Appleは一昨日、会計年度2016年第二四半期(Q2)の業績(財務レポート)を発表した。当ブログでもお伝えしているとおり、iPhoneの販売台数が昨年同期に比べ18%落ち込んだことは、Appleのような勢いのある企業やiPhoneのような世界的な大ヒット製品でもやはりピークを迎え、そしてそれを過ぎると下がっていくという法則、所謂「盛者必衰の法則」に従ってしまうのかという一種の虚しさを感じられた発表だったのではないか。
しかしiPhoneや、予想通りのiPadの苦戦と同時に、もう1つ気になる数字があった。それは今年1月〜3月までのMacの販売台数が400万台で、昨年同期比12%減少したことだ。これはAppleの2007年以来、全体のコンピュータ事業で最も落ち込みが激しかったことになる。またMacの販売台数は2期連続で落ち込んでおり、これも2007年にiPhoneが発表されて以来、Macの販売台数の落ち込みが大きかった時期となる(2012年に22%ダウンという数字が出たこともあるが)。
マーケティングリサーチ機構のIDCとGartnerは今月初めにPCの2016年Q1の販売台数は引き続き減少すると予測しており、この2社の予測はそれぞれ11.5%と9.6%の落ち込み田他。しかし彼らはMacの販売台数の予測を外してしまった。この2社はMacの販売台数予測を450万台と460万台と見積もっていたのだ。
過去4年間、Macは全体的に市場の動きとは逆らうように販売台数やシェアを伸ばしていた。しかし前四半期と今四半期連続でその流れが断ち切られ、業績発表会議上でもティム・クックCEOとルカ・マエストリCFOはそのことについては特に議論をしなかった(したくなかったのだろう)。マエストリCFOが「全体のPC業界からいえば、非常に厳しい四半期だった」という言葉を発したのみに止まった。逆にクックCEOはMac業務に未だに非常に楽観的で、Macの販売台数はAppleの予測した台数に達したと述べたが、予測とあっていたことを言ったに過ぎず、問題の核心に迫っていない。会計年度2016Q2でMacは51億ドルの営業収入となり、昨年同期に比べて9%ダウンしたが、これもMacの製品ラインとしては3年来最低の水準となった。
Macの落ち込みについて、マーケットリサーチ機構Technology Business ResearchのアナリストEzra Gottheil氏は、「現在まだユーザがWindowsを捨ててMacに移行するということも、または新しいユーザがMacではなくWindowsやChromebookばかりを選択するという傾向は今のところ見られない」と評価している。
しかし現実的にMacの販売台数が減少していることから、やはり何らかの問題が発生しているのは間違いない。Gottheil氏は更に、「Appleはユーザのデバイス使用時間がますます長くなっているという問題に直面しています」。つまり、販売台数が下落している原因のポイントは、消費者が以前のように頻繁にデバイスを買い換えず、1つのデバイスを使う時間がどんどん長くなっていて、買い換えをしないということのようだ。
Gottheil氏は、その問題の真犯人を、MacBookに搭載された”SSD”であると指摘する。なぜなら旧式のハードディスクに比べ、SSDは機械的な構造がないため信頼性が高く、速度も更に速く、特に起動速度が非常に速いためだという。そんなわけで、ユーザはデバイスを長く使ってもまだまだ長く使えるのでアップグレードする必要はないと考えてしまうというのだ。このように買替え需要を掘り起こせていないのが、最大の原因であろうというのは納得できるところ。実際iPhoneもiPadもその理由で売上げがマイナス成長なのだろう。特に後者はその傾向が顕著に思える。
そしてもう1つの原因として、AppleがMac製品ラインに本腰を入れていないということもGottheil氏によって指摘されている。最近はハードウェアについても、ソフトウェアのOS Xについても、あまり多くのイノベーティブやクリエイティブなアップデートが行われていない。また製品ラインの複雑化や重複もユーザの混乱を招いている(例えばMacBook AirとMacBookなど)。Gottheil氏は、Macにタッチパネルを導入しないこと、またOS XシステムにSiriを導入しないことがMacの販売台数が落ち込む原因になっていると指摘している。
「マイクロソフト(Microsoft)とそのOEMがMacに与える脅威がますます大きくなっています」とGottheil氏は語る。マイクロソフトはWindows 10でOS Xよりも先進的なOSに変身した。「PC OEMと聞くとかつては恐怖感を感じましたが、最近の彼らのデザインはどんどん良くなってきています」
今年の初めに暴露された情報によれば、Appleは今年のOS X(OS X 10.12、Eagle Peak?開発コードネームFuji)にSiriを導入するという。実は2012年には、Appleは内部テストでOS XにSiriを導入している。このボイスヘルパーはモバイルプラットフォームのiOSで誕生し、昨年Apple WatchとApple TVにも導入された。引き続きMac OS Xのデスクトップとノートブックに導入されるのであれば、今年6月のWWDCで発表されるとみられるOS X 10.12の目玉機能となるだろう。
ただし、OS XへのSiri導入でMacの売上げにどのくらい影響が出るかは正直未知数だ。
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(記事情報元:MacWorld)