2024年9月10日未明から公開されたApple新製品発表イベント動画で発表された、新型iPhone「iPhone 16」シリーズ。
Appleのイベント動画や公式サイト、更に多くの他のメディアでスペックなどは紹介されているので、当ブログの読者層が最も気にしていると思われるiPhone 16シリーズ4機種(iPhone 16/iPhone 16Plus/iPhone 16 Pro/iPhone 16 Pro Max)の中国本土/香港版物理デュアルSIM版の詳細仕様調査と日本版との価格比較をしてみたいと思います。
なお、iPhone XS/XS Max/XR時代から、iPhoneで物理デュアルSIM版(DSDS版)が出ているのは世界広しといえども中国本土(中国大陸)版/香港版/マカオ版のみです。現在私が使っているのもiPhone 12 Pro Max 中国本土版物理デュアルSIM版デュアル待受版(物理DSDS版)のため、当ブログならではのiPhone 2024年新モデル「iPhone 16」シリーズの中国本土/香港版物理DSDS対応特集をします。恐らく、これに関しては他のどこよりも詳しいのではないかと思います。少々長くなりますが、お付き合いください。
iPhone 16シリーズの物理デュアルSIM対応版とは
まず、物理デュアルSIMが実現するのは今回発表されたiPhone 16シリーズ全4機種全てとなります。iPhoneの歴史として、物理デュアルSIMには2018年モデルのiPhone XS Max/iPhone XR、及び2019年モデルのiPhone 11 Pro、2020年のiPhone 12シリーズ(iPhone 12 mini以外)以来、2021年のiPhone 13シリーズ(iPhone 13 mini以外)と2022年のiPhone 14シリーズ全機種、2023年のiPhone 15シリーズ全機種に引き続き対応したことになります。
そしてiPhone 16の物理デュアルSIM版について、対応国は「中国」とされています。ただ、単に「中国」といっても意味は広く、例えば字面通りであれば中華人民共和国と中華民国(台湾)の2つの意味があります。
また、中華人民共和国にも、特別行政区として香港とマカオがあり、iPhoneの広い意味での「中国版」には。。
- 中国本土(大陸・内地)版
- 香港(中華人民共和国香港特別行政区)版
- マカオ(中華人民共和国澳門特別行政区)版
- 台湾(中華民国)版
の4つのバージョンがあるといえます。もちろん公式ページも、その4つにわかれています。
今回物理デュアルSIMが実現するのは、中国本土(大陸・内地)版及び香港・マカオ版のみです。つまり、台湾版は物理デュアルSIM適用外となりますので記事対象外です。ちなみに香港版とマカオ版は詳細モデル番号の末尾が異なるだけで、内容は同じなので以降マカオ版は割愛させていただきます(価格に違いはあります)。
そして世界でも日本版と韓国版だけ、サイレントモードにしてもカメラのシャッター音が出ますが、中国本土(大陸・内地)版及び香港・マカオ版はサイレントモードにするとシャッター音が出ません。それが日本版と韓国を除くその他の国のバージョンのSIM以外の大きな違いといえるでしょう。
中国本土版/香港(&マカオ)版/日本版のSIMカード対応状況一覧表
中国本土版/香港(&マカオ)版/日本版の、iPhone 15/iPhone 15 Plus/iPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Maxの物理デュアルSIMデュアル待受(物理DSDS)のスペック及び日本/台湾版は、Apple公式サイトのそれぞれのページの情報を整理をすると、以下の一覧表の通りとなります。
機種名 | 中国本土版 | 香港版/マカオ版 | 日本・台湾版 |
iPhone 16 | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 16 Plus | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 16 Pro | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 16 Pro Max | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
香港版は大陸版より安い。仕様の違いは?
中国の増値税(付加価値税、VAT)が乗らない香港版は中国本土版に比べて価格が安いのが特徴です。
iPhone 16シリーズの香港版が中国本土版と決定的に違う点は、台湾の国旗(中華民国旗)の表示ができること、衛星通信機能とFaceTime Audioが使えることという3点です。
SIMフリー
そして中国本土版及び香港(&マカオ版)は基本的にSIMフリーです。つまり、他国に持ち出しても、他国のどのSIMでも基本的には使えることになります。また、日本のキャリア版も総務省の指導により、昨年2021年10月1日からSIMロックをかけてはいけないという法令の下、SIMフリーとなっています。
5G対応の違い
今回のiPhone 16シリーズでも、iPhone 12/iPhone 13/iPhone 14/iPhone 15シリーズと同様、5Gでは米国版のみmmWave(ミリ波、5G NR mmWave)5G対応で、他の国のバージョンは対応していません(Sub-6 5Gのみ)。ただ、その他の国でmmWave 5Gサービスが始まったとしても、米国のmmWave対応モデルが使えるかどうかは不明です。なお、iPhone 14シリーズから全機種で米国版は物理SIMを廃止しました。そこが大きな違いですね。米国版iPhone 14/15/16シリーズは、キャリアのeSIMが存在しいない中国本土では使い物にならないということになっています(ただし、以下の当ブログ記事で紹介しているように、魔改造をして物理シングルSIM・物理デュアルSIMを入れられるようにしている業者もあったりします)。
iPhone 16シリーズの無線通信仕様、対応バンドの違い
iPhone 16シリーズ日本版と中国本土版/香港版(iPhone 16シリーズではそれぞれAから始まる型番が統一されている)の無線通信仕様全体を比べてみると、日本版が最も対応バンドが多くなります。日本版の方で、中国本土・香港版には書いていないバンドや仕様があるのでそれを赤い字にしておきます。
これらはキャリアの対応状況、というよりもそれぞれの国・地域における電波法による対応と思われます。ただ、iPhone 16シリーズは全て同じQualcommの5Gベースバンドチップ(型番は調査中)を使用していますので、ソフトウェア的にオフにしているだけと思われます。その他の対応バンド等の仕様の差は殆どありません。例外的にFeliCaは日本のみ表記がありますが、中国本土版と香港版には表記がありません。ただ、私の中国本土版iPhone 15 Pro Maxを、日本でFeliCaを使用したSuiCaやPasmoなどで使っていましたが全く問題なく使えているので、中国大陸版も香港版も、表記がないだけでFeliCaを問題なく利用可能です。
【日本版 iPhone 16 シリーズ 通信仕様】
モデルA3286 (iPhone 16)、モデルA3289 (iPhone 16 Plus) 、モデルA3292 (iPhone 16 Pro)、モデルA3295(iPhone 16 Pro Max)
- FDD-5G NR(バンドn1、n2、n3、n5、n7、n8、n12、n14、n20、n25、n26、n28、n29、n30、n66、n70、n71、n75、n76)←iPhone 15シリーズから名称変更。またn38、n40、n41、n48、n53、n77、n78、n79が削られている
- TDD-5G NR(バンドn38、n40、n41、n48、n53、n77、n78、n79)←iPhone 16シリーズから新しく追加
- FDD‑LTE(バンド1、2、3、4、5、7、8、12、13、14、17、18、19、20、21、25、26、28、29、30、32、66、71)←iPhone 15シリーズからバンド11が削られている
- TDD‑LTE(バンド34、38、39、40、41、42、48、53)←iPhone 15シリーズから呼び名を変更(iPhone 15シリーズまではTD-LTE)。またバンド46が削られている
- UMTS/HSPA+/DC-HSDPA(850、900、1,700/2,100、1,900、2,100MHz)←3Gの仕様。iPhone 15シリーズから変更なし
- GSM/EDGE(850、900、1,800、1,900MHz)←2Gの仕様。iPhone 15シリーズから変更なし
【中国本土・香港版 iPhone 16 シリーズ 通信仕様】
モデルA3288(iPhone 16)、モデルA3291(iPhone 16 Plus)、 モデルA3294(iPhone 16 Pro)、モデルA3297(iPhone 16 Pro Max)
- FDD-5G NR (バンド n1、n2、n3、n5、n7、n8、n12、n20、n25、n26、n28、n30、n66、n70、n75、n76) ←iPhone 15シリーズから名称変更。またn38、n40、n41、n48、n77、n78、n79が削られ、n76が追加されている
- TDD-5G NR (バンドn38、n40、n41、n48、n77、n78、n79)←iPhone 16シリーズから新しく追加
- FDD-LTE (バンド 1、2、3、4、5、7、8、12、13、17、18、19、20、25、26、28、30、32、66) ←iPhone 15シリーズから変更なし
- TD-LTE (バンド 34, 38, 39, 40, 41, 42, 46, 48)
- TDD-LTE (バンド 34、38、39、40、41、42、48)←iPhone 15シリーズから呼び名を変更(iPhone 15シリーズまではTD-LTE)。またバンド46が削られている
- UMTS/HSPA+/DC-HSDPA (850、900、1700/2100、1900、2100 MHz)←3Gの仕様。iPhone 15シリーズから変更なし
- GSM/EDGE (850、900、1800、1900 MHz)←2Gの仕様。iPhone 15シリーズから変更なし
中国でのiPhone 16シリーズの発売時期について
iPhone 16シリーズは中国本土版・香港版は他国と同様2024年9月13日夜8時に予約開始され、9月20日発売開始となっています(商品が事前に店舗に届けられていても、9月20日以前にアクティベーションされると罰せられます)。
今回中国本土版/香港版の全てのモデルで発売出遅れはありませんが、中国が今年の不動産バブル崩壊による深刻な不景気を迎える中、ハイエンドのiPhone新機種が、9月13日夜8時からの予約でどのくらい売れるかが注目されます。
iPhone 16シリーズの物理デュアルSIMの仕様情報、SIMは2枚とも5G対応
iPhone 16シリーズの物理デュアルSIMの5G対応状況については、私自身は記事更新時点最新のiPhone 15 Pro Maxで2枚とも5G対応です。iPhone 13〜15シリーズもずっとそうだったので、iPhone 16に関しても当然同様と思われます。
日本版iPhone 16は物理SIMは当然のこと、2枚のeSIMも合わせてトリプルSIM全てで5G対応かについては実機での実証がないとわかりません。が、これまでと同様であれば可能になっているのではないかと思われます。
実際の物理DSDSの設定、使用方法
実際のiPhone物理デュアルSIMの使用状況や設定方法などは、ちょっと古いのですが、以前iPhone XSの時代に以下の記事にまとめました。だいぶ前の記事ですが、当時とそれほど変わっていないので、ご参照ください。
気になるiPhone 16シリーズの中国版・香港版のお値段は?
やはり気になるのはiPhone 16/iPhone 16 Plus/iPhone 16 Pro/iPhone 16 Pro Maxの日本モデルと、中国本土/香港版物理デュアルSIMモデルの価格差ですよね。
物理デュアルSIMに対応したiPhone 16/iPhone 16 Plus/iPhone 16 Pro/iPhone 16 Pro Maxの価格は公式発表では以下のようになっています。中国本土版/香港版の価格と、日本版(税込)価格を参考までに併記しておきます。
※括弧内の日本円換算価格は記事公開時の為替レート(1人民元=20.15円、1香港ドル=18.4円)によって計算したものです。
※中国本土/香港版価格の下の数字は、日本版価格との比較です。▲は価格が高く、▼は価格が低いことを表しています。
iPhone 16 Pro Max 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
256GB | 9,999元(約201,480円)
▲11,680円 |
10,199HKD(約187,662円)
▼2,138円 |
189,800円 |
512GB | 11,999元(約241,780円)
▲21,980円 |
11,899HKD(約218,942円)
▼858円 |
219,800円 |
1TB | 13,999元(約282,080円)
▲32,280円 |
13,599HKD(約250,222円)
▲422円 |
249,800円 |
iPhone 16 Pro 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 7,999元(約161,180円)
▲1,380円 |
8,599HKD(約158,222円)
▼1,578円 |
159,800円 |
256GB | 8,999元(約181,330円)
▲6,530円 |
9,399HKD(約172,942円)
▼1,858円 |
174,800円 |
512GB | 10,999元(約221,630円)
▲16,830円 |
11,099HKD(約204,222円)
▼578円 |
204,800円 |
1TB | 12,999元(約261,930円)
▲27,130円 |
12,799HKD(約235,502円)
▲702円 |
234,800円 |
iPhone 16 Plus 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 6,999元(約141,030円)
▲1,230円 |
7,699HKD(約141,662円)
▲1,862円 |
139,800円 |
256GB | 7,999元(約161,180円)
▲6,380円 |
8,499HKD(約156,382円)
▲1,582円 |
154,800円 |
512GB | 9,999元(約201,480円)
▲16,680円 |
10,199HKD(約187,662円)
▲2,862円 |
184,800円 |
iPhone 16 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 5,999元(約120,880円)
▼3,920円 |
6,899HKD(約126,942円)
▲2,142円 |
124,800円 |
256GB | 6,999元(約141,030円)
▲1,230円 |
7,699HKD(約141,662円)
▲1,862円 |
139,800円 |
512GB | 8,999元(約181,330円)
▲11,530円 |
9,399HKD(約172,942円)
▲3,142円 |
169,800円 |
今回、iPhone 16シリーズの価格は、中国本土版・香港版・日本版とも完全にiPhone 15シリーズと全く変わりませんでした。というわけで価格差は純粋に為替レートの影響をうけたものです。
記事更新現在は昨年のiPhone 15シリーズ発売時に比べて香港ドルのレートが日本円に比べて下がっているため、iPhone 16 Proシリーズは128GB、256GB、512GBモデルについては香港版が日本版価格よりも安くなっているのが印象的です。しかしiPhone 16及び16 Plusは日本版より香港版の方が高くなっているので、これらの日本版モデルはiPhone 16 Proモデルと比べて相対的に安くしているといえそうです。
そしてiPhone 15シリーズから引き続き、なんとiPhone 16 無印 128GBに限っては日本版よりも中国本土版の方が安いという珍しい逆転現象が発生(中国本土版の値付けが特殊ともいえますが)しています。
いずれにしても香港版が日本版とここまで殆ど差がないか安いのであれば、iPhone 16シリーズ物理DSDS版を買うなら、香港版を買うのが機能面も考えてベストといえそうですね。
今回比較対象にしていませんが、例によって米国版がもちろん一番安いのですが、AppleはiPhone 14シリーズの米国版において全て物理SIMトレイを廃止して完全にデュアルeSIMにするという暴挙に出ているので(笑)、米国以外で使うのは非現実的と言えるかもしれませんね。
過去のiPhone 物理デュアルSIM版の各国版価格比較
これまでのiPhone 12/13/14/15シリーズの価格比較について詳細は、過去当ブログで書いた各価格表をご覧ください。
iPhone 16シリーズ 物理デュアルSIM版は買いなのか?
iPhone 16シリーズの中国本土・香港版の物理デュアルSIM版は本当に必要なの?という議論もあると思います。このブログをご覧になっている方は、海外、特に中国本土・香港への出張が多かったり、中国本土・香港や海外に実際にお住まいで、国際間での移動が多い方でしょう。
6年前、2018年のiPhone XS/XS Max/XRで初めてデュアルSIM版がiPhoneに導入された時の発表イベントでは、Appleのフィル・シラーSVP(当時、現在はApple Fellowに昇格)が壇上で、中国ではeSIMが使えないので物理デュアルSIMを導入した、としていましたが、実はこれまでApple Watch Series 3以降に搭載されたeSIMバージョン(セルラーモデル)向けに、三大キャリア全てがeSIMを提供しています。
また、香港では携帯電話向けにキャリアがeSIMを発行しているのでこの発言には矛盾があったといえます(もちろん、当時も含め英語圏で普通にChinaといえばHong Kongを含めない意味で言うことが多いですが)。ちなみにキャリアのこの状況は、その5年前の初めてiPhoneにデュアルSIM版が登場したiPhone XS/XRの時代から変わっていません。携帯電話向けのeSIMは中国本土で導入されていないのです。理由は、現在中国本土で使用される中国本土三大キャリアのSIMには全て実名認証が義務づけられていて、eSIMになるとその手順が省かれてしまう可能性が高いためといえます。ちなみに例外的に提供されているApple Watchシリーズ用のeSIMは、あくまで実名認証がされたSIMと同じ番号の付加サービスとして提供されているのです。
しかし実際、物理デュアルSIM版を中国本土・香港・マカオ以外に居住する方が本当に導入するかは非常に悩ましいところです。なぜなら、日本版はiPhone 13シリーズからeSIMがデュアルとなり、結果的に物理nano-SIMと合わせてトリプルSIMになったからです。
出張レベルであれば、もう現在は国際ローミングが可能なデータSIMも格安で出ていますし、普通のキャリアの国際ローミングも非常に安くなってきています。という意味では、物理SIMは1枚でもいいといえます。もちろん、公私でSIMを複数使い分けている人や、2カ所以上に拠点を持ってそれぞれSIMを持っている人にとっては、やはりデュアルSIMは多少高いお金を出してでも差し替えの手間がかからないので魅力的です。しかも、SIMの差し替えって面倒なんですよね。特に飛行機や船・電車などで国際間移動をしている時に差し替えると、SIMが地面に落ちたり、見つからなくなってしまったり。。実は私もそんな経験があります。それを防ぐためにも物理DSDS版を使うというのはいい選択かもしれません。特に私は東南アジア(タイ・ベトナム・カンボジア・マレーシア)の出張が多いのですが、東南アジアで空港で現地購入するトラベルSIMは、基本的にeSIMはなく物理SIMによって提供されるので、物理DSDS版が非常に役に立つといえるかと思います。
記事は以上です。