日本でも有名な米国のフライドチキンの最大のチェーン、ケンタッキーフライドチキン(KFC)が水曜日(米国時間では本日)、米国内店舗でのApple Pay(Appleによるモバイル決済サービス)のサポートを発表した。2015年10月にはAppleからKFCで使用可能になるという発表があってから半年以上が経ってようやくサポートということになる。ずいぶん時間がかかった、その理由とは。。
米国内のKFC店舗がApple Payでの支払受付開始、ただし今夏までは一部の店舗のみ
ただし、現段階では全ての米国内の店舗でApple Payが使えるようになるわけではなく、使えるのは一部の店舗に限られるようだ。KFCによれば最終的には今年夏までには全店舗で使えるようになるようだ。そうなった場合は他の飲食店と同様、KFCの”ドライブスルー”でもApple Payが使えるようになるだろう。
ちなみに今回のKFCの発表はKFC全体の受付可能なモバイル決済サービスの拡張の一環で、Apple Payだけではなく、Samsung Payもサポートするという。つまるところ、NFC決済に対応する機械を段階的に導入する、という意味なのだろう。
米国でもまだApple Payは完全に普及していない、スタバも未対応
Apple Payは米国内の銀行には非常に早い段階で受け入れられ、金融機関に普及した。その後、小売商が後からApple Payをサポートし始めるという形となった。ちなみにKFCと同時にアメリカでApple Payのサポートを発表したのはChilli’sとスターバックス(Starbucks)だったが、現在でもまだ互換性がなく使うことができない。後者はAppleと非常に親密なビジネス関係であるにも関わらず、だ。
中国のKFCはアメリカよりも速くApple Payをサポート
ちなみに中国でのApple Payのサービスは今年2月18日から始まっているが、スタート当時から中国のKFC(肯德基)ではApple Payをサポートしていた。KFCはお膝元で本来は本腰を入れるべきアメリカ合衆国本国店舗でのApple Payのサポートが、中国の店舗よりも3ヶ月以上遅れるという事態になった。
中国のKFCがなぜ中国のApple Payサービス提供開始と同時にサポートできたかというと、中国のApple Payがシステムとして使っているユニオンペイ(銀聯、Union Pay)のQuick Pass(閃付)対応のPOS端末が既に整っていたため、端末をアップグレードせずに済んだからと思われる。
Apple Payの普及の足かせとなっている障害とは
Apple Payの普及の足かせとなっているのは、上記の通り店舗のPOS機が必ずiPhoneやApple WatchのNFCチップに対応していなければならないという、店舗にとってのハードウェアの制約とコストという障害だろう。全国でチェーン展開しているような小売商にとって、例え政府によるセキュリティ重視への政策変更による補助があったとしても、全国レベルでの設備や端末のアップデートは非常にコストがかかるため及び腰になるのは想像に難くない。
なお本日、カナダのTD、Scotiabank、Bank of Montrealの3つの銀行がApple Payのサポートを発表し、カナダ5大銀行が全てApple Payをサポートしたことになる。
Apple Payは様々な困難を乗り越えつつ、着実に歩みを進めているともいえる。
米国外でのApple Payの普及はもっと遅い、その原因と課題とは
Apple Payの米国外の普及に関する課題を本日当ブログ記事で分析したばかりだが、米国内でもまだ完全に普及したわけでもないことを付け加える必要がありそうだ。
Appleが提供しているモバイル決済サービス【Apple Pay】は世界的に使用範囲が拡大しつつある。カナダの5大銀行もApple Payのサポートを発表したのは記憶に新しい。ただ、ロイター(Reuters)社の報道によれば、Apple PayはAppleファンからのウケはいいものの、一般消費者向けに拡がっているとはいいがたい状況のようだ。 Apple Payが米国外で技術的問題発生などで苦戦、日本含む海外への普及へ向けた課題... - 小龍茶館 |
日本でも名前が知られている最大のスーパーマーケットであるウォルマート(Walmart)も、Apple Payをサポートせず、自社独自のモバイル決済サービス「Walmart Pay」を始めており、Apple Payのライバルも増えつつある。
Apple Insiderの報道によれば、大手小売商のウォルマート(Walmart)が昨日、アメリカのアーカンソー州とテキサス州の590店舗で自社のモバイル決済サービス"Walmart Pay"での支払い受付を開始すると発表した。 Apple Payに対抗!ウォルマートが590店舗以上で独自の決済方法”Walmart Pay”を採用開始 - 小龍茶館 |
どうしてもApple Payじゃないとダメ!とならないのがApple Payの弱さか
確かにApple Payのセキュリティやプライバシー保護は現在のところどんなモバイル決済サービスよりも優れている(逆に利点はそれしかないともいえる)。しかしそれがサービスを利用する側の金融機関・店舗・ユーザ全てに受け入れられるための必須条件かというと話は別だ。
「どうしてもApple製品の”iPhone”や”Mac”を使わなくてはならない」という理由はいくらでも見つけられるが、「どうしても”Apple Pay”で支払わなくてはならない」という理由がどこにも見つからないのが、Apple Payの最大の弱点で、Apple Payが普及しない最大の原因なのかもしれない。他のサービスの方が導入コストが安くて利便性が高い場合が多く、セキュリティよりもコストや利便性を求めてしまうのが人間の心理だからだろう。
記事は以上。
(記事情報元:Apple Insider)