国民投票でEU離脱が決まってしまったイギリス。ここ数日はニュースもその話題で持ちきりだ。そんなイギリスのEUからの離脱が実はテック業界からも注目を集めていることはご存じだろうか。
イギリスのテレグラフ(The Telegraph)の報道によると、Appleは会計年度2015年(2015年9月26日まで)の1年間でイギリスに1290万ポンド(約17億5860万円)の企業税を納税しており、会計年度2014年の1180万ポンド(約16億864万円)に比べて9%増加している。ちなみにAppleのイギリスでの営業収入はその1年で4.6%増加した。
今年もAppleによって1年で1300万ポンド近い税金がイギリスに転がり込むというのは十分あり得る話だが、実際イギリス政府は2014年に企業税に関する規則について調整を行うとしている。その目的は主にグローバル企業に対して、イギリスで得た利益を恣意的に他の国や地域に資金流出させないためだった。Appleやグーグル(Google)、アマゾン(Amazon)等の企業にとっては、イギリスがこのような措置をとることは彼らの資金調達に影響を及ぼす。なぜならイギリスはこれまでグローバル企業の税務管理についてはかなり寛容な政策をとっていたからだ。
そしてイギリスはEUから離脱することで、より自身のみの利益の確保に躍起になるだろう。他のEU所属国の間との金融の流れも、EUからの離脱でこれまでより滞ることになりそうだ。
そして更にイギリスのジョージ・オズボーン(George Osborne)財務大臣は、現地の企業税を25%に引き上げる予定だとコメントしている。これはテクノロジー分野への支出と税率に対する評価プロジェクトの一環だという。
フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)の報道によれば、Appleはイギリスに3つの会社を設立している。それぞれApple UK、Apple EU及びApple Retail UKだ。この3社の2012年のイギリスへの納税額はなんと”0(ゼロ)”だった。この3社の合計の収入は6,800万ポンド(約92億6,239万円)もあったにも関わらずだ。つまり、これは現地のメディアにも叩かれていたように、Appleは現地の法の抜け穴を使ってうまく”節税”していたということになる。Appleはイギリスに限らず、本国アメリカでの納税額も稼いでいる額に対してはかなり少ない。そこにはアイルランドを利用した節税スキームが利用されたということが明らかになっている。
しかしイギリスがEUを離脱すると、こういった節税スキームが使えなくなったり、或いはまた別のスキームが生まれてくるかもしれない。
EU離脱後に法人税が引き上げられ、表面的には魅力が減るイギリスに対して、AppleのApple StoreやApple Payなどのサービスの投資に変化が見られるだろうか?あまりお金がない移民が減り、それによって安い労働力が確保できないイギリスは、どうやって経済を成り立たせるのか。そしてApple製品を買えるような購買層の人口の変化が気になるところだ。
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(記事情報元:The Telegraph)