米国Apple(アップル)の引き抜きが止まらない。今度はその触手がライバルの韓国SAMSUNG(サムスン)にまで伸びたようだ。
最近Appleは、SAMSUNGからチップとバッテリーの専門家に対し、高い給与と競争力のある福利厚生をちらつかせてヘッドハンティングし、本社のあるカリフォルニアに導き入れているという。韓国のメディアによれば、名前を明かしたくないというSAMSUNG内部の人物からの情報として、AppleはSAMSUNGから引き抜こうとしている人に対しては独立したオフィスを与え、現在与えられている給与よりも高い報酬を約束するという。Appleのバッテリー専門家への需要が高まっているのは、Appleが現在開発していると噂されているEV(電気自動車)”Titan”プロジェクトにも合致する。
SAMSUNGは先週月曜日のレポートで、社内で働いているスタッフの多くが英語を話せるため、米国でも言語の障碍なく仕事ができることを発表したばかりだった。
Appleは最近引き抜き問題が続いている
Appleは既にA123システムズからバッテリーの専門家を根こそぎ引き抜いていることが、A123システムズからAppleが不当な条件で社員の引き抜きを行っていると訴えられたことから判明している。今回のSAMSUNGからの引き抜きも、最近Appleが繰り広げているヘッドハンティング活動のうちの1つと見てもいいのかもしれない。
SAMSUNGとAppleの複雑な関係
ただ、今回のAppleの動きはSAMSUNGとの関係に影響を与える可能性がある。
SAMSUNGとAppleは激しい闘いを繰り広げているライバルでありながら、一方では部品の供給関係では密接なパートナーでもあるという複雑な関係でもある。噂では、SAMSUNGはAppleの次世代iPhoneとiPadに搭載予定のA9チップ(14nmプロセス採用)の受注を取ったとされている。しかしチップの専門家をAppleが先に引き抜いてしまったら、SAMSUNGで製造され、Appleに納品されるチップの品質に影響を与えたりしないだろうか。消費者としては心配なところだ。
画蛇添足
Appleはチップの供給をSAMSUNGに頼ることなく進めるために、引き抜きを行っている可能性もある。その方向性が間違っているとはいわないし、競争力のある会社が魅力的な条件でより才能のある人材を手に入れるということも市場原理からすれば何もおかしいことではない。
しかしA123システムズからかなり強引な手段で技術者を根こそぎ引き抜くなど、最近のAppleは随分と手荒い印象を受ける。Appleは金がうなるほど余っているはずなのでM&Aをすればよいと思うのだが、A123システムズには拒否されたのだろうか。いずれにせよ、あまり世間に悪い印象を持たれるような引き抜きをやっていると、風評によって株主にとってもあまりよくない結果をもたらすのではないかと思う。
Appleは今やもう挑戦する側ではなく、挑戦を受ける側に立っているのだから。
記事は以上。
(出典元:9to5Mac)