Appleの【iCloud Private Relay】に、利用者の本当のIPアドレスが露出しうる3つの欠陥があるとして、米国で集団訴訟が起こされました。訴状はAppleの宣伝を「詐欺(fraud)」および虚偽広告だと主張しています。提訴は2026年8月11日、原告側は過去にAppleから2億5,000万ドルの和解を勝ち取った法律事務所です。
そもそもiCloud Private Relayとは何だったか
iCloud Private Relayは、有料の【iCloud+】に含まれる機能です。Safariでの閲覧時に、利用者のIPアドレスとDNSの記録を隠すというもので、通信を2つのリレーサーバに分けて中継することで、Appleですら「誰が何を見ているか」を紐づけられない設計になっている、というのが売り文句でした。
VPNとは違うものですが、「IPアドレスを隠せる」という一点において、多くの人がVPNの簡易版のように受け止めていたのは事実だと思います。
指摘されている3つの穴。いずれもWebKit側の問題
今回問題とされているのは、以下の3点です。いずれもiOSのブラウザエンジンであるWebKitに関わるものです。
- パスキーの迂回 … Webサイトが、Safariではなく端末のOS側の仕組みを通じてパスキー認証を発動させることで、Private Relayのプロキシを丸ごと迂回できてしまう。しかも利用者への確認が出ない場合がある
- DNSプリフェッチ … 特定の条件下で、実際のIPアドレスやDNSサーバが露出しうる
- WebTransport … iOS 26で追加されたこのプロトコル経由でも、IP情報が漏れうる
研究者がこれらを公表したのは2026年8月5日。それからわずか6日で提訴に至っています。動きが速いですね。
そして厄介なのは、iOS上のブラウザは全てWebKitで動いているという点です。ChromeだろうとFirefoxだろうと、iOSの中身はWebKitですから、影響はSafariだけにとどまりません。
訴えたのは、あのSiri訴訟で2億5,000万ドルを取った事務所
提訴したのはClarkson Law Firm。この事務所は2025年12月、Siriの機能提供が遅れた件でAppleから2億5,000万ドルの和解を引き出しています。実績のある相手であり、Appleとしても軽く扱えないでしょう。
主張の骨子は、「IPアドレスとDNS記録を守る」と謳って有料契約させておきながら、実際には守れていなかった、という点です。技術的な欠陥そのものよりも、お金を取っていたことが争点になります。
中国では、そもそもPrivate Relayは使えない
ここからは中国在住者としての話です。
あまり知られていませんが、iCloud Private Relayは中国本土では提供されていません。現地の規制に対応するためAppleが機能ごと外している格好で、中国本土のApple IDでは設定項目自体が出てきません。ですので、今回の件で直接影響を受ける在住者は多くないはずです。
ただ、日本のApple IDのまま中国に滞在している方や、一時帰国中に使っていた方は無関係ではありません。
そのうえで申し上げたいのは、この機会にPrivate RelayをVPNの代わりだと思っていた方は、認識を改めた方がいいということです。もともとPrivate RelayはSafariの閲覧に限った機能で、他のアプリの通信は素通りです。地域制限の回避を意図した機能でもありません。今回さらに、その限られた守備範囲の中ですら穴があったことになります。
IPアドレスを確実に隠したい、通信全体を守りたいという目的であれば、最初から用途に合った手段を選ぶべきです。当ブログでも中国のネット規制まわりの事情は継続的にまとめていますので、あわせてどうぞ。
Appleがどう出るか
Appleは通常、この種の訴訟に対してすぐには反応しません。ただ、プライバシーを最大の売り文句にしてきた会社ですから、この論点で負けると金額以上のダメージがあります。WebKit側の修正がiOS 27で入ってくるのか、そこは注視しておきたいところです。
記事は以上です。
(記事情報元:MacRumors)
※記事中の画像はイメージです。実機の写真ではなく、生成AIで作成したものです。

