KGI証券の著名なアナリスト・Ming-Chi Kuo(郭明錤)氏は、Appleは2018年(今年)リリース予定の次期iPhone(iPhone 9?iPhone X Plus等)に搭載されるモデムチップ(ベースバンドチップ)はインテル(Intel)が単独のサプライヤーとなると予測されています。
以前は同アナリストは2018年度のiPhoneではクアルコム(Qualcomm)が70%のベースバンドチップのシェアをとり、その残りがインテルと予測していましたが、完全に逆転した形になります。そしてもしこれが実現したら、これまでのベースバンドモデムチップの覇者だったクアルコムの地位が危うくなり、業界地図が書き換えられてしまう可能性もあります。
Appleとの訴訟を抱えるクアルコム、Appleにとって製品購入は不本意だったのでは
クアルコムは2世代前のiPhone 6sまではベースバンドモデムチップの独占受注を受けていたサプライヤーでしたが、2016年にAppleがクアルコムを特許料を取りすぎとして起訴した後、クアルコムは報復として逆にAppleの製品をアメリカで販売しないよう求める訴訟を起こすなど、2社の関係は緊迫したものになっていました。Appleはそんな訴訟を抱える相手の製品を購入するのは不本意だったに違いありません。
技術的にインテルがクアルコムに追いついた?
ベースバンドモデムチップの技術的には、これまではインテルよりもクアルコムの方がリードしていたといわれています。実際、iPhone 7、そしてiPhone Xと8シリーズにはインテルのモデムチップも搭載されていますが、クアルコムのモデムチップはインテルの仕様に合わせてグレードダウンしているという情報もありました。
Appleの次期iPhoneのベースバンドモデムチップへの要求は、CDMA2000のサポートと、デュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)規格ということですが、インテルはその基準をクリアし、更に市場を独占するためにより競争的な価格を出した可能性があります。
iPhone 7の圏外問題はクアルコムのチップが原因、これもクアルコムを避ける要因の一つでは?
とはいえ、Appleとしては訴訟を抱えた相手の製品を買い続けることは裁判にも不利ですし、会社の倫理的にもよくないと考えているのは間違いないでしょう。そして、他のメディアでは指摘されていませんが、一部のiPhone 7が圏外になってしまうことによってAppleが無償修理プログラムを発動せざるを得なくなった問題は、クアルコムのモデムチップにおいて、ハードウェアレベルで給電がショートしてしまうことが原因、と中国のiPhone修理業者GeekBarから指摘されており、このこともAppleがクアルコムのモデムチップの採用を避けた要因の1つになったのではないかと推測されます(当ブログ独自見解ですが)。
インテルはiPhone 7とiPhone 8/iPhone Xで経験を積んだのかも
次期iPhoneには更に5G通信規格の要求があるともいわれており、それをインテルのチップでも問題なく処理できるのかがキーになりますが、AppleがiPhone 7シリーズ/8シリーズ/Xでインテルのチップを採用し、インテルはそこである程度経験を積み重ねることで、技術的な成長を遂げ、製造面での問題を解決してきた可能性があります。その意味では、AppleがiPhone 7の代でインテルの採用を決めたのは賢明な判断だったといえるかもしれません。
記事は以上です。
(記事情報元:Apple Insider)