12インチMacBook:Apple或いはジョブズ式の”偏執”と”究極”を体現したデバイス

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長い間、AppleのMacの販売台数の増加率はPCを大きく上回っており、ここ数年モバイル端末に移行していく中で、Windows PC業界の疲弊と無力さは既に明らかで、その中でMacの優勢は明らかに際立っている

このMacとWindowsの2つのプラットフォームは全体的な販売台数は同じレベルではないが、この成長し続けるMacと凋落するWindowsという相反する局勢は揶揄の対象となっている。今年3月9日の新製品発表スペシャルイベントで、Appleのティム・クック(Tim Cook)CEOは、コンピュータ業界全体が縮小する中で、2014年のMacの販売台数は21%も上昇したと発表した。両陣営の発表イベントはこういったお互いを攻撃しあう風潮があるが、そんなイベントの中で、あの12インチMacBookがベールを脱いだ。この記事はiFanrの記事の翻訳と共に、私自身も先月からこの12インチMacBookユーザとなったので、そのレビューも後半に盛り込みつつ進めていきたい。

AirでもなくProでもない、完全に新しいMacBook

12inch_MacBook

MacBook Airよりも軽く薄くなった外形設計、そして新たにデザインし直されたキーボード、感圧タッチ(フォースタッチ、Force Touch)搭載トラックパッド採用、Retinaディスプレイ、ファンレス設計、USB-C、これらが全く新しい12インチMacBookを表すキーワードだ。このMacBookはMacBook Airシリーズには入らず、もちろんMacBook Proシリーズにも入らず、単にMacBookと命名された。

軽く薄くは永遠のテーマ

Apple製品は非常に精巧に作られていることで知られている。ノート型コンピュータでいえば、その精巧さは二大要素の指標で表される。それは製品の重量と厚さだ。12インチMacBookの一番厚いところは13.1mmで、11インチMacBook Airよりも24%薄くなっている。厚さ以外の全体の寸法はMacBook Air相当だ。そして総重量は1kgを切って、920gとなった。その薄さを実現するために、Appleは12インチMacBookのためにフルサイズキーボードを全く新しく設計した。バタフライ構造のキーボードはこれまでのシザー構造よりも40%薄くすることができ、またキーボードそのものの面積を17%増やすことができた。

12インチMacBookには2Kディスプレイが導入されるというのは噂段階でもわかっていたが、Appleは12インチMacBookに解像度2304×1440のディスプレイを採用、非常に美しいビジュアル体験をもたらした。それと同時にAppleはディスプレイの厚さをわずか0.88mmにし、ディスプレイとその他部品の隙間をできるだけ削減した。Appleによれば、これは「これまでMacに搭載された中で最も薄いRetinaディスプレイ」だという。

その他にも、Appleは新しい“段状”バッテリーを採用し、最大限そのボディの空間を利用し、もともと非常にスリムなボディの中に大容量のバッテリーを詰め込み、十分に足りるバッテリー駆動時間を確保した。ただし、同様の技術はLG G2でも使われており、Appleの12インチMacBookが世界で唯一採用しているわけではない。

感圧タッチ:トラックパッドを手書きパッドに

Windows PCに比べ、Macのトラックパッドはユーザにより素晴らしい体験をもたらしてくれる。そして全く新しい感圧タッチ(フォースタッチ、Force Touch)テクノロジーは更にその差を広げてくれたかもしれない。

感圧タッチの魅力は、そのインタラクティビティのイノベーションにある。Appleの記述によれば、感圧タッチによって、タッチの長さと加速コントロールとプレッシャーセンサーの3つの機能を実現したという。トラックパッドの下側に”タプティック・エンジン(Taptic Engine)”というセンサーが搭載され、ユーザがどのくらいの力で押したかを感知でき、また軽くタップしたのか力を入れて長く押したかも感知可能だ。

そして更に親指を使ったのかその他の指を使ったのかについても感知し、自動的にセンサーの感度を調整するという驚くべき機能もある。これはMacBookのトラックパッドの使用体験に更に全く新しい風を吹き込んだといえよう。そんなわけでAppleはいずれトラックパッドを手書きボードのようにするかもしれないという人もいるほどだ。

USB-C:1つのポートで全てを解決

12inch_MacBook_USB-C_Port

12インチMacBookの機体の左側についているのはたった1つのUSB-Cポートだけだ。これはMacBookにとって、右側についているイヤホンポート以外の唯一のポートで、これによってデータ、映像、電源の伝送が可能になる。この前衛的な処置は、Appleが以前フロッピーディスクドライブを廃止したり、あってもなくてもよかった光ディスクドライブを取り外したり、またその後重くて遅い機械式ハードディスクドライブを外した、そのきっぱりとしたかつてのAppleの決意と自信を思い起こさせるAppleはこれまでずっと、まるでギャンブラーのような偏執的なテクノロジーが好きなのが特徴だ。今回の12インチMacBookでたった1つしかポートを残さなかったこの措置も、多くの人からはAppleらしいと受けとられたに違いない。

当然、Appleは本体全体のデザインをする際に機能をできるだけシンプルにすることに拘っている。USB-Cの機能は上記の通りそれを補ってあまりあるほど強力で、データや映像だけではなく、更にアダプタを使うことでいくつもの外付けデバイスと接続可能で、更に電力供給も双方向でのやりとりが可能となる。つまり電源アダプタを使ってMacBookに充電をしつつ、iPhone等スマートフォンを充電するといったことが可能となる。当然USB-Cの機能については、これらが可能なことは事前に知られていたものの、それを実際にAppleが本当にデバイス上で実現すると、やはり驚きをもって迎えられるのだ。

Core MがMacBookのファンレス設計を可能に

Appleのファンレス設計への探求は長い間続いていた。15年前の2000年にリリースされたPower Mac G4 Cubeでそれは1回テストされている。しかし当時の技術が未熟だったため、またAppleはそれまで一度もファンレス設計をやったことがなかったため、Power Mac G4 Cubeにはファンを装着するスペースが残されていた。その後リリースされた”ゴミ箱”型の現行Mac Proも、Appleがファンレスに拘った努力が垣間見える。当然ファンレスではないが、ファンの数を減らし、本体の構造を十分利用して散熱を行うという設計になっていた。

しかしとうとう14nmプロセスを使用したインテル(Intel)Core Mプロセッサが登場して最高電力消費が5Wとなり、それが12インチMacBookにてようやくファンレスデザインを実現させた。同じCore Mを搭載したWindows PCは理想的な成功を収めていないが、Appleのソフトウェアの最適化が功を奏しているのか、MacBookにおいては不平を漏らすユーザは少なく、成功を収めているのはさすがAppleだというほかない。

この12インチMacBookに非常に誠意があるデザインが導入されたこと、つまり全く新しいキーボードとRetinaディスプレイ、そして軽くて薄い本体などは、最近のAppleのApple Watch Editionの販売価格を除いて最も意外なAppleの行動となった。12インチMacBookが発売された後、すぐにMacBook Airの中古が市場に溢れたこと、また発売後現在に至るまでオンラインApple Storeでは常に納期が1〜2週間になっていて供給が追いついていないことも、このMacBookとAppleのブランド力がいかにすごいかを物語っている。

12インチMacBookは偏執と、究極を求める姿勢、そして機能上の妥協をしてでもその製品ジャンルの未来を示すという、これまでのAppleのやり方を昇華させたモデルといえよう。

画蛇添足 One more thing…

冒頭に書いたとおり、私自身も12インチMacBookを先月帰国時にApple Storeで購入し、外出時に使用している。私は海外在住なので日本で免税(8%オフ)で買えるのも大きかった。率直な感想・レビューは以下の通り。

真骨頂:Retinaディスプレイ

MacBook Airの11インチの大きさに、12インチの高精細なRetinaディスプレイが搭載されている。MacBook ProのRetinaディスプレイモデルやiPhoneのRetinaに見慣れていると、今更MacBook Airを見ると非常に粗く見えてしまう。2011年のMacBook Airも持っているが、正直もう戻ることはできない。12インチのサイズはMacBook Proの15インチディスプレイにかなうべくもないが、外出時に使用すると割り切れば必要十分だ。

十分なバッテリー

そしてなんといってもバッテリーの持ちがいい。外出時でもバッテリーが切れて困ったというようなことは今のところない。ファンレスのため、余計バッテリーが持つということもあるだろう。

バタフライ構造のキーボード

バタフライ構造のキーボードは最初ちょっと違和感がある。また私は15インチMacBook Proのキーボードの位置に慣れすぎているので、位置やフラット感なども多少違和感がある(特にカーソルキー。。笑)。が、使っているうちに慣れてくる。フラットなのも、ストロークがない分余計な力を使っていないので、指や手、ひいては腕にも優しいと思う。そして何より嬉しいのは、キーボードバックライトも妥協せず残してくれたことだ。キーボードバックライトが省かれてしまった、2世代目でSSDを最初に搭載したMacBook Airを買ってしまった(かなりババ引いた気分。その後性能も強化されバックライトもついて悔しかった)自分としてはこれは嬉しい。

感圧タッチの使用範囲は限定的だが、トラックパッドそのものが性能向上

ともかく12インチMacBook発売開始日にAppleマニア仲間でもあるgori.meのゴリさんと一緒に渋谷のApple Storeで見て触った時のあの感圧トラックパッドの衝撃が忘れられなかった。電源が入っていないときには全くクリック感がないのに、電源を入れるとクリック感が生まれる。。あれはあまりに衝撃的だった。

その後実際に手に入れてから正直あまり感圧タッチ機能は使いこなせていないが、トラックパッドのどこを押しても同じように反応するのはすごく便利だし、MacBook Proではタップよりもクリックが多かったのが、12インチMacBookではタップを多用するようになった、なんとなく。これもまた、ユーザ側の省エネになっていいと思う。

USB-Cポートは1つで十分

今やクラウドの時代。ほとんどのデータはネット上にあるし、私が周辺機器で唯一使うマウスはMagic Mouseでワイヤレスだし、今やWi-FiやBluetoothデバイスも多いので、普段物理ポート接続はほぼ必要ない。またもう光ディスクを使うような用事もない(例外的にOfficeのインストールのみディスクドライブを使った)。ましてや持ち運びして外で使うのが12インチMacBookのスタイルだ。殆ど繋ぐものなどないだろう。

もちろんアダプタを使えば普通にUSBデバイス(USBストレージ、外付けハードディスク)を接続することもできるし、iPhoneなどの通常のUSB(USB-B)ケーブルを接続することもできる。また上記の通りMacBookに充電をしながらiPhoneも充電、というようなことも可能だ。ただこれが可能になるアダプタが1万円近くするのは異常に高いと思う。HDMIいらないから、USB-CポートとUSB-Bのみのアダプタを半額以下で出して欲しいところ。。それが唯一の不満かもしれない。背に腹はかえられないから買ったけど。

1.2GHzのCore M、8GBメモリで十分。512GBのSSDは使い切れないほど

私は12インチMacBookをオンラインApple Storeで買わず実店舗で買ったため(免税のため)、選択したのはお店で選べる最高スペックの1.2GHzモデル(本当は1.3GHzのを買いたかったんだが)。

ただ私自身は特に映像処理などはせず、殆どはブログ書きか表計算アプリくらいしか使わない。もちろんブラウザのタブは沢山開くが、今のところ1.2GHzのCore Mプロセッサ、8GBメモリで十分問題なく使えている。ってことはやはり15インチMacBook Proは私にはオーバースペックということなのだろう。。

私はスティーブ・ジョブズが発表したあの初代MacBook Airも買ったが、あれは本当に本来のコンピュータとしての性能まで完全に妥協してしまっていたものだった。当時はハードディスクも機械ディスク式だったこともあり、あまりに遅くてすぐに使うのをやめてしまった。しかし今回の12インチMacBookはそんなことはない。性能にも十分に考慮してあると思う。

SSDの容量は512GBにしたが、正直音楽や動画などを入れなければとても使い切れない容量だ。

なんてったって軽くて薄い

12inch_MacBook_15inch_MacBookPro

そしてなんといっても、素晴らしいのは軽くて薄いこと。持ち歩きの時は、これと充電アダプタ、USB-Cケーブル、USBアダプタくらいだ(マウスは気分で)。肩も凝らないし小さい鞄で済むのもいい1kg以下だから、手で持っても疲れない

スペースグレイがかっこいい

12インチMacBookはカラバリがあるのも特徴。もちろんこれは個人的な意見だが、Appleのスペースグレイは非常にかっこいい。さすがにゴールドは買う気がしないが。。

12インチMacBookを実際に使用してわかったまとめ:ジョブズの精神が宿るマシン

この12インチMacBookを使用した後に家に戻ってMacBook Pro 15インチ(Mid 2014)モデルを使うと、またこれはこれでやはり安定して使いやすいという、別の良さを発見する。基本的に長い外出の際の持ち歩きには重く、肩が凝ってしまうのでNGだが、据え付けて使うにはやはり最高のマシンだ。やはりAppleは目的ごとに最高のマシンを作っているのだ。

上記の通り、12インチMacBookは正にAppleの挑戦者・先駆者としてのこだわりを体現したデバイスだと感じている。無駄なものを削いで究極にシンプルに、しかもめちゃかっこよく!を実現し、惚れ惚れするようなマシンだ。これはTipsだが、パワーインジケータのLEDが省かれた分、充電が開始するとiPhoneやiPadのように”ピコン”というような音がするところもなかなかよく考えられている。正直iPhone 6 Plus以上の、いやここ数年のApple製品の中で個人的に大ヒットだ。12インチMacBook開発の精神は、Appleの精神というよりスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の精神といった方がしっくりくるかもしれない。正にあのスティーブ・ジョブズの精神がまたもやこの世に現れたような最高にクールなデバイスと断言してしまおう。

当然性能にしてはやや(というよりかなり)お値段が高いのがネックではあるが、それはApple製品、Macを使う人にとっては禁句かもしれない。新しい道を切り開いて未来を示してくれるAppleへの御礼だと考えている(褒めすぎか)。

記事は以上。

(記事情報元:iFanr

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