2023年9月13日未明から公開されたApple新製品発表イベント動画で発表された、新型iPhone「iPhone 15」シリーズ。
Appleのイベント動画や公式サイト、更に多くの他のメディアでスペックなどは紹介されているので、当ブログの読者層が最も気にしていると思われるiPhone 15シリーズ4機種(iPhone 15/iPhone 15 Plus/iPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Max)の中国本土/香港版物理デュアルSIM版の詳細仕様調査と日本版との価格比較をしてみたいと思います。
なお、iPhone XS/XS Max/XR時代から、iPhoneで物理デュアルSIM版(DSDS版)が出ているのは世界広しといえども中国本土(中国大陸)版/香港版/マカオ版のみです。現在私が使っているのもiPhone 12 Pro Max 中国本土版物理デュアルSIM版デュアル待受版(物理DSDS版)のため、当ブログならではのiPhone 2023年新モデル「iPhone 15」シリーズの中国本土/香港版物理DSDS対応特集をします。恐らく、これに関しては他のどこよりも詳しいのではないかと思います。少々長くなりますが、お付き合いください。
iPhone 15シリーズの物理デュアルSIM対応版とは
まず、物理デュアルSIMが実現するのは今回発表されたiPhone 15シリーズ全4機種全てとなります。iPhoneの歴史として、物理デュアルSIMには2018年モデルのiPhone XS Max/iPhone XR、及び2019年モデルのiPhone 11 Pro、2020年のiPhone 12シリーズ(iPhone 12 mini以外)以来、2021年のiPhone 13シリーズ(iPhone 13 mini以外)と2022年のiPhone 14シリーズに引き続き対応したことになります。
そしてiPhone 15の物理デュアルSIM版について、対応国は「中国」とされています。ただ、単に「中国」といっても意味は広く、例えば字面通りであれば中華人民共和国と中華民国(台湾)の2つの意味があります。
また、中華人民共和国にも、特別行政区として香港とマカオがあり、iPhoneの広い意味での「中国版」には。。
- 中国本土(大陸・内地)版
- 香港版
- マカオ版
- 台湾版
の4つのバージョンがあるといえます。もちろん公式ページも、その4つにわかれています。
今回物理デュアルSIMが実現するのは、中国本土(大陸・内地)版及び香港・マカオ版のみです。つまり、台湾版は物理デュアルSIM適用外となりますので記事対象外です。ちなみに香港版とマカオ版は詳細モデル番号の末尾が異なるだけで、内容は同じなので以降マカオ版は割愛させていただきます。
そして世界でも日本版と韓国版だけ、サイレントモードにしてもカメラのシャッター音が出ますが、中国本土(大陸・内地)版及び香港・マカオ版はサイレントモードにするとシャッター音が出ません。それが日本版と韓国を除くその他の国のバージョンのSIM以外の大きな違いといえるでしょう。
中国本土版/香港(&マカオ)版/日本版のSIMカード対応状況一覧表
中国本土版/香港(&マカオ)版/日本版の、iPhone 15/iPhone 15 Plus/iPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Maxの物理デュアルSIMデュアル待受(物理DSDS)のスペック及び日本/台湾版は、Apple公式サイトのそれぞれのページの情報を整理をすると、以下の一覧表の通りとなります。
機種名 | 中国本土版 | 香港版/マカオ版 | 日本・台湾版 |
iPhone 15 | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 15 Plus | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 15 Pro | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
iPhone 15 Pro Max | 物理DSDS | 物理DSDS | トリプルSIM(物理SIM+eSIMx2) |
香港版は大陸版より安い。仕様の違いは?
中国の増値税(付加価値税、VAT)が乗らない香港版は中国本土版に比べて価格が安いのが特徴です。
iPhone 15シリーズの香港版が中国本土版と決定的に違う点は、台湾の国旗(中華民国旗)の表示ができること、衛星通信機能とFaceTime Audioが使えることという3点です。
SIMフリー
そして中国本土版及び香港(&マカオ版)は基本的にSIMフリーです。つまり、他国に持ち出しても、他国のどのSIMでも基本的には使えることになります。また、日本のキャリア版も総務省の指導により、昨年2021年10月1日からSIMロックをかけてはいけないという法令の下、SIMフリーとなっています。
5G対応の違い
今回のiPhone 15シリーズでも、iPhone 12/iPhone 13/iPhone 14シリーズと同様、5Gでは米国版のみmmWave(ミリ波、5G NR mmWave)5G対応で、他の国のバージョンは対応していません(Sub-6 5Gのみ)。ただ、その他の国でmmWave 5Gサービスが始まったとしても、米国のmmWave対応モデルが使えるかどうかは不明です。なお、iPhone 14シリーズから全てで米国版は物理SIMを廃止しました。そこが大きな違いですね。米国版iPhone 14/15シリーズは、キャリアのeSIMが存在しいない中国本土では使い物にならないということになっています。
iPhone 15シリーズの無線通信仕様、対応バンドの違い
iPhone 15シリーズ日本版と中国本土版/香港版(iPhone 15シリーズではこの2つの型番が統一されている)の無線通信仕様全体を比べてみると、日本版が最も対応バンドが多くなります。日本版の方で、中国本土・香港版には書いていないバンドや仕様があるのでそれを赤い字にしておきます。
具体的には5Gのバンドn14、n29、n53、n71、n76。FDD-LTEはバンド11、21、29、71。TD-LTEはバンド53が日本版が中国版より多くサポートしているバンドです。
これらはキャリアの対応状況、というよりもそれぞれの国・地域における電波法による対応と思われます。ただ、iPhone 15シリーズは全て同じQualcommのベースバンドチップ(Qualcomm Snapdragon X70 5G)を使用していますので、ソフトウェア的にオフにしているだけと思われます。その他の対応バンド等の仕様の差はありません。例外的にFeliCaは日本のみ表記がありますが、中国本土版と香港版には表記がありません。ただ、私の中国本土版iPhone 12 Pro Maxを、日本でFeliCaを使用したSuiCaやPasmoなどで使っていましたが全く問題なく使えているので、中国大陸版も香港版も、表記がないだけでFeliCaを問題なく利用可能です。
【日本版 iPhone 15 シリーズ 通信仕様】
モデルA3089 (iPhone 15)、モデルA3093 (iPhone 15 Plus) 、モデルA3101 (iPhone 15 Pro)、モデルA3105 (iPhone 15 Pro Max)
- 5G NR(バンドn1、n2、n3、n5、n7、n8、n12、n14、n20、n25、n26、n28、n29、n30、n38、n40、n41、n48、n53、n66、n70、n71、n75, n76, n77、n78、n79)
- FDD-LTE(バンド1、2、3、4、5、7、8、11、12、13、14、17、18、19、20、21、25、26、28、29、30、32、
66、71) - TD-LTE(バンド34、38、39、40、41、42、46、
48、53) - UMTS/HSPA+/DC-HSDPA(850、900、1,700/2,100、1,900、2,100MHz)※まだ仕様詳細ページがないため記載なしだが、恐らく存在するものと思われる。3Gの仕様
- GSM/EDGE(850、900、1,800、1,900MHz)※まだ仕様詳細ページがないため記載なしだが、恐らく存在するものと思われる。2Gの仕様
【中国本土・香港版 iPhone 15 シリーズ 通信仕様】
モデルA2846 (iPhone 15)、モデルA2847(iPhone 15 Plus)、 モデルA3104(iPhone 15 Pro)、モデルA3108(iPhone 15 Pro Max)
- 5G NR (バンド n1, n2, n3, n5, n7, n8, n12, n20, n25, n26, n28, n30, n38, n40, n41, n48, n66, n70, n75, n77, n78, n79)
- FDD-LTE (バンド 1, 2, 3, 4, 5, 7, 8, 12, 13, 17, 18, 19, 20, 25, 26, 28, 30, 32, 66)
- TD-LTE (バンド 34, 38, 39, 40, 41, 42, 46, 48)
- UMTS/HSPA+/DC-HSDPA (850, 900, 1700/2100, 1900, 2100 MHz)※まだ仕様詳細ページがないため記載なしだが、恐らく存在するものと思われる。3Gの仕様
- GSM/EDGE (850, 900, 1800, 1900 MHz)※まだ仕様詳細ページがないため記載なしだが、恐らく存在するものと思われる。2Gの仕様
中国でのiPhone 15シリーズの発売時期について
iPhone 15シリーズは中国本土版・香港版は他国と同様2023年9月15日予約開始され、9月22日発売開始となっています(22日以前にアクティベーションされると罰せられます)。
今回中国本土版/香港版の全てのモデルで発売出遅れはありませんが、iPhone 13/14に比べ人気が高く、9月15日8時(中国時間)から20分ほど経たないとストアのサイトが開けず、その時点でiPhone 15 Proシリーズは軒並み納期3〜4週間。初日で手に入ったのはごく稀なパターンのようです。今年も中国の転売ヤーが高値転売を狙って自動システムを作って頑張ったものと思われます。。
iPhone 15シリーズの物理デュアルSIMの仕様情報、SIMは2枚とも5G対応
物理デュアルSIMはiPhone 12 Pro Maxで自分も使っていますが、2枚とも5G対応です。iPhone 13/14シリーズもそうだったので、iPhone 15に関しても当然同様と思われます。
日本版は物理SIMは当然のこと、2枚のeSIMも合わせてトリプルSIM全てで5G対応かについては実機での実証がないとわかりません。が、これまでと同様であれば可能になっているのではないかと思われます。
実際の物理DSDSの設定、使用方法
実際のiPhone物理デュアルSIMの使用状況や設定方法などは、ちょっと古いのですが、以前iPhone XSの時代に以下の記事にまとめました。当時とそれほど変わっていないので、ご参照ください。
気になるiPhone 15シリーズの中国版・香港版のお値段は?
やはり気になるのはiPhone 15/iPhone 15 Plus/iPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Maxの日本モデルと、中国本土/香港版物理デュアルSIMモデルの価格差ですよね。
物理デュアルSIMに対応したiPhone 15/iPhone 15 Plus/iPhone 15 Pro/iPhone 15 Pro Maxの価格は公式発表では以下のようになっています。中国本土版/香港版の価格と、日本版(税込)価格を参考までに併記しておきます。
※括弧内の日本円換算価格は記事公開時の為替レート(1人民元=20.31円、1香港ドル=18.88円)によって計算したものです。
※中国本土/香港版価格の下の数字は、日本版価格との比較です。▲は価格が高く、▼は価格が低いことを表しています。
iPhone 15 Pro Max 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
256GB | 9,999元(約203,079円)
▲13,279円 |
10,199HKD(約192,557円)
▲2,757円 |
189,800円 |
512GB | 11,999元(約243,699円)
▲23,899円 |
11,899HKD(約224,653円)
▲4,853円 |
219,800円 |
1TB | 13,999元(約284,319円)
▲34,519円 |
13,599HKD(約256,749円)
▲6,949円 |
249,800円 |
iPhone 15 Pro 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 7,999元(約162,459円)
▲2,659円 |
8,599HKD(約162,349円)
▲2,549円 |
159,800円 |
256GB | 8,999元(約182,769円)
▲7,969円 |
9,399HKD(約177,453円)
▲2,653円 |
174,800円 |
512GB | 10,999元(約223,389円)
▲18,589円 |
11,099HKD(約209,549円)
▲4,749円 |
204,800円 |
1TB | 12,999元(約264,009円)
▲29,209円 |
12,799HKD(約241,645円)
▲6,845円 |
234,800円 |
iPhone 15 Plus 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 6,999元(約142,149円)
▲2,349円 |
7,699HKD(約145,357円)
▲5,557円 |
139,800円 |
256GB | 7,999元(約162,459円)
▲7,659円 |
8,499HKD(約160,461円)
▲5,661円 |
154,800円 |
512GB | 9,999元(約203,079円)
▲18,279円 |
10,199HKD(約192,557円)
▲7,757円 |
184,800円 |
iPhone 15 中国本土版・香港版・日本版価格
内蔵ストレージ容量 | 中国本土版 | 香港版 | 日本版(税込) |
128GB | 5,999元(約121,839円)
▼2,961円 |
6,899HKD(約130,253円)
▲5,453円 |
124,800円 |
256GB | 6,999元(約142,149円)
▲2,349円 |
7,699HKD(約145,357円)
▲5,557円 |
139,800円 |
512GB | 8,999元(約182,769円)
▲7,969円 |
9,399HKD(約177,453円)
▲7,653円 |
169,800円 |
過去のiPhone 12/13/14シリーズの価格について詳細は、過去当ブログで書いた各価格表をご覧ください。
記事公開時点で急激な円安が進んでいるため(1米ドル=147.78円、1人民元=20.31円、1香港ドル=18.88円、恐ろしい時代です)、中国本土版がやはり割高に感じますね。。ただし昨年のiPhone 14発売時よりほんの少し日本円が人民元に対して強くなっています。
但し、iPhone 15シリーズ日本版の価格も、昨今の円安や日本全体のコストアップによる価格向上により、iPhone 15と15 Plusは4,000〜5,000円、iPhone 15 ProとPro Maxは10,000円も値上がりしているため、中国本土/香港版と日本版との価格差はiPhone 14シリーズの時に比べかなり縮まったといえます。
iPhone 15シリーズ中国本土版では百の桁を9に揃えているため、iPhone 14シリーズに比べ、容量によっては100〜300元の値上げとなっていて更に高くなった感があります。しかし調整が大きく行われたのは512GB以上のもののため、低容量の128/256GBモデルは日本版と価格差がかなり小さくなっていて、なんとiPhone 15 128GBに限っては日本版よりも中国本土版の方が安いという逆転現象がiPhone史上初めて発生(中国本土版の値付けが特殊ともいえますが)しています。
更に、iPhone 15シリーズ香港版はiPhone 14シリーズ香港版から完全に価格据え置きになっていて、日本版が値上げした分香港版とは更に差が縮まる結果となっていて、1機種も1万円以上の差がありません。
というわけでiPhone 15シリーズ物理DSDS版を買うなら、香港版を買うのが機能面も考えてベストといえそうですね。
今回比較対象にしていませんが、例によって米国版がもちろん一番安いのですが、AppleはiPhone 14シリーズの米国版において全て物理SIMトレイを廃止して完全にデュアルeSIMにするという暴挙に出ているので(笑)、米国以外で使うのは非現実的と言えるかもしれませんね。
iPhone 15シリーズ 物理デュアルSIM版は買いなのか?
iPhone 15シリーズの中国本土・香港版の物理デュアルSIM版は本当に必要なの?という議論もあると思います。このブログをご覧になっている方は、海外、特に中国本土・香港への出張が多かったり、中国本土・香港や海外に実際にお住まいで、国際間での移動が多い方でしょう。
5年前、2018年のiPhone XS/XS Max/XRで初めてデュアルSIM版がiPhoneに導入された時の発表イベントでは、Appleのフィル・シラーSVP(当時、現在はApple Fellowに昇格)が壇上で、中国ではeSIMが使えないので物理デュアルSIMを導入した、としていましたが、実はこれまでApple Watch Series 3以降に搭載されたeSIMバージョン(セルラーモデル)向けに、三大キャリア全てがeSIMを提供しています。
また、香港では携帯電話向けにキャリアがeSIMを発行しているのでこの発言には矛盾があったといえます(もちろん、当時も含め普通にChinaといえばHong Kongを含めない意味で言うことが多いですが)。ちなみにキャリアのこの状況は、その5年前の初めてiPhoneにデュアルSIM版が登場したiPhone XS/XRの時代から変わっていません。携帯電話向けのeSIMは中国本土で導入されていないのです。理由は、現在中国本土で使用される中国本土三大キャリアのSIMには全て実名認証が義務づけられていて、eSIMになるとその手順が省かれてしまう可能性が高いためといえます。ちなみに例外的に提供されているApple Watchシリーズ用のeSIMは、あくまで実名認証がされたSIMの付加サービスとして提供されているのです。
しかし実際、物理デュアルSIM版を中国本土・香港・マカオ以外に居住する方が本当に導入するかは非常に悩ましいところです。なぜなら、日本版はiPhone 13シリーズからeSIMがデュアルとなり、結果的に物理nano-SIMと合わせてトリプルSIMになったからです。
出張レベルであれば、もう現在は国際ローミングが可能なデータSIMも格安で出ていますし、普通のキャリアの国際ローミングも非常に安くなってきています。という意味では、物理SIMは1枚でもいいといえます。もちろん、公私でSIMを複数使い分けている人や、2カ所以上に拠点を持ってそれぞれSIMを持っている人にとっては、やはりデュアルSIMは多少高いお金を出してでも差し替えの手間がかからないので魅力的です。しかも、SIMの差し替えって面倒なんですよね。特に飛行機や船・電車などで国際間移動をしている時に差し替えると、SIMが地面に落ちたり、見つからなくなってしまったり。。実は私もそんな経験があります。それを防ぐためにも物理DSDS版を使うというのはいい選択かもしれません。特に私は東南アジア(タイ・ベトナム・カンボジア・マレーシア)の出張が多いのですが、東南アジアで空港で借りられるデータSIMや現地で契約する携帯キャリアの番号は全てeSIMはなく物理SIMによって提供されるので、物理DSDS版が非常に役に立つといえます。
記事は以上です。