もし今年Appleが噂の腕時計型ウェアラブルデバイス”iWatch”を発売したとしても、
驚くべきことではないのかもしれない。
というのも、iWatchは実は初めてAppleが開発した腕時計型通信機器ではないからだ。
既に伝説的となっているAppleの元デザイナー、
Hartmut Esslingerが最近出版したAppleのデザイン史を振り返る本を見れば、
Appleが既にかなり早期に腕時計型デバイスをテストしていたことがわかるのだ。
上の写真は、上記Esslingerによる「Keep It Simple: The Early Design Years of Apple」からのものだ。
腕につけるデバイスの上に小型のキーボードが搭載されており、
これと無線ヘッドセットデバイスと一緒に動くものとされている。
この小型のキーボードには全部で12個のキーがあり、
10個の数字以外にはリターンキー(Enterキー)とシャープキー(#キー)がある。
ヘッドセットデバイスも非常にシンプルなデザインで、マイクを搭載しているという。
実用性は別として、なかなか奇抜かつシンプルなデザインではないだろうか。
また彼の書籍の中では初期Appleで彼がデザインして実現しなかった面白いコンセプトデザイン写真が沢山登場する。
例えば上から2段目の左と真ん中のLisaの原形などは、
Lisaとディスプレイ、電話とプリンタが全て1つのワークステーションのように一体となって繋がっていて、
非常に大きいのだが、折りたたんで箱のようにすることができたりする。
上記の写真のデザインは全て当時の”Snow White(白雪姫)”というデザイン言語によって作られており、
このデザイン言語はEsslingerが1984年に、
当時AppleコンピュータのCEOだった故Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)のお得意の激励と発奮作用によって提出させられたものだ。
この”Snow White”デザイン言語は当時実際にリリースされたAppleの製品シリーズの中で用いられている。
例えばApple IIcなど。
しかし1990年のMacintosh IIfxリリース後、Appleは少しずつこのデザイン言語を淘汰させていった。
Esslinger自身は1982年に独自の契約でもってAppleに入社したが、
スティーブ・ジョブズがジョン・スカリー(John Sculley)にAppleを終われて以来、
彼もAppleを辞職し、ジョブズの後を追うようにNeXT社に入社している。
しかしジョブズが1997年にAppleに戻ってからは、
彼は二度とAppleに戻ることはなかった。
Apple初期の独特のシンプルで美しいデザインはHartmut Esslingerの功績が大きく、
その後のAppleのデザインの基本理念にも活かされているような気がする。
さて、現在のAppleのデザインを担うのはJony Ive(ジョニー・アイブ)だ。
iWatchがいったいどのようなデザインになるか、非常に楽しみではないか。
なお、上で紹介したHartmut Esslingerの本「Keep It Simple: The Early Design Years of Apple」はAmazonで買うことができる。
Appleファンを名乗るなら必携の書と言えるのではないだろうか。
記事は以上。