれるものは、他の競争相手の中にみられるものだ」
One more thingとして登場したApple Musicについて、ニューヨークタイムズは、このアプリの1つの画面上でこれだけ多くのサービスとUIを詰め込んでいるので、とても混乱しているように見えるとし、あれは単なるデモで、最終的な製品ではないことを願うばかりだとまで書いている。
もちろんWWDC 2015は全く何もいいところがなかったというわけではなく、iOS9のいくつかの更新はなかなか使いやすいとされている。例えばpredictive assistant機能は人を引きつけるものだとしている。このアップデートはiOSがAndroidに叩かれている部分を補うことができる、とも。
フォーブス(Forbs):これはアップルの小さな一歩だが、ユーザにとっては大きな一歩
WWDC 2015が人々の心を揺さぶらないというのはメディアの共通認識でもあるようだが、フォーブスはちょっと違う観点のようだ。フォーブスは、Appleの宣言や講演は2種類に分けることができると読んでいる。
1種類は、人々の心を揺さぶるイノベーションとその発表で、通常はハードウェア発表イベントの時に行われる。例えばiPhone6やApple Watchの発表イベントなどで、これらはもっとハイレベルに、もっと速く、そしてもっと強いという発表だ。もう1種類は小幅な修正の発表で、これらは”もう1回世界を変える”ことはないが、便利な小物などを用意し、より多くの人がAppleのデバイスを使いたいと思わせるようなものだ。
明らかに今回のWWDCは後者に属するもので、イノベーティブで革命的な製品或いは予測を超えたようなものは登場しなかった。しかし大部分のAppleファンはこういったものしか求めていないのは確かだ。
OS XであろうとiOSであろうと、実は既に非常に成熟したもので、今の段階でいわゆるレボリューションやイノベーションを求めるのは全く現実的ではなく、この2種類のAppleのOSがWindowsやAndroid、はたまたChromeにまで手を出して彼らの特徴のいいとこどりをしているのは、ある意味仕方がなく、またこれが現実だということもいえよう。
また会場でOS Xのゲーム性能を紹介していたとき、記者は非常に驚いたという。隣のWindowsは”アサシンクリード:ユニティ”や”GTA 5″で遊んでいるのに、こちらはまだチープな特効を使っている”プラントvsゾンビ”で遊んでいるのだから。。
いずれにせよ、OS XとiOSユーザにとっては他のOSは他山の石で、iPadユーザにとっては画面分割によるマルチタスクはもうどのくらい待ったかわからないくらいだ。
WIRED:この世には無料のボーナスなどはない
コンテンツとチャネルの愛憎の念が入り交じる関係は、インターネットでは長らく衰えず盛んに議論されているテーマでもある。そしてインターネットこそがコンテンツとチャネルの分離を助長し、今回WWDC 2015で発表されたNewsアプリこそAppleがその中に参入しようとするシグナルだとWIREDは見ている。Appleが今回デモを行ったNewsアプリでは、美しいニュースの配置やクールなテクノロジーが見られたが、明らかにしておかないといけないところは、Appleは一切コンテンツを生み出さず、非常に優雅な”運び屋”にすぎないことだ。
もともとはコンテンツとチャネルの2者の争いだったところに、今はデバイスメーカーが参入し、まるで三国志のような様相を呈している。Flipboardはポータル出身で、FacebookはInstant Ariticlesを、SnapchatはDiscoverをおさえている。そして彼らの背後には巨大なソーシャルネットワークがある。
そんな中、Appleのニュースアプリは多くの問題を出版社に投げかけている。出版社はAppleのニュースアプリに参加する前に、FacebookやSnapchat等のソーシャルの名を借りてメディアチャネルを持っているところから主権を侵略されないようにしつつ、そして同時に情報伝達の効果を図らなくてはならない。そう考えると、Appleがもたらすように見える情報伝達チャネルの”ボーナス”を得るためには、出版社としては完全にAppleのコントロール下におかれることを学ばなくてはならない。
WIREDはそのように書きながら、そのWIRED自身の記事が今回のWWDC 2015のNewsアプリの上に出ていたこということは、どうしようもない事実だ。目をしっかり見開いていなければいけないということと、現実とはまた別のことなのだろう。Appleのような強大な情報伝達チャネルの前では、出版社達の手中のコマはゼロに等しい。
そして2つの疑問が思い浮かぶ。Newsアプリはまた”削除不能”なAppleのネイティブアプリとなるのだろうか?そして、App Storeの中に溢れる2万を超えるサードパーティのニュースアプリはいったいどのような感想を持つのだろうか?
画蛇添足 One more thing…
結局どのメディアも全部今回のWWDC 2015をいろいろな方法で批判・諷刺していることになる。上記の記事を書いたiFanrでさえ、だ。
個人的にはより安定・より改善・より便利になったiOS・OS X・WatchOSになってくれることは歓迎だ。とはいえバージョン番号を変えるほどの大きな変化は果たしてあったかといわれるともちろん疑問を感じる。
Appleはもう現在は自身の株価のために、毎年同じ時期にハードウェアもソフトウェアも”メジャーバージョンアップ”しなければならないという背景があるのだろう。
そして個人的には脱獄の行方が気になる。iOS8.4が6月30日にリリースとのことだが。。
記事は以上。
(記事情報元:iFanr)