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TSMC、2024年に2nmプロセス採用チップの量産を開始可能に。他社との差がますます開く

TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company、台積電)は、2nmプロセスの研究開発において、また大きな進歩を遂げたことがわかりました。サプライチェーンによると、3nmおよび5nmのフィン型電界効果トランジスタ(FinFET)アーキテクチャとは異なり、TSMCの2nmは新しいマルチブリッジチャネル電界効果トランジスタ(MBCFET)アーキテクチャを採用しているということです。

TSMCの研究開発の進歩は、業界他社をはるかに上回っています。この2nmプロセスの研究開発の進捗について、TSMCの幹部は台湾のメディアに対し次のように語っています。

「2023年下半期のリスクトライアル生産の歩留まりは90%に達し、我々は楽観的観測を持っています。将来的にAppleやHuidaなどの主要メーカーからの大量注文を引き続き獲得するのに役立つでしょう。」 さらに、大量生産が2024年に開始されることが指摘されました。

TSMCは、開発の実現可能な道を見つけるために、昨年2nmプロジェクトのR&Dチームを設立しました。コスト、機器の互換性、技術の成熟度とパフォーマンス、およびその他の条件を考慮して、2nmはサラウンドゲート(GAA)プロセスに基づくMBCFETを採用しています。この新しいアーキテクチャは、FinFETプロセスの収縮によって引き起こされる電流制御リークの物理的限界を解決したことになります。

極紫外線(EUV)マイクロ開発技術の強化により、TSMCが長年にわたって開発したナノシートスタッキングの主要技術がより成熟し、歩留まりが向上したことで、第三者だけではなくTSMC自身の予測よりも更にスムーズに2nmプロセスの研究開発は進行しているといえそうです。

TSMCの魏哲家(Wei Zhejia、C.C. Wei)社長は、数日前の玉山県科学技術協会での特別ディナーで、TSMCのプロセスが進歩するたびに、顧客の製品の速度と効率が30%から40%向上し、消費電力を20%から30%減少させることに貢献していることを語っています。

今年4月に、Patently Appleでは「TSMCはすでに2024年の2nmプロセッサに取り組んでいるが、実際には2nmを更に超える微細ノードの探索的研究を開始した」というタイトルの記事を出しています。

TSMCがムーアの法則の開発を継続すると発表した台湾からの本日のレポートによれば、将来的には1nm、そして1nmよりも更に微細なプロセスに進んでいく可能性が大幅に高まり、世界ビッグ3と呼ばれているTSMCのライバルの韓国サムスン(Samsung)や米インテル(Intel)とのギャップがさらに拡大することは間違いありません。特にサムスンは現在・将来的な開発においても、TSMCに全ての面で遅れをとっていることが指摘されています。韓国が日本との貿易摩擦により、日本が韓国に対しいくつかの品目に輸出規制をかけ、そのため韓国が重要な原材料を調達できなくなっていることも、その遅れに拍車をかけているのではないでしょうか。

2020年台湾国際半導体展示会(SEMICON TAIWAN)が今週の水曜日(23日)に開催されます。業界関係者によると、半導体業界の中でも最も動向が注目されるTSMCの劉徳音(Liu Deyin、Mark Liu)会長は、TSMCの高度なプロセス研究開発(R&D)および人工知能(AI)、そして5Gに関連するトピックに焦点を当てた基調講演を行う予定とのことです。

将来の3nm、2nm、さらには1nmプロセッサを活用するTSMCの主要顧客には、Apple、Huida、Qualcomm、Supermicroなどがあります。なおHUAWEIは既にTSMCの販売先顧客のリストから外れており、今後チップの開発に関しては他社に遅れをとるのは必至で、スマートフォンの開発を断念せざるを得ない状況に陥っているといわれています。

ちなみに既に発表済のiPad Air 4や、来月には発表されるとみられる次世代iPhoneに搭載されるA14シリーズチップは世界初の5nmプロセスで製造された商業化されたチップで、100%TSMC製です。Appleは今後もその販売力にものをいわせて、TSMCとAシリーズチップの製造に関して継続的に独占契約を結ぶと共に(というより地球上どこを探しても他に製造できるところがないのも事実ですが)、段階的微細化プロセスの量産化が成功した暁には、世界初で搭載する契約を今後も続けていくものと思われます。AppleはiPhone/iPadだけではなく、今後はMacにもTSMC製のAppleシリコンを採用していく予定です。少なくとも今後数年は、他社の追随を許さない高性能なデバイスをいち早く販売することができ、その業績は恐らく盤石となるでしょう。

ただ、SoCなどのメインチップの処理速度や消費電力がアップしても、その他の部品の進化がないと他がボトルネックになることが、全体的なパフォーマンスの向上や販売時期の足かせになるかもしれません。

記事は以上です。

(記事情報元:Patently Apple

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