ディスプレイ調査会社Omdiaが、9月16〜17日に上海で開く「2026 Omdia China Display Conference」の講演要旨を公開し、Appleが折りたたみMacBookと中型OLED(有機EL)MacBookの2機種を計画から外し、代わりに2029年へ13.8型のOLED MacBookを新設したことを明らかにしました。講演者はディスプレイ調査部門の責任者、謝勤益(David Hsieh)氏。講演の題は「AppleはiPadとMacBookのOLED製品計画を調整、中国のOLEDサプライチェーンがより大きな役割を果たす」で、上海の聴衆に向けてBOE(京東方)の参入時期まで踏み込んでいます。要旨の全文を読み、9to5MacやMacRumorsの英語報道では薄い中国側の記述も含めて整理します。

中止された2機種、16.1〜18型の折りたたみと14.4〜16.1型のOLED MacBook
Omdiaが「計画から消えた」とするのは次の2つです(Omdiaの講演要旨)。
- 開くと16.1〜18型になる折りたたみMacBook
- 14.4〜16.1型のOLED MacBook(14.3型と16.3型はMacBook Proに残る)
折りたたみMacBook(あるいは折りたたみiPad)は、ブルームバーグのガーマン記者が今年4月に「およそ20型で、ターナス氏(当時ハードウェア技術担当上級副社長。9月1日にCEOに就任)が優先している案件だが、風変わりな実験で終わるかもしれない」と書いていたものです。それ以前は18〜20型で2026年、その後2028年に後ろ倒しと伝えられてきました。9to5Macはこれを「ターナス氏の優先案件だった革新的な製品が中止された」と報じています。ターナス氏がCEOに就いた9月1日と同じ週に、その人が押していたはずの製品が消えたという構図ですが、Omdiaの要旨は理由を書いていません。後述するパネル需要の下振れと、要旨の末尾に挙がる「メモリ価格の高騰」が、大型で高価な製品から順に計画を削っている、と読むのが自然でしょう。
代わりに2029年、AirとProの間に入る13.8型のOLED MacBook
消えた2機種の代わりに加わったのが、2029年の13.8型MacBookです。Omdiaは「重要な主流機種」と位置づけ、LCDのMacBook AirとOLEDのMacBook Proの間に置く新しい階層だとしています。パネルの仕様が具体的です。
- バックプレーンはLTPO+(可変リフレッシュレートで省電力)
- タッチセンサー内蔵(TOE)、画面下カメラ(UPC)
- 偏光板を使わないCOE(カラーフィルターを封止層に組み込む。明るく薄くなる)
- RGB単層のハイブリッドOLED。FMP(Flex Magic Pixel。視野角を狭めて覗き見を防ぐ技術)
- 供給元は未定。Samsung Display・LG Display・BOEの3社が必要になる可能性
MacBook AirはLCDのままで、供給はBOEとLG Display。OLED化はMacRumorsの言い方を借りれば「早くても2028年」で、OmdiaはLCDのAirが2030年まで続くと見ています。10月に出るとされるタッチ対応の初のOLED MacBook Proについては、8月の記事で先にお伝えしました。
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2024年12月版との違い、AirのOLED化が「新機種」へ
実はOmdiaのAppleロードマップが表に出るのは初めてではありません。2024年12月に韓国ETNewsが報じ、AppleInsiderが伝えた前の版では、MacBook Airが2028年に13.8型と15.5型のハイブリッドOLEDになることになっていました。今回の版では、Airは2030年までLCD、そして13.8型は「Airとは別の新機種」として2029年に置かれています。つまり、「AirのOLED化」だった計画が、「Airは安いLCDのまま残し、OLEDの13.8型を上に足す」に組み替えられた、と読めます。折りたたみも、前の版では18.8型・2028年だったものが消えました。両方の版を並べたのが下の表です。
| 製品 | 2024年12月版(ETNews経由) | 2026年9月版(今回) |
|---|---|---|
| MacBook Pro 14.3/16.3型 | 2026年にOLED化(タンデム+Oxide) | 2026年下半期、変わらず。Samsung A6の独占で年約130万枚。2027年末にLTPO追加、2028年にBOEが参加 |
| MacBook Air 13.6/15.4型 | 2028年に13.8/15.5型のOLEDへ | LCDのまま2030年まで(BOE・LG Display)。OLED化は早くても2028年 |
| MacBook 13.8型(新設) | なし | 2029年、AirとProの間の新機種。LTPO+・COE・画面下カメラ・タッチ内蔵。供給元は未定 |
| 折りたたみMacBook | 2028年に18.8型 | 中止(16.1〜18型) |
| MacBook 14.4〜16.1型 OLED | ― | 中止。14.3/16.3型はProに残す |
| iPad Pro 11/13型 | 2024年にOLED化済み | 2027年半ばにCOE追加。年約700万枚の想定だが需要は想定より37%少ない |
| iPad Air 11/13型 | 2027年にOLED化 | 2027年、変わらず。BOE(B12)とSamsung(A2)の2社供給 |
| iPad mini 8.4型 | 2026年にOLED化 | 2026年下半期、変わらず。Samsung A2で6月量産開始、年約110万枚 |
2年弱で変わらなかったのは、MacBook Pro(2026年)、iPad mini(2026年)、iPad Air(2027年)の3つ。変わったのは、大きくて高いもの(折りたたみ、中型OLED)と、安くて数が出るもの(Air)です。OLED化の順番が「高い方から」であることは前の版と同じですが、下の方はLCDを残して価格を守る方向に振れています。
MacBook Pro OLEDは年内、Samsung A6から年130万枚。M5 Ultra搭載の見立て
今年の本命は14.3型と16.3型のMacBook Pro OLEDです。要旨によると、パネルはRGBタンデム(発光層を2段重ねて明るさと寿命を稼ぐ)にOxide TFTの組み合わせで、Samsung Displayの8.6世代の新工場A6が2026年7月に量産を始めています。年間およそ130万枚で、Samsungの独占供給です。発表は2026年下半期、報道では年末が有力で、「MacBook Ultra」という名前になるという噂もあります。
興味深いのはチップの記述です。M5・M5 Pro・M5 MaxのLCD版MacBook Proが今年3月に出そろっているため、OmdiaはOLED版に「M5 Ultraが載る可能性が極めて高い」と書いています。これは、ガーマン記者が伝える「OLED版MacBook ProはM5 ProとM5 Max」という情報とは食い違います(MacRumors)。MacBookにUltraチップが載ったことは一度もなく、先週発表されたMac StudioのM5 Ultraが初出です。ディスプレイの調査会社がチップの話をどこまで把握しているかは割り引いて読むべきで、AppleInsiderも前の版の時点で「調査会社の予測であり、スケジュールを信じてよいかは判断が難しい」と書いていました。
もうひとつの見どころは、ミニLEDのLCD版MacBook Proが打ち切られず、少なくとも2028年まで並売されるという点です(MacRumors)。理由はコスト。OLED版は高くなるので、LCD版を残して価格の幅を保つ、という判断です。
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iPad、miniが下期にOLED化、Airは2027年、Proは需要が想定より37%減
iPadの計画は次の通りです。
- iPad mini 8.4型: 2026年下半期にOLED化。RGB単層+LTPSのハイブリッドOLEDで、Samsung A2(5.5世代)で6月に量産開始、年約110万枚
- iPad Air 11/13型: 2027年にOLED化。BOE(B12、6世代、LTPS)とSamsung(A2)の2社供給で、より薄く軽く
- iPad Pro 11/13型: 現行のOLEDを継続し、2027年半ばにCOEを追加。年約700万枚の想定は据え置きだが、Appleは月々の調達を絞っている
気になるのはiPad Proの記述です。Omdiaは「戦争による需要減速の影響で」Appleが月間の購入量を減らしており、需要は当初の想定より37%少ない(Omdia Display Dynamics、2026年6月)と書いています。2024年に鳴り物入りでOLED化したiPad Proの売れ行きが想定を大きく下回っている、というのはOLED化の速度全体に効く話で、折りたたみMacBookの中止とも無関係ではないでしょう。
ロードマップ一覧(2026〜2029年)
Omdiaは最後に「メモリ価格の高騰と、AppleのAI PC戦略によって計画はまだ変わりうる」と但し書きを付けています。実際、この1年でiPad Proの需要は37%下振れ、2機種が消えました。上の図は「2026年9月時点のOmdiaの見立て」であって、確定した製品計画ではありません。
中国から見ると、成都B16のBOEがMac・iPad向けOLEDに初参入か
講演の題が「中国のOLEDサプライチェーンがより大きな役割を果たす」であることが示す通り、要旨で最も具体的に書かれているのはBOEです。
- BOEは現在、AppleのiPadとMacBookにOLEDを一枚も供給していない。ただしLCDでは最大の供給元
- 成都の8.6世代OLED工場B16が立ち上がり、2027年のiPad Air OLEDの供給元に、2028年にはLTPOバックプレーンでMacBook Pro OLEDのサプライチェーンに入る見込み
- BOEはLTPO+、Samsung A6はOxide(HMO)と技術路線が違う。Appleが供給元を使い分けやすくなる
B16は総投資630億元(約1兆5,000億円)、ガラス基板で月3万2,000枚の8.6世代工場で、BOEは今年6月17日に量産と出荷開始の式典を開いています(The Elec、OLED-Info)。Samsung A6の量産開始(7月)より1か月早い。The Elecが伝えた初期の顧客はLenovo、ASUS、MSI、OPPO、vivo、Honor、ZTE、Transsion、小米、Nothingの10社で、Appleの名前はありません。Omdiaの見立てが正しければ、そこにAppleが加わるのが2027年ということになります。
iPhoneではBOEがすでにOLEDを供給していますが、Samsung・LGに比べて品質面で苦戦し、シェアは小さいままです。Mac・iPad向けの大型OLEDは、Samsungが8.6世代のA6で先行し、BOEがB16で追う構図。中国政府が推すディスプレイ産業の「次の一手」が、Appleの2027〜2028年のiPad・Macに乗るかどうか。上海の講演でOmdiaが中国の聴衆に伝えたいのは、まさにこの点です。
見方、消えた2機種より「残った計画」
折りたたみMacBookの中止は見出しになりやすい話ですが、Omdia自身が「AppleがiPadとMacBookの全ラインアップをOLED化する長期戦略は変わっていない」と書いている点のほうが重要です。変わったのは順番と技術の割り当てで、方向は同じ。2026年末にMacBook ProとiPad mini、2027年にiPad Air、2029年に新しい13.8型と、OLEDは上から下へ順に降りてきます。
ただし、そのすべてが「メモリ価格」という但し書き付きです。今日の別記事でお伝えしたiPhone 18 Proの値上げと同じ原因が、Macの計画にも影を落としている。2026年のAppleを読む鍵は、チップでもAIでもなく、メモリの値段かもしれません。
記事は以上です。
(記事情報元:Omdia(講演要旨)、9to5Mac(ロードマップ)、9to5Mac(折りたたみ)、MacRumors(中止)、MacRumors(13.8型)、MacRumors(M5 Ultra)、MacRumors(ミニLED)、AppleInsider(2024年12月版)、The Elec、OLED-Info)
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