iPhoneがスマートフォン業界の中の9割の利益を稼ぎ出し、絶好調のApple。そんなAppleが新たな野望と目標を打ち立てた。それは自らが携帯キャリアになるということだ。これは”全ての人にインターネットを”というAppleの共同創業者・故スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の長年の夢でもあった。Appleはそのジョブズの夢を実現しようと動いている。しかしその実現には多くの困難が待ち受けている。以下は中国のメディア、iFanrの記事より(多少わかりやすく改編してある)。
Appleは既にMVNOキャリアのテストと既存キャリアとの交渉を開始
携帯キャリアになりたがっているAppleは、すぐに他の既存の携帯キャリアの敵になるわけではない。Appleはこの分野においては基地局などの基礎インフラを持っておらず経験もない。そんなわけでまずはMVNOという形式でネットワークを提供することになる。つまり、AppleはAT&TやSprint等のキャリアのネットワーク基地局を利用し、自らユーザ向けに通話料やパケット通信料のセット価格を設定することとなる。The Verge の報道によれば、Appleは米国にて既にこのサービスのテストを開始しており、ヨーロッパのいくつかのキャリアと交渉に入っているという。
実は10年前のジョブズの時代からこの動きは始まっていた
Appleがキャリアになりたがっているというのは実はビッグニュースでも何でもない。2011年のComputerWorld の報道で既に明らかになっているように、10年前の2005年、米国ワイヤレス通信とインターネット協会(CTIA)の前主席John Stantonが当時まだ存命していたスティーブ・ジョブズと、まだこれまで携帯キャリアに開放されていない無線バンド領域上にApple用のワイヤレスネットワークを解放することで、Appleがキャリアを飛び越えて自分独自のネットワークサービスを提供できるように話し合っていたことがわかっている。
去年もAppleはこの関連の動きをしていた。米国と英国のiPad Air 2のセルラー版には1枚のApple SIM(Apple公式サイト参照)が入っており、デバイスをアクティベートした後直接GigSky、T-Mobile、Sprintまたは AT&Tなどのキャリアのネットワークプランを選択することができ、自分でわざわざキャリアや携帯ショップまで行ってSIMカードを買う手間を省くことができた。そして現在のAppleの動きのようにAppleがMVNOのキャリアになったとしたら、これらのネットワークサービスを自らのサービスとして提供できるわけだ。
テック業界企業のMVNO進出はGoogleで既に先例あり
しかしAppleがやりたいことは、既に先にやっているところがある。そう、ライバル企業のGoogleだ。Googleは今年4月にProject Fiを発表した。これこそ正にMVNO+スマートWi-Fiセレクションが可能なワイヤレスネットワークサービスで、SprintとT-MobileのLTEネットワークとWi-Fiホットスポットを利用するものだった。20米ドルの基本プラン(無制限の通話、SMS=ショートメッセージサービス、ホットスポット)及び1GB 10米ドルの全世界統一パケット通信費用とし、ユーザが購買したパケットを使い切らなかった場合は、Project Fiはユーザに未使用分に相当する費用を返金するという親切ぶりだ。
既存携帯キャリアとの交渉は今後の永遠の課題となる
このような先例があるものの、既存キャリアとの商談は今後も永遠に順風満帆にいかないのは自明の理だ。米国では今日に至るまで、iPad Air 2に入っているApple SIMカードではVerizonネットワークを使うことができない。VerizonはAppleとは協力したくないと考えている。なぜなら、VerizonはユーザにApple Storeではなく自社からiPadを買ってもらいたいと考えているからだ。もしあなたがiPad Air 2でVerizonネットワークを使用したかったら、VerizonのオフィシャルショップでiPadを購入しなければならない。またはiPadを購入してからVerizonからSIMカードを買わなければならない。
このような問題は将来的に継続して発生するだろう。既にMVNOが普及している米国や日本はともかく、Appleにとっても世界第二の市場になっている中国ではどうだろうか。実は既に中国で最大手のネットショップの1つ、JingDong(京東)はMVNOを始めているが、まだまだ知名度は低く、使用している人は少ない。もしAppleのMVNOが中国に入ったとしたら、中国三大キャリアの中国移動、中国聯通、中国電信はどのような反応を見せるだろうか。この3社が団結してAppleを追い出そうとするのか、またはAppleに対していかに自社のネットワーク基地が優れているかアピールするか、それともAppleが自社のネットワークを使用していることを喧伝するだろうか?
キャリア側とApple側の双方の利益を確保することが交渉の重点となる
携帯通信キャリアにとっては、Appleが自社のネットワークを借用してくれることは儲けに繋がる。しかしユーザは自社からiPad等のハードウェアを買ってくれなくなり、これまで2年縛りなどで手堅く稼いでいたユーザ数が減少する。しかしもしそれが理由でキャリアがiPhoneやiPadの宣伝に力を入れなくなれば、iPhoneの販売数量はかなり減少し、これはAppleにとってもよくないことだ。世界的にキャリアが大部分のiPhoneやiPadを売ってくれている以上、Appleもキャリアにおんぶに抱っこ状態。他の業界のライバルに対するような強硬な態度に出るわけにはいかないだろう。ましてや、利益の大半を稼ぎ出すiPhoneが売れなくなったらAppleの存亡に関わってくる問題となるのは明らかだ。
キャリアとAppleの利益が同じ方向を向くかどうか、お互いWin-Winの関係になれるかが、Appleとキャリアの商談の重要ポイントとなるだろう。
現在まだiPad Air 2にしか採用されていないApple SIMが、iPhoneに採用される日が来るかもしれない。
記事は以上。
(記事情報元:iFanr)