Appleが長期的なコバルト供給を確保するため、採掘業者と直接調達のための交渉をしていることがわかりました。コバルトはリチウムイオンバッテリーのキーとなる希少金属です。これはAppleの、自動車メーカーがEV(電気自動車)のバッテリーのためにコバルトを集めていることに対抗する戦略ではないかとみられています。
コバルトの価格急騰や、バッテリーメーカーへの供給不足が懸念されていることが背景に
内部事情に詳しい人物がBloombergに語ったところによると、Appleは現在はコバルトの供給をバッテリーメーカーに頼るしかない状態で、コバルトが不足したり値上がりすることで同社の行動や計画に支障が出ることを恐れているとのことです。
そしてAppleは既にコバルトの採掘業者との交渉は1年以上にわたって続いているものの、交渉成立に至っていないのではないかとみられています。
Appleは既に世界最大のコバルト消費企業の1つに
iPhoneやiPad、そしてその他のモバイル製品の成功で、Appleは既に世界で最大のコバルト消費企業の1つとなっています。Appleはここ5年間で、1年につき数十万トン単位でのコバルトを入手してきたといいます。
そしてマクロでは、コバルト全体の4分の1がスマートフォンのバッテリーに用いられています。そして今後その使用量はますます増えていくことが予測されています。
同業他社や自動車メーカーも採掘業者との直接取引のために動いている
同様に、Appleのスマートフォン業界での最大のライバルともいえるサムスン(SAMSUNG)グループは、スマートフォンだけではなくEVのメーカーでもあることから、数年にわたってコバルト採掘業者と取引をしようとしているということです。また自動車メーカーのBMWやフォルクスワーゲンなどもコバルト供給についてハントしており、ややニッチな空間に大会社がひしめいているような状態になっています。
アフリカ・コンゴ共和国のコバルト採掘現場に児童労働者がいることで、人権ウォッチャーから槍玉に挙げられているApple
Appleがどのくらいの期間コバルト採掘業者と交渉しているかについては前出のBloombergの記事では明らかになっていませんが、このAppleの動きは人権ウォッチャー達から詳しく調査されていることも原因にあるかもしれません。というのも、2016年のアムネスティ・インターナショナルのレポートによれば、コンゴ共和国において、Appleやサムスン、ソニー(Sony)やマイクロソフト(Microsoft)などのハイテク企業や、ダイムラーやフォルクスワーゲンなどの自動車企業が最終顧客となるコバルト採掘で、児童労働者が働かされていることが指摘されているからです。
Appleはサプライヤー責任報告でコバルトのサプライヤーについても報告
Appleはコバルトのサプライチェーンについて、2014年からサプライヤー責任報告に含めるようになりました。2016年のサプライヤー責任報告書(PDF)によれば、Appleは溶鉱炉や精錬所やその他の供給プロセスでの労働環境について引き続き監視する、としています。2016年12月には、Appleは同社に供給する金属溶鉱炉と精錬所のリストを公開しています(PDF)。そこには6つのコバルト供給業者に対する第三者機関による監査報告や、リスクアセスメントステータスが記述されています。
Appleが直接コバルト採掘業者から購入するようになれば、人権問題の解決にも繋がる?
もしAppleが直接コバルト採掘業者からの買い付け交渉に成功した場合は、同社へのコバルトの供給が安定するだけではなく、同社が採掘プロセスを把握し監視することが可能になることが期待されています。
ただ、恐らくその労働条件の監視などのコンプライアンスに関する取引条件が、コバルト採掘業者との直接取引成立を難しくしているのかもしれません。
記事は以上です。
(記事情報元:Bloomberg)