iPhone Xを使っていて、時々動作が重くなる(処理スピードが遅くなる)と感じたことはありませんか?私も実は時々あります。そしてそれにはからくりがあったようです。。
iPhone Xは現行のAppleの最強で最も値段が高いフラッグシップモデルのスマートフォンで、ユーザのiPhone Xへの要求や期待も高いのは事実です。そして、確かにA11 bionic SoCチップやFace ID、全画面デザインなどはユーザの期待に応えるものでした。しかし、最近ネット上でiPhone Xが急に極端に動作が重くなる問題が指摘されています。特定の環境下では、iPhone Xの性能が30%以上落ちるということで、iPhone 6・6s・7シリーズで既に話題になっていたiOS 11による故意の速度低下問題「バッテリーゲート」よりも更に酷いというのです。
実際にGeekBench 4でiPhone X発熱時と通常時のベンチマークスコアを比較すると。。
今回そのiPhone Xの急激な性能低下について、SoftPediaの作者Bogdan Popa氏が記事にまとめています。Popa氏によれば、iPhone X上で負荷の高いアプリを実行した後、本体が熱くなっている状態でベンチマークアプリ「GeekBench 4」でベンチマークを行ったところ、そのスコアはiPhone Xが「冷静」な時よりも30%近く性能が落ちているとされています。
具合的にはCPUのスコアが、マルチコアが10,057から7230へ、そしてシングルコアは4,203から4,155に落ちているというのです。実際シングルコアのスコアはそれほど落ちていないので、簡単なアプリなどは問題なさそうですが、マルチコアでは30%近くダウンしているので、マルチコアを必要とするような複雑な処理が必要なアプリなどでは、実感できる程度のスピードダウンが起こる可能性があります。ただし、ただでさえ負荷がかかっている状態に更にベンチマークアプリで負荷をかけると、結果としてはいいスコアは出ないことは容易に想像できるかと思います。
Bogdan Popa氏によると、iPhone Xの温度が落ち着くまで10分間かかったといいます。そしてその間カメラや写真アプリなどの画像や動画の処理Appを使うと、iPhone X全体の反応が明らかにもっさりするとしています。他にも、Popa氏はiPhone Xが高温になったとき、ディスプレイの明度も自動的に下がっていることを指摘しています。
iPhone Xの放熱設計が原因?
なお、iPhone Xが高温になる原因として、Popa氏はナビゲーションアプリを使用している時や、ワイヤレス充電をしている時に本体が熱くなると指摘しています。ゲームについてはPopa氏は言及していませんが、確かにナビゲーションアプリはGPSやネットワークモジュールの発熱によるものと考えられ、ワイヤレス充電の場合は、電磁センサー式ワイヤレス充電では多くのエネルギーロスが発生し、そのロスが放出されることでiPhone X内部で発熱が起こるというのは容易に予測できます。
実際、CPUが高温になりすぎると、CPU自身が高温によって壊れてしまうことを防ぐため、他のPCなどでも同様の速度低下処理を行っているため、iPhone Xに限った問題ではないとはいえます。ただ、一般的にはこの速度低下処理はかなり極端に温度が上昇したときのみ発動する「緊急処置」に近いものですが、iPhone Xは高負荷のAppを実行したときにこの本来は「緊急処置」だった速度低下機能がすぐに働いてしまう状態です。しかも、iPhone Xと同じA11 Bionicチップを搭載しているiPhone 8やiPhone 8 Plusでは同様の問題が報告されていないことから、これはiPhone Xだけに存在する問題といえそうです。
そうなるとこれは恐らく、iPhone Xの放熱設計にある程度の欠陥があるか、或いはiOSに何らかの問題があるのではないかと思われます。実際に従来のiPhoneを使用している時も、アプリを使用中や充電中に高温になることは自分としても普通に体験しています。ただ、それによって明らかにスピードダウンすることはあまり体験していなかったのですが(逆に熱くなりすぎて怖くなるので自分で使うのをやめていました)、iPhone Xは確かにそこまで熱くなっていないのにスピードが落ちるような気がします。それは「冷静」時のiPhone Xがあまりにスムーズなため、ちょっとでもスピードが落ちると気になる。。というレベルなのかもしれません。
iPhone Xは価格が高すぎるのに最大限の性能が発揮できないときがあるのはけしからん、、というユーザ心理も
ユーザとしては、最低でも11万円もする高いスマートフォンが、発熱によって速度が落ちるなんてけしからん、という考え方になるのも個人的には理解できます。ただ、あの薄いボディに様々な機能を詰め込んでいて、ファンなどもないことから、やはり熱処理はなかなか難しい問題なのではないかと予測もできます。特にiPhone Xは2層に重なったロジックボードやL型バッテリーなど、Appleがこれまでやったことがない斬新な設計になっていることから、放熱に関してはそこまで十分に検証されていない可能性もあります。
いずれにせよ、高温で高いマシンが壊れるよりはマシ、と考えて使うほうがいいかもしれません。
試してみました:発熱していないときでもスコアが下がることも
私も気になったので、私自身の所有するiPhone Xで、GeekBench 4のCPUベンチマークを実行してみました。その結果が下の画像です。現在あまり発熱していませんが、GeekBench 4でマルチコアが8000台(8837点)というスコアが出ました。9000近いとはいえ、もし10000が標準としたら10%の性能ダウンをしていることになります。一方、シングルコアもPopa氏による速度低下後のスコアよりも3点低い4152となっていますが、4200が標準とすれば大して変わりません。この状態で、特にもっさりしているとは感じません。
普段使っているアプリやバックグラウンド動作などでもこのスコアの値は大きく変わることがありそうです。というわけで、そこまで騒ぐほどのことではないかもしれません。
iPhone Xが重いときはメモリ解放などをやってみて、冷えるまで待とう
実際、最近のiOSはメモリ管理がかなりよくなっているのですが、iPhoneが重くなったときにはやはりメモリ解放をした方がいい時もあるかもしれません。根本的にメモリを解放するには、有料アプリを使う方法もありますが、私はSySightというアプリを使ってちょっと設定をすることでホーム画面にメモリ解放ボタンを追加して一発解放ができるようにしています。ちょっと古い記事ですが、iPhone XのiOS 11でも使えているので、以下をご参照ください。
そして、実際にiPhone Xが熱くなっているときは、できるだけ使わないか、動作が重くなる原因となるアプリの使用をやめて(アプリスイッチャーで落として)、端末が冷えてくるまで待つのが吉です。iPhone Xに限らず、他のスマートフォンでも同じです。クロックアップをしているわけでもないですし、端末にはフェールセーフ機能がついているので、CPUが焼き切れるようなことはないとはいえ、やはり発熱は電子デバイスの敵だといえるでしょう。
記事は以上です。