中国に住んで既に10年以上経っている私ですが、今回初めて中国で運転免許証(机动车驾驶证)を取得しました。
そんなわけで、日本人が中国で運転免許証を取得する方法と注意事項などをまとめてみたいと思います。
なお、この情報はあくまで記事更新現在(2018年12月)の段階のものであることと、中国の広東省中山市で取得したものです。中国では時期や場所によって制度や政策が変わり、必要書類や取得に必要な条件や金額が異なることもありますので、あくまで参考程度にしてください。ご自身で取得する際には、必ずその時点・場所で申請に必要なものを確認するようにしてください。確認は、各都市の運転免許証を発行する驾驶证考场(運転免許証試験場)に電話するか、Webで確認するなどした方がいいでしょう。ただWebは更新を怠っているところも多いので、電話が一番確実かと思います。
まず、大前提として、中国(大陸)はジュネーヴ条約に加盟していないため、国際運転免許証で運転することが許可されていませんので、中国大陸で車を運転するには、中国大陸独自の運転免許証を申請し取得する必要があります。
私が今回取得したのは、運転免許取得というより、運転免許切替えといった方が正確かもしれません。私は日本で運転免許証を取得しているため、中国の運転免許に文字通り書き換えるというような感じになります(もちろん元の日本の運転免許証を預ける必要もないですし、失効することもないです)。中国語では”外籍换证(略して外换)”という制度になります。
ちなみに香港・マカオはジュネーヴ条約に加盟しているため、国際運転免許証があれば運転できます。台湾は条約に加盟していませんが、中国語翻訳を持っているだけで入境後1年運転可能です。台湾で運転できるようにする中国語翻訳の手続きについての詳細はこちらで解説されていますのでご参考まで。
中国大陸での運転免許証切替えには実技試験はありませんが、筆記試験はあります。筆記試験は中国語・日本語から選べますが、私は中国語で受けました。日本語版は問題集が有料(200元程度)で、しかも試験問題の翻訳がそのままBaiduかGoogle翻訳に突っ込んだだけのようなとても変な感じで、間違っていてもそのまま問題そのものを覚えなくてはいけなくなるそうです。というわけで、中国語がある程度できる人は中国語の勉強の意味も含めて中国語で受けることをおすすめします。問題集も模擬試験もWebで無料ですし。
日本人が中国で運転免許証を取得するための条件
日本人が中国で運転免許を取得(切替え)する際には、以下の条件が必要となります。
- 日本で申請時に有効な運転免許証を取得していること。
- 中国のビザ或いは居留許可証と、臨時居住証(境外人员临时住宿登记表)を取得していること。
1.については、切替の場合は必ず必要になります。
※北京在住の日本人の友人からの情報で、日本で運転免許証を持っていなくても外国人が技能を練習して取得する制度もあるということです。こちらは、私はやっていないのでちょっとここでは書けませんが、座学なしで筆記試験があり、その後いきなり実技試験に入るということです。数千元の費用と2ヶ月弱くらいかかったそうです。
2.については、ビザがあり、臨時居住証或いは居留許可証を持っていないと、申請はできません。なお、都市によるようですが、ビザの種類はどれでもOKのようです(先月浙江省金華市でLビザ=旅行ビザでも取得できたという人もいました)。ただ、上海など大都市ではF/Mビザ(業務ビザ)でも取得できないといわれたという情報もあり、場所によって条件が変わるのかもしれません。臨時居住証は、旅行者でもホテルではなく民泊の場合は発行できるようです。
以下の情報や私のFacebookなどに寄せられた情報によれば、90日以上のビザでないと試験の申請ができないようです。
最後の筆記試験以外、全体的に手続きは全て中国語で行われるため、中国語力もある程度必要です。手続きの際に通訳を連れて行くこともできますが、筆記試験の会場に入るときや入った後は全て中国語です。気の利かない通訳だと大変かもしれません。笑
中国の運転免許証を申請するために必要な書類
- パスポート原本
- パスポート中国語翻訳+翻訳公証
- 日本の運転免許証原本
- 日本の運転免許証中国語翻訳+翻訳公証
- 中文声明公証(名前の日本語の漢字と中国語の漢字が異なる場合)
- 机动车驾驶人身体条件证明(自動車運転者身体条件証明)
- 写真+CD-ROM+〇〇省机动车驾驶证数字相片采集回执(〇〇省自動車運転免許証デジタル写真採集受領証)
- 境外人员临时住宿登记表(ボーダー外の人の臨時居住登記表)或いは居留許可証
それぞれ、現在有効なもの、証明書類は発行後3ヶ月以内のものが必要です。
それでは、1つ1つ解説していきます。
- パスポート原本
これは言わずもがなですね、中国では外国人は外出時にも携帯が義務づけられているので、忘れることはないはずですね。 - パスポート中国語翻訳+翻訳公証
中国の翻訳会社で、外国人の運転免許証申請に使えることを確認した上でやってもらいましょう。現在はタオバオ(淘宝网、Taobao)上に業者があるので、最寄りのところを選ぶといいでしょう。原本を送る必要はなく、名前やパスポート番号などの情報が書いてあるページを見開きにして、スマホなどで明瞭な写真を撮って送ればやってくれます。費用も数十元程度。翻訳会社の社名と社印が必要になりますが、外国人の運転免許証申請だと伝えてあれば、格式通りのものを送ってくれるはずです。申請する都市についても連絡して、そこで使えるかどうかの確認もとりましょう(本来は申請する都市の試験場に問い合わせて、どこの翻訳会社でもいいのか確認をとるのが筋ですが)。1日〜2日くらいでやってくれます。プラス郵送の期間も見ておきましょう。急ぎの場合は、受験する場所の翻訳会社の窓口に行けば、忙しくなければほぼその場でやってくれます(かかっても1〜2時間くらい)。
その翻訳を持って、運転免許証を申請する都市の公证处(公証役場)で、公証を発行してもらいましょう。外国人の運転免許証が申請するため、とはっきり伝えて出してもらいましょう。公証の発行は場所にもよると思いますが、最長5営業日ほどかかりました。発行が完了すると、登録していた携帯電話にSMSが入りますので、公证处(公証役場)に取りに行き、現金か銀行カード(銀聯カード)で支払うことで取得できます。なお、私の行った公证处(公証役場)ではWeChat(微信支付)やAlipay(支付宝)などスマホ決済はできませんでしたのでご注意を。費用は1通40元でした。 - 日本の運転免許証原本
これも申請の際には原本が必要です。必ず日本から持ってきておきましょう。 - 日本の運転免許証中国語翻訳+翻訳公証
2.とほぼ同じ要領でやってくれます。翻訳会社には表と裏をそれぞれスマホなどで撮って送ればOK。翻訳会社に一緒にやってもらいましょう(というより、翻訳会社からは一式でやることを逆に提案されるはずです)。
公証も2.と同じ要領です。最長5営業日かかります。費用は2.と同じく1通40元でした。 - 中文声明公証(名前の日本語の漢字と中国語の漢字が異なる場合)
※日本語名の漢字が中国語漢字(繁体字・簡体字)が一致する場合は必要ありません。
これは公证处(公証役場)で取得するものなのですが、ちょっとややこしいです。私の場合、名前に”竜”という文字が入っていますが、この文字は日本国字(日本固有の文字)で、中国の”龍(繁体字)”や”龙(簡体字)”とは異なります。免許証は中国語漢字名で発行されるため、漢字が異なると別人ととられてしまうことがあるということから、中国語漢字での申請が必要となります。そういった場合、便宜的に中国の漢字を申請の際に私の名前として使います、という証明がこちらになります。私は初めて申請に行ったときにこれがなかったため申請の時に突っ返され、また公证处(公証役場)に行って5営業日かかってこの公証を取得する羽目になりました。費用はこれだけなぜか妙に高くて430元、しかもこの公証だけ先払いでした(あとの上の2つは後払い)。公証役場のシステム、謎です。。名前に日本固有文字がある方は、必ずこちらの公証を取得しておきましょう。なお、この公証書へのサインは、中国語のもので行うか、日本漢字と両方を書くようにした方がいいです。なお、中国語繁体字が日本の漢字と共通の場合は、恐らく大丈夫です。繁体字は、公安のパソコンでも入力可能ですからね。 - 机动车驾驶人身体条件证明(自動車運転者身体条件証明)
大きめの病院には大体ある、健康診断センターのようなところで発行してくれます。私の場合は非常に簡単で、非常にいい加減な視力検査と、色盲検査と、握ったり開いたりする手の反応と、あとは簡単な受け答えをやっただけで発行してもらえました。ただ、通訳がいない場合は取得に多少の語学力は必要かもしれません。費用はいくらかかかったと思いますが忘れました。数十元程度かと思います。病院のいい小遣い稼ぎになっている気がします。 - 写真+CD-ROM+〇〇省机动车驾驶证数字相片采集回执(〇〇省自動車運転免許証デジタル写真採集受領証)
中国の運転免許証に使われる写真です。これは、試験会場の外など近いところにありますのでそこに入って、”外籍换证”用です、と伝えて写真を撮ってもらうのがベストです。私の場合試験会場から離れた市内の写真屋で発行してもらったのですが、回执(受領証)のパスポート番号の前に勝手に”F”の字を付けられていたことがわかったため、やり直しになりました(これは運転免許証筆記試験を受ける申請用紙には警察(公安)側がFをつけるのですが、勝手に気を利かせてつけたらしいのです。ただ、勝手に付けられるとパスポートと合わないことになりますので、もし試験場の近くではないところで発行してもらう場合は、絶対それを付けないように言った方がいいと思います)。費用は40元くらいでした。 - 境外人员临时住宿登记表(ボーダー外の人の臨時居住登記表)或いは居留許可証
臨時居住証或いは居留許可証の取得には、中国の居住地が必要となります(賃貸の場合は賃貸契約書、持ち家がある場合は房产证)。その居住地があった上で、居住地の最寄り=管轄の派出所(中国語でも派出所)で出してもらえます。というより、外国人が中国で1日でもホテル以外の場所に泊まったり住む場合、この臨時居住証或いは居留許可証の取得が法律で定められていて、毎回入境後24時間以内に申請しなければならない決まりになっています(実際は緩い運用のところもありますが、厳しいところでは罰金を取ったり、国外退去になる場合もあるので要注意です)。
ちなみに、民泊でも临时住宿登记表を出してもらうことが可能だそうです。中国でも規制が強まりつつある民泊ですが、免許取得のためにはいいかもしれません。ホテルも、恐らく居住証明を出してくれというと出してくれると思いますが、短期のホテル宿泊滞在で申請できるかどうかは保証できません。
なお、私の場合、この境外人员临时住宿登记表に記入している名前がパスポートと同じ日本字(竜)だったため、中国語簡体字に変更して再発行することが必要となり、面倒なことになりました。この境外人员临时住宿登记表の漢字も、発行の際にできれば中国の簡体字に合わせてもらった方がいいでしょう。
中国の運転免許証切り替え申請に必要な費用
試験場の受付で2回に分けてWeChat Pay(微信支付)で支払いました。2枚の紙が出て、それぞれQRコードを読み込んで払う感じです。70+10元で、全部で80元でした。試験としては安いものですし、公共機関がWeChat Payに対応しているのは素晴らしいですね。公証役場では、現金しか使えなかったですが。。笑
いざ、筆記試験へ!筆記試験の対策とは
以上の書類を全て揃えて、各都市の”外籍换证”に対応した公安驾驶证考场(運転免許証試験場)に行き、筆記試験の申請をします。書類がうまく通ると、試験の日を指定されます。私の場合は、3日後を指定されました。都合が悪い場合は、その日より後の日付を指定することもできます。
筆記試験対策はこちら
筆記試験問題は、日本語で受ける場合は資料を渡されるらしいですが、私は中国語で受けたため紙の資料はいっさいなし。さすが中国、ここではペーパーレスを実現しています。窓口で、百度で「驾校一点通」と調べてアクセスし、そこで練習しろ、といわれます(そう書いたぺらっとした紙ももらえます)。その驾校一点通のリンクはこちらです。
中国語の場合は、ここに出ているのと全く同じ問題が出るので、ここで予習すればOKです。合格点は、100点満点中90点以上。
私が受けた時は、模擬問題集には1325問あり、その中から100問が出題され、90点以上とればいいという感じです。結構ひっかけ問題もあり要注意ですが、私は一夜漬けでいけるくらいのものと思いました。日本と違うのは道路標識や速度規制、そして罰則、そして細かいルールです。
道路標識は、踏切の表記などが結構違ったりしますが、基本日本とそれほど変わりません。道路の上に書かれた表記が少し異なるくらいですが、これは覚えるしかないですね。問題に出てくるものはそれほど難しくないかと思います。
速度規制は、高速道路での最高・最低速度が片側2車線と3車線以上で車線毎に決まっていたり、市内と郊外の中心線があるなしで速度制限が違ったりするのでこれは丸覚えです。
罰則は結構覚えづらいので、問題と一緒に覚える感じです。日本と制度が違いすぎるので、間違えてもしょうがないかなというものも多いです。中国の運転免許証は1年で12点あり、12点以上引かれると免停となります。問題で、これは何点減点でしょう、と出た場合、もし選択肢の中に12点があれば必ず12点を選べば正解です(今後変わるかもですが、私の取得時点ではそうでした)。
ルールもちょっと日本と違うのがありまして、中央車線がない道路で、前に歩行者が歩いている場合は、クラクションを鳴らしてこちらの存在を知らせていい、というのが〇だったのには驚きました。日本ではクラクションは山道など人がいない見通しの悪いところでしか、自分の存在を予めまだ見えない対向車などに知らせるため以外には基本鳴らしてはいけないと習っていたもので。。笑
実際そんな感じでノートPCとかスマホでもアクセスできて勉強できるので、トイレに行っている間でも勉強できます。いきなりランダムで出る模擬試験をやって、間違えたものを復習して覚える、というやり方でともかく1325問を一通りやれば(かったるければ1000問くらいでも)、だいたい大丈夫かと思います。その後、2〜3回100問の模擬試験をやって、コンスタントに90点以上とれていれば、間違いなく受かるでしょう。一夜漬けか、2〜3日ちょっとずつ勉強しておけばいいレベルかと思います。
試験会場での受験の手順
さて筆記試験の準備ができたら、指定の日の指定の時間に試験会場に行きます(申請したところと同じ場所)。ただ、その時にはパスポート原本以外は何も持ってはならず、携帯電話やスマートフォンは一切持ち込み禁止され、空港のようなボディチェックを受けます。私の受けた広東省中山市は三線級都市なのにいっぱい人がいて(まー中国はどこにいっても人がたくさんいますが)、ロッカーはすぐいっぱいになるので、空きが出るまで待つということをしなくてはならず、その分試験の時間が遅れます。というわけで、試験が終わるまで荷物を預かっていてくれる同伴者がいた方がいいと思います。
指定された場所に行くと、その時間から一人一人名前を呼ばれて受験用の申請書一式を手渡されます。そして身分証(パスポート)原本の認証を経て受験待ちの部屋に通され、そして試験会場に入るときにボディチェックを受けます。窓口でまた身分証(パスポート)原本で認証をして、受験用申請書一式の写真が入ったページを見せます。すると何番ですよと言われるのでその番号のパソコン(PC)の前に行きます。そしてパソコンで試験を受けます。パソコンいじったことない人とか、マウス操作ができない人とかはここで詰む感じですが、まあ今時そんな人はいないでしょう。。
なお、本ちゃんの試験では、半分くらいまでは4択ではなく2択の合っている・間違っているという問題ばかりで、後半に4択問題になります。これは上記のサイトの模擬試験とはちょっと異なるところ。間違えると1問1問、毎回正解はこれです、よく覚えましょうねという表示が出るので、途中で自分が何点かというのは把握できます。
そして試験が終了し、合格したらあなたは合格、と出ます。もし不合格の場合もたぶんそう表示されるのでしょう(私は一発合格だったので見たことがありません。ちなみに94点でした。まあ受かればOK)。もし不合格になっても、1日に2回受験のチャンスがあり、窓口に戻って再試験を申請することができ、もう一度パソコンの番号を教えてくれるということです。もし2回不合格だった場合は、再度試験の日程を予約し直さなければなりません。試験に落ちまくった場合、臨時居住証や居留許可に書いてある居留期限までに合格しないと再申請が必要となるので注意してください。
合格した場合は、受験申請用紙一式を窓口に提出したらそれで終わりです。次の営業日に同じ試験場に取りに行けば、晴れて中国の運転免許証取得となります!場所によってはその日のうちに出るところもあるようです。
中国の運転免許証の現物はこんな感じです。
試験問題にも出ますが、中国の運転免許証は取得時の最初だけ有効期限が6年(私の場合は2024年12月まで)、そして毎年の未処理点数が12点を超えなければ、次回以降の更新で10年有効となります。
運転免許証上の准驾车型(運転許可車種)の”C1″というのは、日本の普通中型免許に相当します(たぶん)。
まとめ:書類の準備が面倒なのと、時間的に余裕を持って行うこと
というわけで、私も晴れて中国で運転することができるようになりました。
中国の運転免許取得の際には沢山の書類が必要になるので、その準備が面倒なのと、時間的に余裕を持って行わないとあとであれを出せこれを出せ、と言われたときに間に合わないかもしれません。特に公証は時間がかかるので注意してください。
いずれにせよ、あくまでこの記事は参考程度にしていただいて、必ずその時点・その場所での必要書類や条件を確認してから準備するようにしてください。
実際の運転ではできるだけ譲り、果断に、そして流れに乗ること
筆記試験モードが抜けないまま実際運転して路上に出てみると、交通規則をきちんと遵守して運転している人がいかに少ないかを思い知ることになるのですが(笑)、それは日本でも同様かもしれません。
ただ中国では路上にたくさんのカメラが設置されており、それが抑止力になって暴走行為をするような車は多くないです。
割り込みをしたり絶対譲らないというドライバーが桁違いに多かったり、クラクションを鳴らすのに何の抵抗もないというところが日本と大きく違うところでしょうか。。いずれにせよ、中国で運転するときはともかくできるだけこちらは譲ることで事故は避けられます。しかしそれだと一生かかっても移動できないこともあるので、そういう場合は行くべき時には意志をはっきり表示する(=車をビシッと割り込ませるなど。。)ことが重要です。そして一番大事なのは流れに乗る、ということでしょう。
記事は以上です。