昨年12月に起きたカリフォルニア州サンバーナーディーノの銃乱射テロ事件で、AppleがFBIから容疑者の持っていたとされるiPhone 5cにバックドアを仕掛けてロック解除するよう要求されたのを拒絶し、訴訟に発展している問題で、FBIは新しい方法でロックが解除できそうになっているため、AppleとのiPhoneをロック解除するための法廷聴聞会の延期をするというニュースが流れた。
日本の朝日新聞のニュースでは、FBIに協力した企業はイスラエルのセレブライト(Cellebrite)社で、日本のサン電子の傘下にある企業だった。
そしてForbes誌によると、このセレブライト社がロック解除で要求している金額は非常に低く、FBIは恐らく彼らにたったの1,500ドル(約17万円)払えば、これまでさんざん苦労して訴訟まで起こした、かのiPhone 5cを解除できてしまう可能性があるという。
Forbesによれば、セレブライト社はかつてiPhoneのロックを解除した経験を持つという。最近は今年2月、イタリアの裁判所の判決で、悪意のある傷害事件によるものだった。その事件で、容疑者は自分のiOS 8がインストールされているiPhone 5のパスワードを忘れてしまったと嘘をついていた。ということで裁判所はセレブライト社の専門家に頼んでロック解除を依頼したというわけだ。そしてロック解除は順調に行われ、セレブライト社は”サービス料”として1500米ドルを受け取ったとのことだ。
iPhone 5とiPhone 5cは同じ32ビットのA6プロセッサを採用しており、セレブライト社はFBIのためにiPhone 5cを解除するのはそれほど難しくないことではないかと思われる。ただ容疑者のiPhone 5cにはiOS 9が搭載されているといい、iOS 9はiOS 8に比べセキュリティ性能は向上しているためiOS 8よりはロック解除の難易度は上がると思われる。
ただAppleはiOS 8から端末全体への暗号化を始めていて、これが最も大きいセキュリティの要だった。しかしこのセキュリティもセレブライト社の前には何の役にも立たないようだ。現在のところ、セレブライト社はiOS 8.4までのロック解除をしたことがあるという。
しかし、これまでセキュリティ関係の会社がiOSシステムのセキュリティホールを見つけると、それを手渡すのに数十万から百万ドル以上の金額を要求することがこれまでの常だった。もしiOS 9を搭載したiPhone 5cを2000ドルレベルで解除できるのであれば、セレブライト社はやはりすごいということになる(もしくは、売名行為、宣伝のためのものかもしれないが)。
もちろん、今回は全世界が注目していることや、アメリカ政府のFBIが躍起になっていることから、価格についてどのような交渉が行われているかどうかはわからない。最終的にまだ決定したわけではないが、第三者がロック解除するとなれば、Appleにとっては自らバックドアを仕掛けるという必要がなくなったということで、消費者に対する言い訳が立つようになって少し重荷が下りたというところだろう。
しかし今後、Appleのセキュリティ性能でもやはり破られてロック解除されてしまうという危険性が出てくることになり、逆の意味でのプライバシー保護への不安が出てきてしまったのも事実だ。
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