Appleが制作するDr.Dre主演のテレビドラマ≪Vital Signs≫は過激なコンテンツ、Appleが最近メディアに対して貫く道徳的なイメージと相反するもの
先週、Appleが目下オリジナルのテレビドラマを初めて制作中で、そのドラマの題名は≪Vital Signs≫だというニュースが流れた。そしてそのドラマの主演はBeatsの共同創業者で現在は買収されてAppleの幹部となっているDr. Dre(ドクター・ドレー)で、内輪色が非常に強い。そして特筆すべきは≪Vital Signs≫の内容はダークなもので、Appleがメディアに対して貫いてきた高止まりな道徳観と鮮明なコントラストとなっていることだ。つまりドラマの内容は”ヘヴィー”で、”セックス&バイオレンス”に溢れ、多くの暴力的で性的な描写が含まれるという。Appleが初めて制作するコンテンツにこのような題材を選んだのは、かなり意外なことではないだろうか。
≪Vital Signs≫はApple Musicのために制作される
しかし最新の情報によれば、Appleはこの≪Vital Signs≫を利用してApple Musicの宣伝を打ちたいのが本音のようで、このことでテレビ分野に進出したいというわけではないようだ。内部事情を知る情報筋がRe/CodeのPeter Kafkaに明かしたところによれば、このドラマのコンテンツを制作することは、Apple Musicの更なる拡大と普及プランのうちの一部分なのであるという。
Appleは既にApple MusicのためにアーティストのPVやビデオ作品の制作や投資を行っている
≪Vital Signs≫はある意味単にAppleが初めて制作するテレビドラマという見方もできるが、昨年夏にAppleは社内のリソースでApple Musicのために楽曲やPV(プロモーションビデオ)を制作しているため、そんな単純な話ではなさそうだ。
なお、昨年夏時点でAppleが制作したといわれているのは、以下の3つだ。
- Drake(ドレイク) ≪Energy≫
- Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス) ≪Freedom≫
- Eminem(エミネム) ≪Phenomenal≫
上記のうちドレイクは昨年のWWDCでApple Musicが発表されたときに壇上に立つなど、かなりApple Music寄りのアーティストであることがわかる。
なおこの3作品のAppleのPV制作に関しては、当ブログでも記事にしている。
Jimmy Iovine(元Beats CEO、現Apple)がWWDC 2015のステージで、イノベーティブな音楽サービスを始める他、全天候オールタイムでワールドワイドなラジオを作り、またファンとアーティストがインタラクティブに交流が可能になるプラットフォームを作ると発表した。しかもそれだけではなく、Apple Musicでは加入ユーザに大量の広告なしのPV(プロモーションビデオ)を提供することも発表したのを覚えているだろうか。 Apple Music独占配信のアーティストPVはなんとApple自身が制作!? - 小龍茶館 |
Appleは更にその後、Drakeの≪Hotline Bling≫のPVの制作にも出資しており、またTaylor Swift(テイラー・スウィフト)と共に1989 World Tour Liveのライブビデオも制作している。これらは全て、Apple Musicのためといえるだろう。Appleのインターネットコンテンツ担当のEddie Cue(エディ・キュー)上級副社長(SVP)の肝煎りのプロジェクトなのは確実だろう。
≪Vital Signs≫も、AppleがApple Musicのために制作するオリジナルPVのもう1つの形なのかもしれない(当然、このドラマの主題歌や劇中音楽のためにDr.Dreの作品がリリースされ、Apple Musicに独占的にアップされることだろう)。
Apple Musicにまつわる”テイラー・スウィフト事件”
皆さんは覚えているだろうか?Apple Musicのサービスが始まった頃、テイラー・スウィフトがApple Musicが3ヶ月の無料期間内にアーティストに支払いがないのはおかしいとTwitterに書き込んで話題となり炎上したことを。この件は最終的にAppleのエディ・キュー上級副社長が公式にその無料三ヶ月の間もアーティストには相応の報酬を支払うように見直すと発表して収まった経緯がある。
その前後もApple Musicとテイラー・スウィフトは蜜月の関係であるため、当時からこの”テイラー・スウィフト事件”はAppleによるマッチポンプ(自らマッチで火をつけ、ポンプで消化する=自作自演)だったのではないかという見方もあるほどだ。ともかく話題にしてナンボというところなのだろう(もし本当にマッチポンプだったとしても、そうじゃなかったとしても、この事件はApple Musicのイメージを悪くしたといえる)。
なお、Appleはテレビドラマ≪Vital Signs≫に関しては、メディアの質問に対しノーコメントを貫いている。
記事は以上。