Appleのティム・クックCEO、iPhoneバッテリー交換プログラム値下げが買い替え需要に影響することを気にしていないと発言

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Appleは本日、会計年度2018Q1(実年度2017Q4)の業績を発表しましたが、その際、ティム・クック(Tim Cook)CEOが、Appleが現在行っているiPhoneバッテリー交換プログラムの値下げによるiPhoneの買替需要への影響について回答しました。

Bernsteinの投資家、Toni SacconaghiがクックCEOに、ユーザがバッテリー交換プログラムで旧型iPhoneの消耗しているバッテリーを交換すると途端にパフォーマンスが飛躍的に改善し、買い換えをする気がなくなることを予測していたか?という質問をしましたが、クックCEOは、いずれにせよ、Appleはそのこと(買い替え需要に影響するかどうかについて)を決定のために考慮したことはない、と回答しています。

Tim Cook Apple CEO

「正しいことだからやっている」

クックCEOは、iPhoneバッテリー交換プログラムの値下げと、バッテリー寿命を明らかにすることが、iPhoneの買い替え需要に影響するかについて、同社は一切考慮に入れておらず、お客様に対して「正しいことだと思っているからやっている」と主張しています。

またクックCEOは、長期間におけるiPhoneの信頼性についても触れました。彼は一般的なiPhoneへの信頼性は”すばらしいもの”とし、特に巨大なiPhoneの中古市場の存在について指摘しています。また中古市場の存在はAppleにとって、iPhoneのユーザベースを究極に拡げているものだとしていて、歓迎しています。

「iPhoneが人気なのは信頼性が高いから」

iPhoneユーザには毎年新機種に買い替える人もいます。また人によっては古いデバイスを中古に出して新しいデバイスに買い替える人もいれば、2台持ちをして、1台は最新、1台は中古(1つ前に持っていたデバイス)というパターンもあるのも事実です。ちなみに私自身もiPhoneは2台〜3台持ちしていて、最新のiPhone(iPhone X)と一つ前のiPhone(iPhone 7 Plus)と小さめのiPhone(iPhone SE)という持ち方をしている人もいるかもしれません。。人によってはもちろん会社支給のiPhoneと個人のiPhoneという持ち方もあるでしょう。iPhoneがデュアルSIMスロットを導入しないのは、複数持ちを狙っているという理由もあるのかもしれません。。笑

ただ、クックCEOとしてはiPhoneの信頼性が高いのでこれだけ中古市場が盛り上がっている、2台持ちしている人もいる、という言い方をして、買い替え需要には影響しないという説明にしているのかもしれませんが、冷静に考えると本当にそうでしょうか?

ではなぜこんなことを質問される事態になったのでしょう?

そもそもiOS 11によるバッテリーが劣化したiPhoneの性能低下措置は「正しいこと」だったのか?

AppleはiOS 11から、バッテリーが劣化したiPhoneの性能を低下するようにiOSのプログラムに仕込みました。しかもそれをユーザの同意を得ず、密かに行っていて、メディア・TechCrunchの指摘で発覚、世界中に知れ渡ってしまいました。この行為そのものはユーザに対して「正しいこと」だったのでしょうか。ユーザがもしこのことを知らなければ、自分のiPhoneの動作が遅くなったのは、iOSが新しくなって旧機種の性能では充分にその性能を発揮できなくなったか、または端末が古くなったためハードウェア性能そのものが下がったと勘違いし、新しい端末(iPhoneとは限りませんが)に買い替えようとするのが自然でしょう。そしてAppleは基本的に1週間程度の猶予期間はあるものの、最新版以外のiOSバージョンのSHSH認証を終了させており、ユーザにダウングレードすることを許していないことも仇となりました。

Appleは当初から、iPhoneの性能を低下させるか、或いは突然のシャットダウンのリスクを背負うかについては、ユーザ自身が選択できるようにするべきでした。Appleは既にスポークスマンを通じて公式に謝罪を表明しています。

メディアやユーザからの批判を受け、更に世界各地で集団訴訟を起こされてから、Appleはようやく重い腰を上げて対策することを発表しました。なお、今月リリースされるiOS 11.3からバッテリー劣化による性能低下をオフにする”キルスイッチ”が搭載されるようです(ちなみにiPad用のiOSにはこの性能低下は仕込まれていません。容量が大きく、iPhoneに比べてバッテリーの劣化が進むのが遅いためのようです)。

Appleはバッテリーの健康状態によってiPhoneの性能が低下するように仕組んだ理由を、使用中にシャットダウンしたり再起動することが最悪のユーザ体験で、それを避けたかったためとしています。確かにそれは最悪のユーザ体験ではありますが、バッテリー劣化によるシャットダウンや再起動は頻繁に起こるものではありません。その上、バッテリーが古くなっていなくてもシャットダウンや再起動は実際に起こります(私の最新のiPhone Xでさえ、起こっています)。シャットダウンや再起動を気にする人達が、iPhoneを使っている全時間でiPhoneの処理が遅くなってもたつくことの方が、ユーザ体験が悪くなるとは考えつかなかったのでしょうか。。

バッテリー交換プログラムよりもiOSの修正の方が優先課題だったのでは。。

そんなわけでどう取り繕ったとしても、Appleのこの性能低下措置は、ユーザの最新機種への買い替え需要を促進しようとした行為であることは火を見るより明らかでしょう。他にどんな理由があるのでしょう?上のどんな言い訳も、聞こえはいいですが、ほんとにそうなの?と勘ぐってしまいます。ティム・クックCEOが主張するユーザに対して「正しいこと」をするのであれば、そもそもそんなことはするべきではなかった気がします。素直に謝罪をしたのはもちろん素晴らしかったのですが、iPhoneバッテリー交換プログラム云々よりも、iOSをすぐにでもiOS 10までの性能低下がない状態に修正するのが「正しいこと」だったのではないでしょうか。。

またiPhoneバッテリー交換価格の値下げも、以前がべらぼうに高かっただけで(これも新機種への買い替え需要を促進しようとしていた行為の1つといわれても仕方がないレベルです)、決して一般的にみれば「安くなった」わけではありません。あくまで自社の過去のサービス価格を値下げしただけに過ぎず、他社のスマートフォンのバッテリー交換と比べると同等のレベルに持ってきたまでです。つまり、Appleにとっては十分利益が出て問題なく交換できるレベルの、実に緻密に計算された価格帯なのです。更に、バッテリー交換プログラムの値下げは、なぜか今年いっぱいまでという期限まで切られています。

一方、この問題が明らかにならなかったとして、Appleにとっては、バッテリー交換プログラムの値下げをしなくてもよかった場合に比べれば、もちろん支出が増えて利益が減り、その上交換需要を刺激しなくなるため新機種の売れ行きが予想より悪くなります。そう考えればAppleは身銭を切ったという見方ができるかもしれません。それでユーザに対して「正しいこと」をしました!( ・`ω・´)キリッ、と言っているわけですね!笑

それでもAppleは2017Q4で最高の売上を記録

最近は上記のようなユーザの信頼を揺るがすような行為や、特にソフトウェア(OS)で重大なバグや深刻なセキュリティホールが頻発しているAppleそのたびに指摘されて修正が後手に回っている状態です。世界で最も市場価値が高い企業の割に、まるでやることが行き当たりばったりといわれても仕方がないレベルです。

それにも関わらず、Appleは2017Q4で史上最高の売上を達成しました。これはひとえにiPhone Xの値上げによる恩恵と思いますが、この好調が今後も続いていくかについてはわかりません。iPhone Xの熱狂が一段落した後は、もう一度ブームを起こすのは難しいかもしれません。

新しいハードウェアにはもちろん期待したいですが、特にソフトウェアにおいて、Appleにはもう少しだけユーザに選択権を与えるように方針を変更してもらえるよう祈るばかりです。

記事は以上です。

(記事情報元:9to5Mac

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