古いバッテリーや携帯電話・スマートフォン、ノートパソコン等は非常に数が増えやすく、また端末が入れ替わると事務所などがあっという間に電子ゴミの山になってしまうのが悩みではないだろうか。
アメリカのABC Newsによる報道によると、今回アースデイ(Earth Day)を迎えるにあたり、アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)は、モバイルデバイス及び部品等の電子ゴミ(E-waste)によって得られた資源の評価データを公開した。EPAはサイト上で、毎回100万台のモバイルデバイスを回収する毎に、1.6tの銅、350kgの銀、34kgの金と15kgのパラジウム(Pd、白金族元素の1つで貴金属)を生成することが可能だとしている。また100万台のノートパソコンを回収することで大量の電気を節約することができるとし、その量は3500ものアメリカの家庭が1年で使用する電力になるという。
他にも、EPAは電子ゴミの処理と回収について以下の各種の方法と手順を紹介しているのでご紹介(ただし、以下は全て米国=アメリカ合衆国での話なので、日本での状況については別途確認していただければと思う)。
- 回収前に。。
安全を確保するために、まず個人情報を全てデバイスから削除すること。古い携帯電話やスマートフォンを例にとれば、最良の方法は”工場出荷時の設定に戻す”ことによって、全てのデータを消去することができる。EPAは携帯電話やスマートフォンについては、バッテリーを取り外して、分別して回収することを勧めている(iPhoneは普通には取り外しできないが。。笑) - iPhoneとその他のApple製品
Appleは自社のリサイクルプログラム”Apple Renew”を持っており、消費者は旧型のApple製品をApple Storeに送ったり持ち込むことで回収してもらうことができる。
ユーザはオンラインで郵送費のみ負担するタイプの送付状をプリントアウトすることができ、それを貼って回収してもらいたいデバイスをAppleに送付すればよい。iPad 2、iPhone 4及び2007年以降に発売されたMacであれば、そのデバイスの状態によって、Appleより評価額に見合ったギフトカードが送られる。
またユーザは直接旧型iPod(iPod Shuffleは除く)をApple Storeに持ち込むことができ、それによって新しいiPodを10%割引価格で購入することも可能だ。iPhoneの下取りプログラムもある。 - 旧型iPhone
Appleは3月に新型iPhone解体用ロボット”Liam(リアム)”について新製品発表スペシャルイベント内で発表した。この解体用ロボットLiamによって、Appleは毎年120万台のiPhoneを解体することができ、その中から再利用可能な部品を取り出すことができる。その他にも、LiamはiPhoneのバッテリーの中からコバルトやリチウム等の金属、またカメラからは金と銅、ロジックボードからは銀とプラチナを取り出すことが可能だ。 - その他のスマートフォン
多くのスマートフォンメーカーや携帯キャリアは、郵送や店舗でのリサイクルプログラムを実施している。サムスンやLGは、ユーザのデバイスの郵送による回収を受け付けており、Sprint、Verizon、T-mobile等のキャリアはそれぞれ異なったリサイクルプランを持っている。最も簡単な方法は、旧型デバイスを店舗に持ち込むことだ。 - バッテリー
多くの充電式バッテリーの中には再生可能な原材料が含まれている。例えば亜鉛、マグネシウム、鋼鉄などだ。バッテリーの中の鉛やプラスチックなども再生可能な材料となる。北米のバッテリー回収プロジェクト”Call2Recycle”はスピード検索ツールを提供しており、所在地にあるバッテリー回収ステーションの位置をすぐに検索可能だ。
画蛇添足 One more thing…
AppleがiPhone等の回収で大量の貴金属をゲットしているなどという報道は誤りである、と先日当ブログで紹介したばかりだ。実際にはAppleはアメリカの一部の州のリサイクル法に従ってiPhoneどころかApple製品以外の電子ゴミも買い取った上でリサイクルに協力していて、それだけであれば大赤字なのだ。
日本の場合のiPhoneの回収は、Apple自身も回収や下取りプログラムを行っているが、たいていの人はキャリアから買うと思うので、キャリアも端末回収を行っている。もちろん、買い取りはキャリア自身がやっているわけではなく、キャリアのショップ(運営しているのは大手商社だったり。。)を通じて買い取り、それが買い取り業者に大量に流れたりする。
他に、日本には買い取り屋さんも大量に存在しており、ネットで探せば買い取り価格まで公開されているので利用するといいかもしれない。ただその場合は行き先はどこになるかはわからない。
基本的に買い取り業者は状態がよければ香港に運んで、香港の買い取り業者から中国大陸に流れるというパターンが多かった(ただ日本の端末はSIMロックがかかっているため買い叩かれる傾向にある)。数年前まではその日本版の端末を買ってSIM下駄でSIMロック解除をして使うというのが中国大陸で流行っていたが、今はSIM下駄も使えなくなってきているので、主流ではなくなっているかもしれないが。。
いずれにせよAppleのiPhoneに限らず、その他の製品も含めた電子ゴミは中古品として輸出されて使われることもあるが、最終的には中国に輸入され、解体や溶解の上で原材料として再利用されることになることが多い。ただ問題は電子ゴミの中には人体に有害な物質も含まれていて、それらが自然界に流出するなど環境に与える悪影響が大きいため、世界的な問題になっているのだ。しかし中国ではその電子ゴミの処理で経済が成り立っているところも多く、中国も容易に規制に乗り出せないという事情もあるため、解決に至っていない。
なお、電子ゴミについては以下の驚愕の事実がある。
- 電子ゴミは世界で90%以上が違法処理されている
- 日本の電子ゴミは有価物として日本以外のアジア諸国に輸出されている(ゴミを押しつけている)
- 日本は電子ゴミの量が世界3位、世界全体で4000万トン
- 電子ゴミの知っておくべき10の深刻な事実
毎日のように新しい電気・電子機器がリリースされるたびに旧型機種の電子ゴミが増えている。Appleだって同じだ。毎年iPhoneの新機種が登場し、そのたびに数千万台〜1億台くらいは売れるわけで、その処理については地球規模で大変なことになっているのだ。先進国のエゴによる迷惑を発展途上国がかぶっているような構造は、電子ゴミでも同じのようだ。
メーカーにも電子ゴミを処理する責任が生まれるのは当然のことなのかもしれない。
記事は以上。
(記事情報元:ABC News)