米小売最大手のウォルマートが、ついに【Apple Pay】を受け入れます。8月24日(月)から一部店舗で対応を始め、年内に全米のWalmartとSam’s Clubへ広げると発表しました。ガソリンスタンド部分は2027年半ばまでに対応予定。Apple Payの米国開始から約12年、最後まで残っていた大物の陥落です。

かざして払う手元と、脇に残ったQRコードのスタンド。画像はイメージです。
何がどう変わるのか
対応するのはApple Payだけではありません。Google Pay、Samsung Pay、そしてタッチ決済対応のクレジットカードまで、非接触決済がまとめて解禁されます。ウォルマートはこれまでレジでのタッチ決済を一切受け付けず、支払いは磁気・ICカードか、自社アプリのWalmart Payに限られていました。
ウォルマートは声明で「お客様に支払い方法の選択肢を持ってほしい」と述べています。長年の方針転換の理由としては、あっさりしすぎている言い方です。
なぜ12年も拒み続けたのか
ウォルマートがタッチ決済を拒んできた理由は、はっきりしています。カード手数料と、顧客データです。
同社はかつて、小売連合で「CurrentC」という独自決済を作ろうとしました。銀行口座から直接引き落とすことでカード会社の手数料を回避し、購買データも自分たちで握る構想です。CurrentCは2016年に頓挫しましたが、その思想はWalmart Payに引き継がれました。レジでアプリを開き、QRコードをスキャンして払う方式です。
つまりウォルマートは、Apple Payが嫌いだったというより、決済の入り口を他社に渡したくなかった。Apple Payを通すと、誰が何を買ったかの手前の部分をAppleと銀行に握られ、取引ごとの手数料も乗ります。それを12年間、米国最大の売り場への入場料としてAppleに払わせない、という交渉を続けてきたわけです。
QRコードの国から、この決着を眺める
ここからは中国在住者としての話です。この件、私にはなかなか感慨深いものがあります。
Walmart Payの方式——レジでアプリを開いてQRコードで払う——は、中国では決済の標準そのものです。AlipayとWeChat Payがまさにこの方式で中国を制覇し、私も毎日QRコードで払って暮らしています。Apple Payは中国で2016年にサービスを開始しましたが、QRコードの牙城を崩せず、いまも存在感がありません。開始1周年の時点で苦戦ぶりを書いた記事が、当ブログに残っています。
普及にはまだまだ努力が必要!Apple Payが中国でサービスを開始して1周年を迎えたが大苦戦中
つまり今回の件は、同じ対決の裏返しなのです。中国ではQRがNFCに勝ち、米国ではNFCがQRに勝った。分かれ目は、先にどちらが日常を押さえたかです。中国では銀行カードが普及しきる前にスマホ決済が来たので、店側が紙のQRコードを貼るだけで済む安い方式が一気に広がりました。米国はカード社会が完成していたので、カードをかざす動作の延長にあるタッチ決済が自然だった。ウォルマート1社の意地では、この流れは変えられなかった、ということだと思います。
おもしろいのは、中国のウォルマート店舗では、とっくの昔からAlipayとWeChat Payで払えることです。あの会社は思想で動いているのではなく、その国で客が使う決済に、最後は合わせる。米国でその順番が回ってきただけ、とも言えます。
Apple Payにとっての意味
Appleのサービス部門にとって、これは静かに大きい話です。Apple Payは取引ごとに銀行から手数料を受け取っており、全米5,000店規模の空白地帯が埋まる影響は小さくありません。App Storeの手数料収入が規制で削られていく中で、決済のような地味な収入源の比重は上がっていきます。
Apple、EUのApp Store手数料を全面改定。1インストール0.50ユーロのCTFは廃止へ
「ウォルマートでApple Payが使えない」は、米国のiPhoneユーザーの定番の愚痴でした。それが消えるのですから、体感としてはかなり大きな変化のはずです。日本のスイカやコンビニ決済に慣れた身からすると、今さら感すらありますが。。
記事は以上です。
(記事情報元:MacRumors)
※記事中の画像はイメージです。
