Appleの将来のiPhoneやiPadのタッチセンサーには、レーザーを用いた技術が採用されるかもしれません。Face IDの3D距離測定にも用いられているVCSELレーザによって、画面のたわみを感知することで3Dタッチのレベルを決定したり、文字入力を一定レベルのみで受け付けるようにすることでキーボードタッチ入力のUXを改善できることが期待されます。
現在のiPhone/iPad等のディスプレイのタッチセンサーは、12年前に発売されたiPhone初代から用いられている静電容量センシングですが、タッチセンシング技術には他にも抵抗センシング、超音波センシング、光学センシングなどがあります。特に光学センシングはAppleがどうやら注目している技術のようで、米国特許商標庁(USPTO)が本日公表したAppleの出願書類ではこの技術を利用してタッチセンシングを改善したいと考えている傾向がみてとれます。
「タッチ入力を特徴付けるための自己混合干渉ベースのセンサー」とAppleに題された特許出願書では、タッチ入力されたところを監視・感知するために、垂直共振器面発光レーザー=面発光レーザー、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laserの略)の採用が提案されています。
各VCSELは、監視対象のディスプレイ表面に向かって「コヒーレント光(波動が互いに干渉しあう性質を持つ光)」のビームを放射します。これは、さまざまな角度で他のコヒーレント光ビームと反射して混合され、そして他のセンサーに反射されます。ディスプレイ面のたわみがその反射角を変えるため、その角度が非常に重要になってきます。つまり、レセプター側のセンサーが特定のビームを受信することによって、たわみが検知されるという仕組みになっているのです。
このシステムの実現によって、3D Touchのようなタッチの強さのレベル分けができるだけではなく、タッチキーボードで一定以上の圧力がかからないとキー入力を受け付けないようにすることによって誤入力を防ぐことが可能になることも期待されます。
VCSELはiPhone Xから導入されたFace IDのTrueDepthシステムで、3万以上のレーザードットポインタを照射し、距離を測定するために使われています。また今後Appleの電気自動車或いは自動運転システムの開発プロジェクトとされている「Project Titan(プロジェクト・タイタン)」でも用いられているといわれています。
Appleは、2017年のAdvanced Manufacturing Fund戦略の一環として、VCSELの米国の製造業者Finisarに3億9000万ドルの投資を行いました。AppleはFace IDの成功を受け、更にVCSELの有効活用を図っているものと思われ、今回の特許出願についてもその傾向が反映されたといえるかもしれません。
Appleは毎週膨大な数の特許を出願しており、出願した特許を必ずしも製品に実際に用いるとは限りませんが、今回のVCSELのタッチセンシングへの応用特許については、これまでの投資の状況やiPhoneやiPadへの導入メリットが高いことなどから見ても実現の可能性が高いのかもしれません。
記事は以上です。
(記事情報元:Apple Insider)