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AppleがiPhone回収で4000万ドル相当の”金”を得たという類いの報道は全て間違いかも

“今週Appleが発表した環境レポートで、人々は思考能力を失っている”。著名な修理機構のiFixitがテックメディアMotherboardの内容を引き合いに出して、批評を展開している。

Appleが1年に1回の環境レポートを発表した後、CNNを含む多くのアメリカのメジャーなメディアが、Appleが2015年にiPhoneを回収することで総額4000万米ドル(約43億8716万円)相当の黄金を手に入れたと報道した。またテックメディアのThe Vergeも、Appleが旧機種の回収で9000万ポンド(約4082万キログラム)の材料を手に入れたと報道していた。

以下がその報道リスト。

【米国主流メディア】

【米国主流テック系メディア】

そして以下がAppleが公表している数字だ。

しかしテックメディアMotherboardはこれらの報道には何1つ正しいものがないと述べている。

記事自体が非常に長いため要約すると、Apple自身は全ての旧型iPhoneを回収して、それを溶かして黄金を取り出すというようなことはしておらず、またApple自身も黄金を回収するための溶炉も持ち合わせていない。つまり、これはAppleが”やっているか”という問題より”できるか”という問題だというのだ。

Apple自身が回収しているのは非常に少ないほんの一部の旧型iPhoneで、それらはApple Storeの店内での下取りプログラムによって回収されるが、その比率はこれまで販売されたiPhoneの台数に比べれば0、或いは0にほぼ近い数字だという。そしてその他の大多数の旧型iPhoneデバイスは普通の電子ゴミとして他のデバイスと同様に世界各地で処理されているか、或いは部品を付け替えるなど修理されてまた完成品になるか、または分解されて修理用の部品になるなどしてまた市場に出回っているという(中国や香港の膨大な中古市場を見ればその規模は明らかだ)。

回収業者によって集められた”電子ゴミ”。この中にはもちろんiPhoneなど存在しない。

つまり、事実としてはAppleは独立した回収業者にお金を払って電子ゴミを買い上げてそれをリサイクルに使用しており、しかもAppleが買い取る電子ゴミ(古いデバイス)は全てがApple製品ではない、というよりApple製品は殆どない。なぜならリサイクル法が定められている州では、それぞれ州ごとにある程度違うものの、基本的に電子機器メーカーはシェアによってある程度の電子ゴミをリサイクルしなければならないという決まりがあり、自社製品のみを選んで買い取るようなことができないようになっているからだという。

Motherboardによれば、メディアが報道しているAppleが4000万ドルの黄金を回収したというのはあるかもしれないが、そのために実際はAppleは他のゴミも大量に買い取る必要があり、実際は損をしているようだ。iPhoneに含まれている金はほんのわずか。それよりも昔のテレビなどに入っている量の方が多いという。いずれにせよ、回収したものだけで商売がなり立つわけがない。廃棄業者も、Appleのような企業に回収したゴミを買い取ってもらうか、使えるものは組み立てて売るか、そうでないものから希少金属などを抜き出して商売にしているわけで、その業者からゴミを買い取るとなればそれなりのお金で買い取らねばならない。

なぜなら全体の”リサイクル産業”がそのようにして回っているからだという。

本来のMotherboardの記事はもっと長い内容になっており、Appleへ公開質問なども出しているが返事はないという。詳細は英語だが、上記の記事まで。リサイクルの世界は実態はもっともっと複雑で、色々と闇がありそうだ。

記事は以上。

(記事情報元:Motherboard

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