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iPhone発売10周年記念:初代iPhone開発過程のエンジニアの苦労から学べる6つのこと

明日6月29日は、10年前に【初代iPhone(iPhone 2Gとも)】が発売された日で、10周年記念日となっています。これを記念して、ウォールストリート・ジャーナル(the Wall Street Journal)がミニドキュメンタリーを作っています。ドキュメンタリーは”Behind the Glass(ガラスの後ろ側に)”と銘打たれ、Appleが世界を変えたスマートフォンを開発する過程の細部がまとめられています。

このドキュメンタリーでは、元Apple幹部だったトニー・ファデル(Tony Fadell)氏、スコット・フォーストール(Scott Forstall)氏とグレッグ・クリスティー(Greg Christie)氏の3人にインタビューを行っており、そこからちょっと面白い情報を学ぶことができます。

そしてCult of Macが6つのポイントに絞ってその要点をまとめているので、ご紹介したいと思います。

1.iPhoneはiPodに対する不安から生まれた

アイコン配置について語るスコット・フォーストール元Apple SVP

iPodは2005年、Appleの利益の半分を占めていました。しかしAppleはその栄誉に浸っていることはありませんでした。「私たちは自問しました、何がiPodの売上の”共食い”を生み出してしまうのかを」とスコット・フォーストールは語ります。スコット・フォーストールは、元ソフトウェア担当SVP(シニア・ヴァイス・プレジデント、上級副社長)で、かつてiOS(当初はiPhone OS)の開発のトップでしたが、2012年にAppleのネイティヴ地図アプリ(Maps)の失敗の責任をとらされる形でAppleを離れています。「最大の驚異は携帯電話だったのです」

iPodの共食い(カニバリゼーション)を考慮したことが、Appleに世界で最も有名な製品、iPhoneを開発させるきっかけとなったのです。

 

2.Appleは30〜40通りの方法で、何とかiPodのクリックホイールを残そうとした

スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が2007年1月に開かれたMacWorldで初代iPhoneを発表したとき、iPodのクリックホイールをかつての電話のダイヤル(ロータリーダイヤル)に見立てた写真を出してジョークを飛ばしたのを覚えている人もいるかと思います。しかし実はあれは(開発段階では)本気のアイデアだったのです。開発段階では、密かに30〜40通りの異なったユーザにクリックホイールを使ってもらう方法がテストされましたが、1つとしてよいものがなかったようです。

「リストから選択することができるでしょう?違います?それがiPodの全てだったのです」と、2008年にNestを起業するためにAppleを離れたトニー・ファデル元SVPは語ります(そしてNestはGoogleの親会社Alphabetに買収され、現在ファデルはGoogle陣営にいます)。「しかしリアルに電話番号をダイヤルするにはあまりに複雑で能率が悪かったですね。結局それが実現することはありませんでした」

 

3.Appleの最初のマルチタッチディスプレイ”テーブル”は、非常に大きかった

こんなに大きかった、と説明するトニー・ファデル元SVP

Appleの研究開発の段階で、実はiPadの方が先に開発されていたことはもう秘密ではなく公然の事実です。Appleはよく様々なサイズのプロトタイプを使ってそのテクノロジーが正しいかを確認します。ただ、このドキュメンタリーでは、一番最初のマルチタッチディスプレイのプロトタイプは、ちょっとデカすぎました。まるで卓球台のような大きさだったのでした。そしてそこにはMac OS Xが走っていました。

「スティーブ・ジョブズは、”私はこれが私たちの問題を解決してくれる”と言いました」とファデルは振り返ります。その問題とは、上記の通りクリックホイールによるインターフェイスの問題でした。そしてジョブズは確かに正しかったのです!

 

4.iPhoneデモチームは長時間労働を強いられた

長時間労働の実体を語るGreg Christie

スコット・フォーストールによれば、スティーブ・ジョブズが初代iPhoneチームからプロジェクトを引き上げようとしたとき、何とかそれを取り戻そうと、かなり深刻な”サービス残業”でそれを取り戻そうとしたそうです。その深刻さとは、一週間に168時間働く、つまり24時間労働を1週間続ける、ということです。Appleの本社のある1 Infinite Loopの通りを挟んで向かいにホテルをとり、プロジェクトが終わるまで家に帰らないようにしたそうです。

 

5.素晴らしいデモを作ったことへのスタッフへの”報酬”とは

この短いドキュメンタリー番組の最大の見せ場は、かつてのソフトウェア担当幹部だったグレッグ・クリスティー(Greg Christie)へのインタビューでしょう。それは、スティーブ・ジョブズにiPhoneのデモを見せて、「わお(Wow)!」と言わせたチームに与えた報酬のことを語ったからといえます。「そのデモのために素晴らしい仕事をしたことへの報償は、我々自身のその後の2年半を”殺す”ことでした。」とクリスティーは顔をしかめて語っています。

 

6.いいキーボードはどうやって生まれたか

iPhone用にいかに特別なキーボードを作ったかを語るスコット・フォーストール元SVP

iPhoneに使われているバーチャルキーボードは、ブラックベリー(BlackBerry)のフィジカルキーボード(実体キーボード)と比較されてきて、非常に大きな議論になっています(スティーブ・ジョブズの友人でAppleラブなあのジャーナリスト、ウォルト・モスバーグ(Walt Mossberg)氏も、その点についてははっきりとした答えを出していません)。

フォーストール氏は、開発中にバーチャルキーボードはうまく作動しなかったと明かしています。彼はUIエンジニアに、他のアプリの仕事を全部やめさせて、フルタイムで2週間ほど、キーボードの開発に当たらせることにしたそうです。

結果、クレイジーな範囲でデモが繰り返され、1人のエンジニアがAIを使って、タップされたところがコンテキストに従うとどのキーにヒットすべきか判断するというスマートなやり方で解決する、ということになりました。これは、例えばユーザがTと打ったら、次の字はかなりの確率でHになる、というようなもので、その後はまた更にEがかなり確率で後に続く、といった感じです(これでTHE)。そしてキーの領域が異なるサイズになっているのは、打ち間違いを減らして正しく文字をヒットするためだそうです。

これはもう現在は常識になっていますが。。当時は確かにイノベーティブ(革新的)だったのです。

上記のことが語られている、ウォールストリート・ジャーナルのビデオはこちらからご覧いただけます(全編英語)。

ちなみに、ハードウェアデザインについての紆余曲折については昨日別記事にまとめましたのでご覧ください。この記事も、Apple好き、iPhone好きにとっては必見かと思われます。

記事は以上です。

(記事情報元:Cult of Mac

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