2021年9月15日未明から公開されたApple新製品発表イベント動画で発表された、新型iPhone「iPhone 13」シリーズ。Appleのイベント動画や公式サイト、更に多くの他のメディアでスペックなどは紹介されていると思うので、当ブログの読者層が最も気にしていると思われるiPhone 13シリーズ4機種(iPhone 13 mini/iPhone 13/iPhone 13 Pro/iPhone 13 Pro Max)のデュアルSIM/トリプルSIMの状況を確認してみました。
なお、iPhone XS/XS Max/XR時代から、iPhoneで物理デュアルSIM版(DSDS版)が出ているのは世界広しといえども中国・香港版・マカオ版のみです。現在私が使っているのもiPhone 12 Pro Max 中国大陸版物理デュアルSIM版(DSDS版)のため、当ブログならではのiPhone 2021年新モデル「iPhone 13」シリーズの中国・香港版DSDS対応特集をします。恐らく、他のどこよりも詳しいのではないかと思います。少々長くなりますが、お付き合いください。
iPhone 13シリーズの物理デュアルSIM対応版とは
まず、物理デュアルSIMが実現するのは今回発表されたiPhone 13シリーズ全4機種のうち、iPhone 13/iPhone 13 Pro/iPhone 13 Pro Maxの3機種のみとなり、iPhone 13 miniは対象外となります。iPhoneとして、物理デュアルSIMに対応したのは2018年モデルのiPhone XS Max/iPhone XR、及び2019年モデルのiPhone 11 Pro、2020年のiPhone 12シリーズ(iPhone 12 mini以外)以来となっています。
そしてiPhone 13の物理デュアルSIM版について、対応国は「中国」とされています。ただ、単に「中国」といっても意味は広く、例えば字面通りであれば中華人民共和国と中華民国(台湾)の2つの意味があります。
また、中華人民共和国にも、特別行政区として香港とマカオがあり、iPhoneの広い意味での「中国版」には。。
- 中国(大陸・内地)版
- 香港版
- マカオ版
- 台湾版
の4つのバージョンがあるといえます。もちろん公式ページも、その4つにわかれています。
今回物理デュアルSIMが実現するのは、中国(大陸・内地)版及び香港・マカオ版のみです。つまり、台湾版は物理デュアルSIM適用外となります。ちなみに香港版とマカオ版はモデル番号の末尾が異なるだけで、内容は同じなので以降マカオ版は割愛させていただきます。
中国大陸版/香港(&マカオ)版/日本版の、iPhone 13 mini/iPhone 13/iPhone 13 Pro/iPhone 13 Pro MaxのデュアルSIMデュアル待受のスペックは、Apple公式サイトのそれぞれの仕様ページの情報を整理をすると、以下の一覧表の通りとなります。
機種名 | 中国大陸版 | 香港版(マカオ版も同様) | 日本・台湾版 |
iPhone 13 mini | シングルnano-SIM | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 13 | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 13 Pro | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 13 Pro Max | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
※iPhone 13 mini 香港版のみiPhone 12 mini 香港版と異なる点が、トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2)であることです。
中国の増値税(付加価値税、VAT)が乗らない香港版は価格が安く、中国大陸では深圳経由で密輸される香港版が人気だったのですが、今回も物理デュアルSIM版が導入されることで、尚更価格差がある香港版のiPhone 13 mini以外が人気沸騰、ということになりそうです。ただ、現在は新型コロナウイルス感染症の影響で、香港と中国大陸間の人の動きが制限されているため、これまでいわゆる「水客」と呼ばれていた密輸運び人による密輸品は少なくなります。手に入らないことはないですが、少し割高になります。iPhone 13シリーズの香港版が大陸版と決定的に違う点は、FaceTime Audioが使えることです(中国大陸版はキャリアとの兼ね合いか、FaceTime Audioがオフになっています)。
ちなみに、中国大陸版及び香港(&マカオ版)は基本的にSIMフリーです。つまり、他国に持ち出しても、他国のどのSIMでも基本的には使えることになります(ただ、最近は新型コロナウイルス感染症の影響で国際間の移動は難しいですが)。また、今年から日本版のキャリア版も総務省の指導により2021年10月1日からSIMロックをかけてはいけないという法令の下、SIMフリーとなっています。ちなみに日本版のみCDMA EV‑DO Rev. Aに対応していませんが、米国版・中国版・香港版・台湾版は全てCDMA EV‑DO Rev. A対応です。
今回のiPhone 13シリーズでも、iPhone 12シリーズと同様、5Gでは米国版のみmmWave(ミリ波、5G NR mmWave)5G対応で、他の国のバージョンは対応していません(Sub-6 5Gのみ)。ただ、その他の国でmmWave 5Gサービスが始まったとしても、米国のmmWave対応モデルが使えるかどうかは不明です。更に、米国版も日本版や台湾版と同様、物理DSDSではなく、NanoSIM+eSIM2枚でのトリプルSIMとなっています。どれを取るかですが、いずれにせよmmWaveはキャリアの基地局が対応していないと使えないので、キャリアとしてmmWaveを導入している米国でしか使えないのが現状です(1年経ってもその状況は変わっていません)。
中国でのiPhone 13シリーズの発売時期について
昨年のiPhone 12シリーズは発売時期が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で開発や製造に遅れが出て10月や11月まで延びていたのですが、今年のiPhone 13シリーズは9月15日発表、全てのモデルが9月17日予約開始、9月24日発売と順調な販売スケジュールになっています(同時に発表されたiPadシリーズも同様。ただApple Watch Series 7が発売時期がこの秋、となっていてまだ未定となっています)。
iPhone 13シリーズの物理デュアルSIMの仕様情報、SIMは2枚目とも5G対応なのか!?
物理デュアルSIMはiPhone 12 Pro Maxで自分も使っていますが、2枚とも5G対応です。eSIMに関しても同様と思われますが、日本版は2枚のeSIMも合わせてトリプルSIMで全て5G対応かについては実機での実証がないとわかりません。が、恐らく可能になっているのではないかと思われます。
実際の物理DSDSの設定、使用方法
実際のiPhone物理デュアルSIMの使用状況や設定方法などは、ちょっと古いのですが、以前iPhone XSの時代に以下の記事にまとめました。当時とそれほど変わっていないので、ご参照ください。
気になるiPhone 13シリーズの中国版・香港版のお値段は?
そしてやはり気になるのはiPhone 13/iPhone 13 Pro/iPhone 13 Pro Maxの中国・香港版物理デュアルSIM版の価格ですよね。
物理デュアルSIMに対応したiPhone 13/iPhone 13 Pro/iPhone 13 Pro Maxの価格は公式発表では以下のようになっています。中国大陸版・香港版の価格と、日本版(税込)価格を参考までに併記しておきます。※日本円価格は記事公開時のレートです。
iPhone 13 Pro Max 中国(大陸)版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国大陸版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 8,999元(約152,799円) | 9,399HKD(約131,937円) | 134,800円 |
256GB | 9,799元(約166,384円) | 10,199HKD(約143,201円) | 146,800円 |
512GB | 11,399元(約193,552円) | 11,899HKD(約167,077円) | 170,800円 |
1TB | 12,999元(約220,719円) | 13,599HKD(約190,947円) | 194,800円 |
iPhone 13 Pro 中国(大陸)版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国大陸版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 7,999元(約135,857円) | 8,499HKD(約119,334円) | 122,800円 |
256GB | 8,799元(約135,859円) | 9,299HKD(約130,562円) | 134,800円 |
512GB | 10,399元(約176,621円) | 10,999HKD(約154,430円) | 158,800円 |
1TB | 11,999元(約203,797円) | 12,699HKD(約178,299円) | 182,800円 |
iPhone 13 中国(大陸)版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国大陸版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 5,999元(約101,887円) | 6,799HKD(約95,446円) | 98,800円 |
256GB | 6,799元(約115,474円) | 7,599HKD(約106,677円) | 110,800円 |
512GB | 8,399元(約142,648円) | 9,299HKD(約130,542円) | 134,800円 |
- 中国大陸版はiPhone 12シリーズより値下げされています(Appleは米国企業で、米ドル基準で価格を設定しているので、米ドルに対する人民元高が反映されているかと思われます)。特に内蔵ストレージが多いモデルはiPhone 12シリーズよりかなり値下げとなっています。ただし、人民元は日本円との為替があがっているので、全体的には日本版より高めになっています。もちろん香港版よりもかなり高く、1〜3万円以上高い結果になっています。
- 香港版はiPhone 12シリーズと同様です。なぜなら香港ドルが米ドルペッグ制だからでしょう。そして香港版がこの3つのバージョンの中で最も価格が安くなっています。
- 日本版はiPhone 12シリーズよりも全体的にかなり値上げとなっています。これはドルに対する円高が響いているものかと思われます。香港版より少し高いですが、カメラのシャッター音付で、物理デュアルSIMなしでこの値段は。。という感じもします。ただ、今回eSIMが2枚になったことで、トリプルSIMでの運用が可能になったことから、その付加価値は上がったといえるでしょう。
しかしやはりiPhone 13 Proシリーズは高いですね。。特に1TBモデルの価格は痺れますね。中国大陸版は20万円を超えます。。
iPhone 13シリーズ 物理デュアルSIM版は買いなのか?
iPhone 13シリーズの中国・香港版の物理デュアルSIM版は本当に必要なの?という議論もあると思います。このブログをご覧になっている方は、海外、特に中国・香港への出張が多かったり、中国・香港や海外に実際にお住まいで、国際間での移動が多い方でしょう。
3年前、2018年のiPhone XS/XS Max/XRで初めてデュアルSIM版がiPhoneに導入された時の発表イベントでは、Appleのフィル・シラーSVP(当時、現在はApple Fellowに昇格)が壇上で、中国ではeSIMが使えないので物理デュアルSIMを導入した、としていましたが、実はこれまでApple Watch Series 3以降に搭載されたeSIMバージョン(セルラーモデル)向けに、三大キャリアのうちの1つChina Unicom(中国聯通、チャイナ・ユニコム)のみがeSIMサービスを提供しています。また、香港では携帯電話向けにキャリアがeSIMを発行しているのでこの発言には矛盾があったと言えます。ちなみにキャリアのこの状況は、その3年前の初めてiPhoneにデュアルSIM版が登場したiPhone XS/XRの時代から変わっていません。携帯電話向けのeSIMは中国大陸で導入されていないのです。理由は不明ですが、管理の問題なのかもしれません。
しかし実際、物理デュアルSIM版を中国・香港・マカオ以外に居住する方が本当に導入するかは非常に悩ましいところです。なぜなら、今回日本版には更にeSIMがデュアルとなり、結果的に物理nano-SIMと合わせてトリプルSIMになったからです。
出張レベルであれば、もう現在は国際ローミングが可能なデータSIMも格安で出ていますし、普通のキャリアの国際ローミングも非常に安くなってきています。という意味では、SIMは1枚でもいいといえます。もちろん、公私でSIMを複数使い分けている人や、2カ所以上に拠点を持ってそれぞれSIMを持っている人にとっては、やはりデュアルSIMは多少高いお金を出してでも差し替えの手間がかからないので魅力的です。
しかも、SIMの差し替えって面倒なんですよね。特に飛行機や船・電車などで国際間移動をしている時に差し替えると、SIMが地面に落ちたり、見つからなくなってしまったり。。実は私もそんな経験があります。それを防ぐためにも物理DSDS版を使うというのはいい選択かもしれません。
もちろん、これは「国際間移動ができる」という前提での話ではありますが。
記事は以上です。