先週Bloombergが、Appleが発掘業者からリチウムイオンバッテリーの原材料であるコバルトを直接購買しようとしている、というニュースを報じました。なぜなら最近のEV(電気自動車)の業界のすさまじい勢いの発展により、リチウムイオンバッテリーの正極材料のコバルトの需要が急増し、発掘や生産が追いつかないだけではなく、価格も上昇しているからです。Appleはテック業界の代表的企業で、リチウムイオンバッテリーやコバルトの消費量が世界でも最も多い企業の1つとして、その影響をもろに受ける会社といえます。これは当ブログでもお知らせしたとおりです。
そして本日、CNBCが報じたところによると、Appleがこのコバルト採掘業者からの直接調達に成功した場合、なんと数千億ドル(数十兆円)のコスト削減になるということです。以下が詳細要約まとめです。
GBH:コバルトの採掘業者からの直接購買でAppleのバッテリーコストは2〜3%削減可能
マーケティングリサーチ会社のGBH InsightsのCSO(Chief Strategy Officer)兼テクノロジーリサーチ担当のダニエル・アイブス(Daniel Ives)氏がCNBCに語ったところによると、過去1年半で、コバルトの原材料コストは4倍に跳ね上がり、Appleがコバルトを長期的に確保しようとしていることは至極当然のことという見解のようです。そしてApple社自らが直接コバルトを採掘し、バッテリーメーカーに支給してiPhoneやiPad、Macなどの製品のバッテリーに使用した場合、Apple製品のバッテリーコストは全体的に2〜3%抑えることができるというのです。
もしこの2〜3%を直接バッテリーの総コストとして計算すると、毎年のAppleデバイスの総出荷量が数億台として、しかもiPhoneが殆どだとすると、1つあたりのバッテリーの平均コストは10ドルを超えないものと思われます。すると、単純計算では恐らく下げられるコストは数千億ドル(数十兆円)という数字ではなく、せいぜい数億ドル(数百億ドル)レベルに収まると思われます。
現実的には、コバルト価格の上昇を抑えるのが目的か
しかしもしAppleがこのまま手をこまねいて、コバルト原材料価格が長期的に上昇したことを考えると、今後のコスト増加はとてつもないものになってきます。過去1年半で、コバルトの原材料購買価格は1トンにつき20000ドルから80000ドルと4倍に跳ね上がりました。そしてフォルクスワーゲンやトヨタなど大型自動車メーカーがこぞってEVのためにコバルトの鉱物資源を求めていることを考えれば、将来的に価格は継続して上昇するのは間違いありません。以前のBloombergの見積では、Appleは今後5年間、毎年のコバルトの消費量は数千トンに至るとされています。
Appleは本来は2年前から行動を起こすべきだった
今回のAppleのコバルト採掘業者からの直接調達の動きについて、前出のGBH Insightsのダニエル・アイブスCSOは、「彼らは2年前に行動を起こすべきでした。当時(コバルト原材料の)価格は既に上昇を始めていたのです。これは明らかにちょっと変で、なぜAppleが第一波の”価格暴騰”を避けられなかったのか、理解に苦しみます。しかし、Appleの今回の動きはまだ間に合うかもしれません。マーケットの動きをみれば、今後1年半、世界で約3億5000万台のiPhoneのアップグレード需要があるとみられています。この大量のリチウムイオンバッテリーの供給について、既に問題が起こった後の対策とはなりますが、まだ間に合うのではないでしょうか」とCNBCに語っています。
つまり、Appleはコバルトを直接購買することで、数十億ドル(数十兆円)のコスト削減ができるというより、数十億ドルの損失を防ぐことができる、と表現した方が正確なのかもしれません。
コバルトはAppleの生命線かも
Appleはこのようなメディアの噂については一切コメントしない方針を採っており、同社の真意はわかりませんが、当然ながら上記のようなコストの問題と、もちろん長期的な供給の確保を狙っていることはいうまでもありません。Appleがコバルト不足でiPhoneを需要の数だけ作れなくなったとき、その売上や利益率に翳りが出て、当然ながらそれは株価の下落やApple帝国の崩壊の始まりといえるでしょう(おかしいなー、Appleは昔はIBMという巨大な帝国に対抗するレジスタンスはずだったのに。。笑)。
実際にはコバルト以外にも色々と原材料で不足するものが出てくると思います。スマートフォンってそんなに数が必要なものなのでしょうか。。経済活動には必要とはいえ、世界的に少々作りすぎのような気もします。。
記事は以上です。
(記事情報元:CNBC)