茨の道!中国市場への復帰を計画中のGoogle、その作戦と展望

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米Google(グーグル)2010年に中国(大陸)から完全撤退してからはや5年。。新しい指導体制に移行したGoogleが、また中国市場への復帰を計画しているようだ。もしかしたら遠くない将来、メジャーな中国国産スマートフォンの上にいくつかのGoogle製のアプリが復活するかもしれない。しかも、中国用に特別にカスタマイズされたアプリが。

Googleは中国市場復帰に向けた計画を既に実行に移している

Googleが中国市場に復帰しようとしているという情報が、中国国内のネットユーザの期待と憶測に混じって伝えられてきている。中国のメディアiFanrの独自ソースの情報によれば、Googleは一部のサービスを中国市場向けに復帰させることを計画中で、ある程度パッケージ化された形になるもよう。その中にはGoogle Playストア、Play Game、地図、そして翻訳などのサービスが含まれるという。

Googleは既に中国内部にサーバをたてて内部テストを行っており、特別版Playストアは赤を基調にしたデザインとなるという。ただ提供するのはアプリだけとなり、ミュージック、ブック、映画等の版権ものは含まれないもようだ。ユーザは中国の銀行カードの決済システム”UnionPay(銀聯、银联)”を紐付けすることで有料アプリやゲームを購入することができるようになる。

中国独自アカウントを作ることで中国大陸の法律に準拠

当然、これはGoogleが中国大陸の法律の制限を受け入れることを意味する。そのやり方は、以前Evernoteが中国でサービスを展開したときのロジックと同様ユーザはスマートフォンで中国エリアに限ったユーザとしてGoogleアカウントを取得するという方法になりそうだ。中国版Googleアカウントは現行のGoogleとは独立させる、つまり今あなたがGoogleやGmailのアカウントを持っていたとしても、中国エリアのGoogleアカウントにはアクセスできず、別途アカウントを新規登録する必要があるということだ。

Googleサービスの中国市場復帰は限定的

復帰予定のサービスの中には、Google検索のような本来のGoogleのコアサービスは含まれていない。これは中国独特の政策や許認可制度が、Google検索のようなサービスを中国で復帰させるためのプロセスに大きな障害となっているのが原因なのは間違いない。中国政府にとって好ましくないと思われる、例えば1989年に起こった共産党による学生虐殺事件と西側にとらえられている”天安門事件(六四)”、チベット独立問題(特にダライ・ラマ14世関係)、ウイグル(東トルキスタン)独立問題、人権活動家の弾圧に関する検索結果は検索できないようにせよ、という命令を受け入れなくてはならないことが最大の原因だろう。これによって、Googleにとっても大きなビジネスチャンスに面していながら、そこに存在する審査システム、そしてGoogle自身の価値観や道徳観念の間でジレンマを抱えることになっているに違いない。

Google内部の葛藤とGoogleの変化

Googleの元CEO、エリック・シュミット(Eric Schmidt)の著作『How Google Works』に、Googleの幹部によるこういった会社の重大な意志決定に関する争論についての記述がみられる。

上記の書籍によれば、Google内部でも中国大陸での業務の発展については多くの異なる意見が交わされているようだが、ビジネス的な展望と、中国の情報流通の現状に変革をもたらしたいという願望が、Googleの天秤を中国市場に傾かせる一端となっているという。エリック・シュミット元CEOは、「中国市場に打って出ることは、とても賢いビジネス戦略であるだけではなく、道徳価値観においても正確な選択だ。セルゲイ(・ブリン)はこれについて異なる意見を持っているが、ラリー(・ペイジ)は私と似たような考えを持っている」と記述している。

“サイドワインダー”=側面攻撃作戦で中国を攻略しようとするGoogle

“Sidewinder(サイドワインダー)”=側面攻撃。これはAndroid PoliceがGoogle Playの通信パケットから発見した、中国国旗スタイルのPlayストアのロゴのニックネームで、これには”曲線救国”という隠喩も込められている。”曲線救国”とは日中戦争時の中国の抗日戦争時のやり方で、軍隊以外の各方面の人材を抗日に導くことで間接的に国を救うという方針だ。つまり、いくつかのビジネス的に莫大な将来性が見込めるアプリに集中すること、そして彼らの”価値観”の最低ラインに触れないアプリに限ってリリースするという分裂リリース作戦を展開する、というわけだ。

Googleの共同創業者のラリー・ペイジ(Larry Page)やセルゲイ・ブリン(Sergey Brin)がだんだんGoogleの日常業務や運営から離れてその影響力が薄まる中、Googleの権力を握ったばかりサンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)CEOは次の10億の市場を狙っている。ピチャイはフォーブスの取材を受けたときに中国市場についてこんな風に語っている

“私は中国市場はブラックホールだとは思っていない。これは1つの巨大なチャンスであり、我々はその中でサポートプラットフォームの役割を演じることができる。将来的には、我々は他のサービスを提供するチャンスもある。”

by Forbes “Exclusive: Sundar Pichai’s Plan To Keep Google Almighty”

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群雄割拠で大混乱、さながら戦国時代の中国Android市場

2010年にGoogleは中国大陸から撤退したが、Android OSは中国で90%近い市場を今でも独占している。しかしGoogleは中国からAndroidによって思った通りの収益を得られていない。逆に、Androidアプリを入り口にしてユーザを取り込もうとする争いが中国国内で巻き起こり、バイドゥ(百度)、91、360、豌豆荚、テンセント(騰訊、腾讯)などが群雄割拠し、多くのアプリがバージョンもバラバラにばらまかれて混乱し、海賊版や悪意のあるソフトウェア(マルウェア)が氾濫しているというある意味めちゃくちゃな局面を迎えているのが中国Android市場の現状だ。

コアサービスが提供できない中国市場でのGoogleの優勢は限定的、サードパーティアプリやスマホメーカーが敵となる

ロジック的には、Googleはこのような新たなルールが敷かれた戦場の上で、強大ないくつもの競争相手と戦わなくてはならないことになる。しかもGoogle独自の独立したアカウント体系と、既に検索エンジンやGmailなどのコアサービスが中国大陸で失墜していることから、Googleシステムとアプリの最大の優勢は存在しない。その上に、プレインストールアプリやカスタマイズUIなどでシェアの拡大を狙っている中国国内スマートフォンメーカー、例えばシャオミ(xiaomi、小米)やファーウェイ(HUAWEI、華為)などは既に築き上げている自社のチャンネルを放棄することはないだろう。本来Android OSを搭載する際にGoogleとの間に交わされているはずのMobile Application Distribution Agreement(モバイルアプリケーション配布協議書)によって、中国国内のスマートフォンメーカーが全て必ずGoogle Playやその他のGoogleが要求するサービスアプリをプリインストールする必要が出てきたとしても。

そんなわけで、中国版Playストアに残されたのは「正規版である」という身分を証明する”旗印”だけだということになる。日本の戦国時代に例えていえば、当時は既に地に落ちていた室町幕府の将軍(征夷大将軍)或いは天皇(朝廷)の正規軍の旗印といったところか。。

混乱した中国Android市場の再整理とデベロッパへの利益還元がGoogleの目標か

Googleの中国復帰の戦略は、これらのサードパーティと直接対決するというものではない可能性が高い。中国市場で断片化したAndroid市場をもう一回整理して統一してから改善し、更に利益の出やすいビジネスモデルを作り、また開発者(デベロッパ)が海賊版の横行のためにAndroidシステム上でアプリを開発する際に失ってきた利益を正常に戻すというのがその戦略の根本だろう。

ただ、開発者にとっては、中国市場も全世界の市場のうちの1つでしかない。その潜在的市場価値はどのくらいのものなのだろうかGoogleの中国復帰はまだまだ先が見えないといえるだろう。

画蛇添足 One more thing…

ちなみに現在中国でもVPNを使うことで、ブロックされているGoogleのサービスを使うことができる。私自身もGmail、Googleサーチエンジン、GoogleマップなどのサービスをVPNを使って利用している。

また中国国産スマートフォンにはGoogle PlayをはじめGoogle関連のサービスアプリは1つも入っていないが、中国国内専用のGoogle関連アプリをインストールするためのインストーラも存在する。使いたい人は使っているというわけだ。なお、小米のmi note proやredmi noteにGoogleアプリやサービスを中国国内ネット環境で入れる方法は以下の記事で解説しているのでご参考まで。

上記の通り、BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)をはじめ多くの中国ローカルIT超大手企業によってほぼユーザの奪い合いが終わってしまっている中国Android市場で、正規の旗印のみを掲げたGoogleサービスがどれだけ浸透できるかは疑問だ。

中国人としてももちろん正規のサービスを使えることは安心を買う意味でも歓迎されるとは思うが、問題は中国人にとって現行のサービスから乗り換えるメリットを感じられるような、カスタマイズされローカライズされたサービスが提供できるかが成功の鍵となるということだ。そのあたりは他のローカル企業が既にさんざんやってきているだけに、恐らく既存サービスをユーザごとまとめて買収していくしか手段がないのではないだろうか?

その点、Appleはうまく中国政府や企業と付き合ってきているといえる。これはスティーブ・ジョブズの後を継いだティム・クックCEOの功労が大きい。ティム・クックは中国市場を重要視していることに言及することを憚らず、また自ら頻繁に中国を訪れては、政府高官や他企業との交流を行っている。その結果、Appleのサービスは中国国内ではアクセスがそれほどよくないとはいえ、Googleのようにブロックされているわけではないため浸透しつつある。Googleにとって、中国国内のスマホ市場シェアがたった十数%のAppleも、強大なライバルとなるだろう。

記事は以上。

(記事情報元:iFanr

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