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Appleの最も成功した製品はジョニー・アイブ?The New Yorkerの長文インタビュー記事の要点まとめ

Jony_Ive-Apple_Watch

Appleのトップデザイナーで、iMac、iPhone、そしてiOS7のUIやApple Watchのデザインを担当したジョナサン・アイブ(Jonathan Ive、以下愛称のジョニー・アイブ Jony Ive)。普段新製品発表イベントなどでもあまり表に出てこない彼は、一体どんな人物なのだろうか。

そんな彼の人柄に迫った、The New Yorkerに掲載された、イアン・パーカー(Ian Parker)によるジョニー・アイブ(Jony Ive)に対するインタビュー記事The Shape of Things to Come : How an industrial designer became Apple’s greatest product.は非常に秀逸なのだが、同時に非常に長い英文で、現在のところまだ全文の日本語訳を見たことがない。

一部のApple関連ブログなどがその内容の一部を細切れに紹介しているだけで、全体像が伝わってこない。そこで、とある中国のブログ潜云思绪-hidecloud’s thinkingが記事全文の中から新鮮な印象を受けた部分を中国語で要約してくれているので、中国語から日本語に翻訳してご紹介したい。

以下を読めば、ジョニー・アイブがデザインというものをどのように捉えているか、またどのようにデザインをしているかが垣間見えるだろう。

Jonathan on Apple

1. 会社の中で発言力が最も強い2人のうちの1人として、アイブは全社の未来が彼の決断と品位によって決定されることに慣れていなかった。スティーブ・ジョブス(Steve Jobs)の寡婦となったローリーン・パウエル・ジョブズとジョニー・アイブは家族ぐるみの付き合いで、ローリーンは「ジョニーは芸術家肌の純正なアーティストね。彼はアーティストはそういったことの責任を追うべきではないと思っているようね」と語っている。

2. 毎回新製品発表イベントでは白い部屋の中に隠れてビデオ撮影をされていることについて、「私はとても恥ずかしがり屋で、実際の仕事に集中していたいのです。壇上に立って演説するのと比べたら、そうした方が私がもっと何を気にしているかということを明らかに皆さんにお伝えすることができるのです」とアイブは語っている。文中では更に、白い背景の動画は、アイブが主導するデザインアトリエの構想を使って撮影をしたものだということに触れている。

3. 1997年にジョブズがAppleに戻ってきてトップに返り咲いた時、アイブは会社を辞めようと考えた。またジョブズも、ThinkpadをデザインしたRichard Sapperを連れてきてデザインチームを任せようとしていたのだ。しかしRichardはIBMのような大企業を離れて当時のAppleのような”小企業”に移ることをもったいないと考えた。その後ジョブズはAppleの初期のデザイナーのHartmut Esslingerと連絡をとった時、Esslingerは「Appleの現在のデザインチームはアイブも含めて非常に才能にあふれているが、彼らは正しい方向に導かれていないだけだ」と指摘した。

ということでジョブズはデザインアトリエに視察に行ったところ、アトリエに置いてある各種のデザインやプロトタイプは非常に優れていたのだが、デザインチームがうまくそれらのデザインを会社の上下に宣伝したりプッシュすることができていなかったことに気がついた。そしてアイブとの話し合いの結果、ジョブズは彼と一緒にやっていこうという自信を深め、その時からあのiMacのデザインが始まったという。

アイブはジョブズの関係について、お互い様の関係だったとまとめている。「私はいい直感を持っているのですが、それを伝えるのが特別下手でした。がっかりすることに、あれから長い年月がたっても私はまだそれが下手なのです。そのため、ジョブズが亡くなった後、私が仕事をするのが更に難しくなっています」。ジョブズの葬式で、アイブはジョブズのことを「私の最も近くて最も忠実な友達」と表現している。

4. アイブも時には心にもないことを言うことがあった。1997年(そう、つまりトップの入れ替えがあったあの年だ)に彼は、「ギル・アメリオ(Gilbert Amelio、当時のCEO)は史上最も工業デザインチームをサポートしたCEOです。デザイナーとして、Appleで仕事をする以上に興奮するようなところは今は他にないです」と発言している。当時アメリオはアイブがデザインしたiMacや類似のデザインに全く関心を示さなかったにも関わらず、だ。

5. iMacが大当たりしたあと、アイブとジョブズの関係は更によくなった。彼らは一緒にランチを食べ、一緒に旅行に行った。ある時イギリスに行った時、彼らは一緒にチャールズ皇太子と会見した。しかし社内の一部の人はアイブのこの特権に憤りを覚えていたという。彼がジョブズの関心を集め過ぎだと感じたのだ。しかしボブ・マンスフィールド(Bob Mansfield、当時のハードウェア担当上級副社長)はアイブが非常によくやっていると評価していた。なぜなら全ての人が彼のようにボスとここまで関係がよくなれるとは限らず、また素晴らしい成果を残せるとは限らないからだ。

6. アイブの社内での影響力は、ジョブズに気に入られていたことによって与えられていたが、それだけではなかった。iMacの後、彼は社内の上下と人と更に緊密な関係を築いたからだ。デザインからエンジニアリング、そして製造まで、デザインチームは貢献をした。2007年にiPhoneが発表されるまでに、アイブは既にApple社内の核心ともいえる人物となっていた。

7. Appleは当初、アイブのApple Watchを3つのグレードに分けるというアイデアに不安を示していた。つまりAppleは全ての人のために製品を製造したいわけで、金持ちのためだけのものにしたいわけではなかったということだ。社内での疑問の声は多かったが、アイブは最終的にその議論に勝った。その後Appleはファッション業界やラグジュアリーブランドからトップを引き抜いて同社に引き入れた。Apple Watchのこの出来事は、これまでのアイブの仕事の仕方と明らかに違っていた。なぜならAppleにはもうジョブズはおらず、彼は一人で二人のポジションを担当しなければならなくなったからだ。そして彼も確かに、ジョブズがいなくなってから、彼がどのように動けるかを試したかったようだ。

Jonathan on design

1. 毎回新製品発表の時に、アイブは以下のような感想を覚えるという。
新製品の成長をずっと見守り続けていると、その製品が自分のもののように思えてきます。しかし(新製品発表と共に)突然、それは自分のものではなくなり、全世界の全ての人のものとなります。精神の創始という言葉で形容するとちょっと行き過ぎかもしれないですが、やはりそれらの瞬間というのは私の人生の中で辛く苦しい思い出です」。

2. アイブがトップを務めるデザインアトリエには三大の巨大なマシニングセンタ(CNC)がある。最初にこのアトリエを設計する時に、彼は必ずマシニングセンタを導入することを要求した。たとえそれらがノイズや埃を発生させたとしても。「マシニングセンタは本当の”モノ”を作り出すことができます。そしてそれこそが正に我々のチームがやりたいことなんです」。マシニングセンタがあるおかげでアトリエはまるで工場の作業場のようだが、アイブとしてはしょうもない工業デザインは往々にして材料がいったいどのように製品になるのかを知らないことで、盲滅法にデザインすることによって生み出されると考えているのだ。

3. デザイナーの人材構成を更に強力にするために、アイブはドイツの音響デザイナーHugo Verweijを雇用した。iOS7で使われている新しい着信音は彼によるものだ。新しい着信音とiOS7の新しいIデザインのマッチングによって、まるでガラスのような質感が生まれたのだ。

4. アイブは部門や班にわかれた分断されたデザインを好まず、また違いを出すことだけに気を取られるのも好きではなく、また違いを出した後でそれはもっとよいデザインなのかということを考えないことを嫌うという。例えば韓国の自動車メーカーヒュンダイ(HYUNDAI、現代)が、ニューモデルのためにニューモデルを作っているように。

5. アイブはAppleの新社屋(別名宇宙船)のデザインにも多く関わっており、意見を出すだけでなく、デザイナーを連れてきて一緒に多くの建築モデルを作ったという。彼は三菱エレベーターのコントロールパネルに非常に不満に持っており、サプライヤーに彼がデザインしたものに強引に変えさせたという。この新しい社屋は彼にとってみればAppleの未来そのものを意味し、同時に彼にこれがジョブズが熱中して打ち込んだことの1つであるが、当のジョブズはもう二度とこの新社屋を見ることができないことを思い起こさせるという。

6. Apple Watchの形がなぜ円形ではないのかという話題になった時、アイブはこう言った。「大部分の機能、例えば連絡先やToDoなどは表形式で表示をしなければならないのですが、もしディスプレイが円形だったら全然お話にならないでしょう」

7. アイブはジョブズと自宅で長い時間をかけて各種デバイスの”角”をいかにデザインするかについて討論をした。最終的に二人が共に至った結論は、Josef Frankというデザイナーが唱えたこのような意見だった「鋭角はいらない:人類は柔らかい、形状もそうあるべきだ。」

8. Appleはこの地球上で最も価値の高い会社になり、同社のどんな新製品も数千万ドル級の売上になっている。しかしアイブはこのプレッシャーをデザインチームに伝えることを好んでいない。彼はそれぞれのデザイナーの更なるプレッシャーは自ずから出てくるもので、つまりAppleの製品はそのジャンルでの最先端を行っていること、またイノベーターであるということだと考えている。

9. アイブはGoogle Glass(グーグル・グラス)はひどいものだと考えている。なぜならこのデバイスはユーザーを煩わせる性質が非常に強く、理想的なテクノロジーというのはバックグラウンドで動くもので、普段はユーザを煩わせることはないものだからだ。また、Google Glassは人と人との間に障壁を作るが、腕時計ならそれはないとしている。

10. アイブはとあるライバル企業についてこう評価している。「彼らの価値観は、ユーザが望むものを作る、ユーザがこの色が欲しいと言ったらその色を作るというものです。私はそれがデザインを尊重していないと感じるのです」

Jonathan on himself

1. ジョブズが亡くなった後、アイブはあの有名な飛行機、Gulfstream GVのデザインをした。彼は同時に自動車が大好きで、いつも乗っているのはBentley Mulsanneで、他にもAston Martin DB4を所有している。
毎年夏には、彼はイギリス南部のクラシックカーレースに参加する。そこでは、「一人の車がもう一人の風景となる」という。

10年前に初めて2ドアのベントレーを購入した時、彼は心に葛藤があったという。クラシックな雰囲気を持った大型のベントレーが非常に好きなアイブだったが、他人は彼がそれを運転していることが虚栄心によるものだと見られないかと心配だったのだ。何回か迷った挙句、最終的にその心配そのものが虚栄心なのだと気が付き、購入を決めたのだという。

車に関しては、アイブと同じくAppleの上級副社長のジェフ・ウィリアムズ(Jeff Williams)が運転しているのがトヨタのカムリ(Camry)であることについて、アイブの評価は「Oh, God.」。

2. 文中でアイブとジョブズの関係は親子のようなものだったということだが、現CEOのティム・クック(Tim Cook)との間柄はまるでお互いを尊敬しあっている義兄弟のようなものだという。クックがゲイであることをカミングアウトした後、アイブは彼のそのやり方を支持し、クックはそれを非常に暖かみを感じたという。

3. アイブの友人は各業界にまたがっている。J.J. Abrams、Paul Smith、Chris Martin(Coldplayのバンドメンバー)。そのうちJ.J. Abramsが新しい「スターウォーズ:フォースの覚醒」の撮影をしている時に、アイブが新しいライトセイバーについて、「私はもしライトセイバーの縁が丸っこくなくて、もうちょっとギザギザしてもっと原始的だったら、明らかに脅威に感じるのではないかと思う」という意見を出したところ、J.J.はその意見をとりいれた

4. ある時ジョブズがまたもや猛り狂って人を罵った時に、アイブは自分の部下のデザイナーのために弁解をした。ジョブズはアイブに向かって「お前は何でいつも曖昧な言葉を使うのだ?お前が彼のために弁解しているのは、彼を気遣ってのことじゃない!お前が誰もがお前のことを好きだと自負しているからじゃないのか!」と言い放ったという。アイブは当時は非常に憤ったが、後で考えてみると「にわかに他の人全部に自分を気に入ってもらおうとするなんてことは、本当に面目ないことでした。そういうわけで、私ははっきりした、正確な反論ができなかったのです。ジョブズがそのように言ったことは正しかったのです。彼の本意は私を傷つけたいと思っていたものではありません」。しかしイアンが取材中にアイブは今も人に対して強く出ることができず、同僚に与える反応は依然としてちょっと曖昧で、他人のメンツのことまで考慮していることを発見している。これはジョブズがいつも身体障害者用の駐車スペースにいつも車を止めていたが、アイブがそんなことをすることは絶対に想像できない。。アイブは本当に”いい人”なのだ

5. アイブには、早めにリタイアしてラグジュアリー製品のデザインをしたいと考えていた時期があり、またそれは彼がずっとやりたいことだったという。しかしiPhoneのあまりにも大きな成功によって、またジョブズの死去によって、彼の計画は乱されてしまった。彼はもともとリタイアした後に使おうと思って買っていた海の家を売却せざるを得なくなった。この情報について、イアンはクックに面白い問題を投げかけている。「Apple WatchとiOSのUIのデザインをアイブに担当させたことは、会社にとってアイブへの一種の補償だったということでしょうか?」クックの答えはこうだった。「私個人としてはそんなことを考えたことは全くありません。アイブは会社を愛していて、製品にも非常にパッションを感じています。私は彼のモチベーションは、彼のもっといい製品を追求したいという欲求から来ているのではないかと思います」

6. 3週間のバケーションの前に、彼はイアンにこの1年間がAppleに入った後最も苦しい1年だったと打ち明けた。気苦労のため、彼は肺炎になってしまったという。マーク・ニューソン(Marc Newson、アイブと親交があった著名なデザイナー)がAppleのデザインチームに入った後、彼は本当にリタイア可能かを考えたという。
ジョブズの妻のローリーン・パウエル・ジョブズはこう言っている「夫とアイブがこれまでしてきた全てのことは、この世でも本当にごく少ない人達しかやるチャンスがないものです。でも、お金もかかると思いますけどね

画蛇添足

上記はあくまでこのブログ著者による目に新鮮に映った部分のみの紹介で、実際はもっと多くの、エキサイティングな内容がThe New Yokerの記事原文には書かれている。英語のわかる方はぜひ原文をご覧になることをおすすめしたい。

ただ、上記を読むだけでもアイブの人柄が伝わってくるような気がする。

記事は以上。

(出典元:潜云思绪-hidecloud’s thinking

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